脳内会議開催
そして六歳になり、転機が訪れた。
その村では年に一度。
領主にその年の年貢を納めていたのだが、
その年もきちんと年貢を出した筈であった。
しかし、領主の使いがやって来てこういった。
「この村でどうやら年貢を納めなかった者がいたようだ。その者を見つけ出し、叱るべき処罰を与えよ。そうしない場合は今後一切この村との縁を断ち切る」と、
貧しい村であったため、領主との縁を切られるということは食料の需給や農作物の取引ができないことになってしまう。
村の者は必死に探したが見つからなかった。
そこで村人は誰かを追い出すことでこの問題を解決する手だてに及んだのである。
そこに白羽の矢が立ったのがネスクの家族であった。元々移民であり、髪の毛の色で忌み嫌われていたこともあったため、反対するもの居なかった。
以降、ネスク一家は村を追い出され各地を点々としたのである。
旅自体はそこまで苦痛ではなかった。
家族皆で協力しながら旅をしたからだ。
旅の合間で、狩りや採取のやり方を教わったり、料理の仕方や焚き火の起こし方など様々なことを両親から生きることを学んだ。
そして、ネスクが十二歳の時に、最初の村から西にある村に住むことにした。
村人は初めは不信な目で見ていたが徐々に慣れ親しんでいった。
しかし、その平穏の生活も長くは続かなかった。
その二年後、
その村が盗賊団に襲われた。
自分の住んでいた家が燃え、悲鳴を挙げ逃げ惑う村人達を掻き分けながら、ネスク達一家は逃げる。―――まるで地獄絵図その物であった。
突如、空が急に暗くなると共にそれが現れた。
黒い龍である。
その龍は黒い霧を村に撒き散らす。
霧に触れた村人は黒い霧へと変わり消えていった。
両親が自分だけを森に逃がす。
最期に聞いた言葉を思い出し、自分の心に焼き付いて離れない。
あ な た は 生 き て ! !
その両親二人の後ろ姿は今のミレドの小さな背中と重なる。
―――記憶を呼び起こす呼び水となったのだ。
それからは森の中を必死に走った。
走って 走って 走った。
そして気付けば洞窟にたどり着き力尽きた。
■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇
欠けていた前世の自分の記憶とネスクのこれまでの人生とを共に甦る。
友人だった人物
家族だった人物
そして信念だった物
―――全てを思い出した。
死に際のことも含めて全部。全部。
何もない空間で髪の黒い自分と白い自分が争う声のみが響き渡る。
黒「どうせまた裏切られる、奴の言うとおり逃げるべきだ」
白「いいや、彼女は違う。助けるべきだ。」
黒「なぜ彼女は違うと言い切れる?
人なんて裏切ってなんぼのいきものだろうが。」
白「彼女はそもそも人ではない、それに見ず知らずの僕に優しくしてくれた。」
黒「それは初代との約束が合ったからだろうが!!」
白「約束がなくても彼女は助けてくれた筈だ。この数ヶ月一緒に暮らした僕達なら分かる筈だ」
黒「へっ!!こき使われただけだろう。あと毎日ボコられるか」
白「・・・言われてみれば確かに。」
おいっ、何最後に納得しているんだよ!!
てか今、自分同士で争っても仕方がないだろう!!
思わず第三、ネスクでもオオヅキでもない自分が思わず突っ込みを入れる。
その後も話し合いが繰り広げられた。
そして二人の折り合いが付く。
「過去や記憶がどうであれ、結局。
ネスクもオオヅキも自分だ。
だから自分のやりたいようにする。
結果がどうなろうとも関係ない。
それで後悔にしないならそれを選ぶ。」
結果とはいえ自分の大事な人を奪い、再び奪い去ろうとするあの龍の姿を思い浮かべながら、
敵を殲滅する
そして混ざっていく。白と黒の二人の自分が第三の自分と重なり合い新しい自分へと混ざり合う……………。
****
<ミレド>
ネスクが気絶し脳内で自分との戦いを繰り広げている頃、
ミレドは邪龍ヘヴラと命を削ってギリギリの死闘を繰り広げていた。
【聖龍鋭爪】を発動し、ヘヴラに斬り付ける。
ヘヴラは避ける。
そして両手に纏わせた赤黒い霧で拳を振るう。
ミレドは拳を蹴り上げて反らし、そのまま踵落としをお見舞いする。
ヘヴラは後ろへ高速移動して避け、手を翳して霧を前方へと解き放つ。
「【聖なる光の盾・極光】!!!」
後ろへ吹き飛ばされることで威力を弱める。
上手く着地し、ヘヴラに視線を送るも。
もうそこにヘヴラがいない。
「‥‥‥‥どこじゃ!!」
後ロダ
後ろから背中に攻撃が飛んで来てその力に思わず吹っ飛ぶ。
「がっ!?ぐぅぅぅぅ」
何とか踏ん張り耐えるも、ヘヴラの攻撃が更に襲い掛かる。
手を翳すと霧が変化し長い槍へと変化し、如意棒の如く伸びる。
咄嗟に避けようとするも脇腹に掠る。
「ぐっ!!!」
振り向きザマに発動させていた【聖龍鋭爪】で薙ぐもひらりと避けられ間合いが開く。
刺された箇所を触れると手に血がべっとりとつき、それから血が溢れ出る。