白き雷の閃光
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<ネスクとミレド>
久シイナ我対ナル龍ミレドグラルヨ
再びあの声が頭の中に響く。
「妾は二度とキサマの顔など見とうなかったわ!邪龍ヘヴラ」
その会話でやはりと思う。黒いモヤ、更に禍々しい魔力とオーラ、そして圧倒的強さ。
気付くのに必要な要素がこれだけあれば、
誰でも気付く。
アノ時ノ美味シイ生気ニ感謝スル
アノ二人ノ生気ハトテモ美味デアッタ。
ミレドが飛び出す。
瞬間のこと過ぎて、ミレドの動きを目で捉えることが出来ず、その結果のみを目の当たりにする。
邪龍の黒いモヤの鎧が一瞬で砕かれ、龍の胸の傷が顕になる。その傷に衝撃が叩き込まれ龍が後ろへ吹っ飛ぶ。
「【聖咆哮】」
手を龍へと翳すと、ミレドの手から白い光の追撃が龍へと叩き込まる。
勢いに乗ったヘヴラの体がさらに後方へ吹っ飛ぶ。
光が通った箇所は地面が抉れ、大地の形が変わってしまう程の威力。
しかし、龍は倒せない。
翼を広げ空へと舞い上がる。
そして先程のブレスを更に高濃度にしたブレスが頭上から降り注ぐ。
ミレドは先程と同じ魔法を使う。
いや、先ほどよりさらに威力が増した魔法だ。
「【極聖咆哮】」
先程より倍の光が空へと駆け昇る。
二つの光りが空でぶつかる。
漆黒の闇と純白の光が弾けて混ざる。
その光景は、まるで神話の一場面のようである。
「くっ、やはりこれでは奴を葬れぬか。ネスク!!何を呆けてとる。ぬしも手を貸さんか!!」
ミレドに声を掛けられた事で現実に戻った。
頬を叩き気合いを入れる。
そしてミレドの横に並び立つ。
「悪い、ぼーっとしてた。」
刀を構え直して、魔力を高めていく。
(【纏・聖光】では二人の速さに付いていけない。かといって、【纏・雷】だと攻撃が効かない。いっそのこと、二つを混ぜるか……)
しかし今までに『纏魔法」の二つの属性を同時に発動させ混ぜたことはない。
前に一度試したが、どちらか片方しか発動しなかった。
どうするか悩んでいると、ミレドが声を掛ける。
「いつも通りにやるんじゃ。おぬしはいつも通りの方が力が出る。自然に、気は張らず、肩の力を抜くんじゃ。」
ミレドは龍に視線を向けたまま囁いてくる。
彼女のその言葉で吹っ切れた。
(今やらないとダメなんだ!!)
言葉通りに。
流れに乗るように自然体で、力を抜いて魔法を編んでいく。
「我が力において雷は我の足なり、聖光は我を護る盾で在り武器である。故に我が言の葉に於いて命ずる我が力の糧となり、難敵を滅せよ。」
編んだ呪文でイメージを高めて発動する。
そして魔法が完成する。
「【纏・雷】、【纏・聖光】」
二つ同時に発動する。
どちらかが欠けることなく、また、どちらも同じ強さで発動する。
そして、二つが混ざり合っていく。
黄色い閃光を放っていた雷と白い聖光が重なりあう時、ネスクの体は【纏・雷】のように雷が走り、【纏・聖光】のように白い光が放たれている。
「合成魔法【聖雷】」
「来るぞ!!!」
ミレドが声を発すると同時に、龍が攻撃を開始する。黒いモヤが尖った突出物に変わる。
そして
凶器が豪雨のように降り注ぐ。
「【聖なる光の盾】」
ミレドが【聖なる光の盾】を発動する。
ミレドとネスクの周りに光の壁が降り注ぐ突出物を防ぐ。
「まずは奴を地面に落とす!!ミレドはその間に奴への攻撃の準備を!!」
「頼んだぞ!!」
ネスクが地を蹴り飛び出す。
ミレドの【聖なる光の盾】で突出物を防ぐことが出来るため高速で邪龍へと近づく。
近づくに連れ突出物の量が増え、盾に亀裂が入っていく。
「【反重力】、【空間固定】」
空中に斥力場を作り出す。
「【脚力増強】」
【脚力増強】を掛けて空を走る。
光の盾が遂に攻撃を受けきれなくなり割れる。その瞬間にネスクが掛ける。
「【霞み】」
斥力場で空を掛けていたネスクの姿が消える。
白い雷の光線のみが残像として残る。
降り注ぐ黒い突出物が次々と塵へと帰る。
「聖なる業火よ難敵を滅し骨の髄まで燃やし尽くす剣となれ【聖炎乱舞】」
いつの間にか現れたネスクの刀に白い炎が発生し、邪龍の頭に叩き込んでいく。
黒いモヤは砕けて刀の刀身が龍の角にクリーンヒットして斬られる。
そして、地面に落下。
龍は起き上がろうとするも、そこに【極聖咆哮】が喰らい込む。ミレドの攻撃である。