ドルイド
*
<ネスク>
龍が爪を振ると、突風が巻き起こる。
――その威力で燃え盛る木が飛んでくる。
「【加速】」
自身に【加速】を掛け、横へスライドする。
元いた場所に、
突風で飛ばされた木が飛んで来た。
「くそっ!!何て言う威力だ!!」
【加速】で横に動くも前へと歩き出すことはできない。
―――耐えるので精一杯である。
そんなネスクに向かって、龍は再び爪を振る。
「【加速】!!!」
【加速】を更に上乗せして、爪の軌道から逸れる。しかし、突風で体が飛ばされる。
「【空間固定】」
空中に斥力場場を作り、無理矢理体をそれ以上飛ばされないようにする。
そこに再びブレスが飛んでくる。
「っ!!【風盾の守護】」
ブレスが直撃するもネスクの前で避けるように避けていく。
【風盾の守護】
自身の周りに風を纏い、敵からの攻撃の軌道を去なす風魔法である。
ブレス攻撃が終わると龍は翼を広げる。
どうやら再び空へ舞うつもりでいるようだ。
「させるか!!!【空間固定】、【真空】
合成魔法【真空空間】」
龍の周りの空気の流れが止まり、龍が翼で羽ばたかせても浮くことはない。
合成魔法【真空空間】
空間の粒子や原子の流れを固定し、指定したその空間を真空状態にする魔法である。人間の周りにこの魔法を使うと酸素が固定され、最悪の場合窒息死してしまう魔法である。
龍は再び爪を振る。再び突風がネスクへと迫る。
「【重力加重】」
自身に重力加重を掛けて、地面へと降り立つ。
そこに爪を連続で振る。
突風が竜巻と化してネスクへと迫る。更に龍はブレスを吐く。
竜巻とブレスが合わさって『炎嵐』となり、ネスクを襲う。
「!!!」
咄嗟の事に魔法を掛ける間もなく、炎嵐を直撃する。
****
<ミレド>
「おぬしは、………『ドルイド』じゃな。」
ミレドは緑の少女と対峙していた。
「お初にお目に掛かります。
ドルイドの『ポーア』と申します。」
軽く会釈をしてスカートの裾を摘まむポーア。まるで貴族のご令嬢のようなその仕草は可憐で綺麗。
「確かドルイドは余り人前に出んと記憶しておったが、いったい何用じゃ?」
余り人前に現れる事の無いドルイドが突然現れたことに警戒を解かない。
「端的に言えば、手助けを、と思いまして、今あなた様はお困りなのでしょう?
聖龍ミレドグラル様」
「妾はまだ名乗っておらんのじゃが、なぜ知っているのじゃ?」
ミレドは名乗っていないのにも関わらず、その少女は自分の名前を知っていた。
この事にミレドは更に警戒を強める。
「私達、ドルイドは植物を通して聞いたり、見たりする事が出来る能力を持っています。あなた様とあの方のことが湖に着いた時から植物を通して拝見しておりました。」
「ほう、成る程のう。――して、そのドルイドがなぜ今になって手を貸す、何が目的じゃ?」
その問いに少女は答える。
「恩返し、のような物です。」
その答えに疑問をミレドは覚える。
しかし、少女の言葉にその問いを声に出すことなく遮られる。
「今はそんなことより早くあの方の元へ。植物達からの情報だとかなり厳しいようです。」
「!!!その事は後で話すのじゃ。おぬしは、この火を頼むのじゃ。」
そうポーアに指示を出し、先を行こうとするも前からやって来る魔力の気配に気付く。
いつも傍にいたその魔力を間違える筈がない。
「ミ・・・レド、様!!!!」
汗だくになり、息を切らして煤で汚れているが間違いないクーシェだ。
クーシェはミレドの腕にたどり着くと倒れる。
「ミレ・・・ド・・・様、早く・・・ネスク様が・・・・・・」
「!!!ポーア、クーシェを頼む!!」
ポーアにクーシェを任せて先を急ぐ。
「分かりました。」
ポーアの回答を聞き、ネスクの元へと急ぐ。
****