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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
1章 転生、異界『ラシル』の地にて。
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暗月

 

 カンッ!!!カンッ!!!


  霧の森の中で二つの剣が火花を散らして、二人の剣技がぶつかり合う。


「くっ!!【加速(ブースト)】」


 ネスクがもう一段階、速度のギアを上げる。


「ひゃっはー!!楽しいぜ、全く。こんなに楽しいのは何年ぶりだ!?」


 それに呼応するかのように、

砂漠の髑髏(サンド・スカル)頭領(リーダー)、ヴラムの速度が上がる。


 カンッ!カンッ!カンッ!!


何度もぶつかり合う。


「そらよっ!!!」


 大振りで下への振り。

目で追うのもやっとの速さで振られる。


「つっう!!」


 それをギリギリで避ける。


 髪の毛数本が切られ、宙へと舞う。

一瞬の瞬きが命取りとなる中で刀を振る。


「らっ!!」


 左から横に薙ぐ。

――ヴラムが後ろへ飛び()ける。


「【纏・雷(まといイカズチ)】!!!」


 バリッ!!


 体に電流が回り出す。


――開いていた間合いを一瞬で詰める。


「なにっ!?」


  先程の返しで右から横薙ぐ。

ヴラムはギリギリで持っている巨大な剣を咄嗟に盾とするが、その一撃で後ろへ吹き飛ぶ。


  完全にヒットである。

 後ろの木にめり込み、煙が上がる。


「……はあ……はあ」

  ここまでの高速の戦闘。いつもより精神を使うため、息が上がる。


「……はあ、どうだ?」


 ヴラムが飛んだ木へと視線を送る。



 しばらくして、


―――起き上がる影がある。


「かはっ!!今のは効いたぜ!!」


 吐血しながら、

 ヴラムがふらふらしながら一歩一歩と歩いてくる。


 ヴラムが転がっていた剣を拾う。


「ひゃっはっはっは!!くそ楽しいぜ!!!

こんなに心踊ったのは本当に久しぶりだ!!!

―――だが、もう終いだ。

この技を使うのは久々だが、ここまで楽しませてくれた礼だ!!たっぷり味わって貰うぜ!!」


 そう口にすると不敵な笑みを浮かべた後、

 目を閉じ、うねり出す。


「うううううう!!!!!!」


 周りがヴラムとシンクロするかのように大気が震える。そして、


「我が身よ、我が敵と認めし者にその真価を示しその敵を滅せよ

凶化(バーサーク)】!!!」


 ヴラムが雄叫びに似た声で叫ぶと、

その男の魔力が膨れ上がる。


「くそっ!!【加速(ブースト)】!!!」


加速(ブースト)】を最大までギアを上げて、距離を詰める。


 刀で斬り付ける。


―――しかし、数コンマ遅かった。

 斬り付ける刀を()()で弾かれた。弾かれたことで体勢が崩れる。


 その上、巨大な剣を振るってくる。


 体を捻りそれを避けて、後ろへ飛ぶ。






    ドオン!!!





――雷が落ちたような轟音。巻き上げる砂煙。


 着地して確認する。

 煙が納まると、ヴラムが剣を振るった地面がへこんでいた。


「前にも合ったな。こんなこと、」


  そう約三ヶ月前の事をもう一度、繰り返しているかのような錯覚に襲われる。

 自分より巨大で馬鹿力の敵で黒い獣のことを思い出させるような攻撃。あの時は、


―――仕止め切れなかった。


『自分には勝てない。』


 まるで、その事を分からせるかのように、同じような事を繰り返す。


ああ、腹立たしい。




「あまり僕を、舐めるな!!!」


「うぎあああああああ!!!!!」


 そう叫ぶと同時に、距離を詰めるために動き出す。ネスクは、剣を鞘に納めて手を添える。


 獣と化したヴラムに向かって、走りながら発動していく。


「【加速(ブースト)】、【纏・雷(まといイカズチ)】、【付与(エンチャント)()()】」


 剣と剣がぶつかる。


 ヴラムが巨大な剣を先程の倍の速度で、薙いで切ってくる。





――しかし、ネスクには、もう掠りもしない。

全て避けて懐に入る。


「【暗月(ダークムーン)(さく)】」




 チャキッ!!




 ヴラムの後ろへと交差し、いつ抜いたのかもわからない刀をしまう音がする。


「うぐおおああ!!!!!」


 振り返り再び背後から襲ってこようとする。

――だが、もう襲うことはできない。


 右肩から左脇に掛けて、斜めに切り傷がはいる。


そして――、




     ブシャッ!!!!



 血が吹き出す。




「う、う、あ‥‥」


 数歩だけヴラムが動いたあと――、






 ドッスン!!!


 巨体が崩れ落ち、動かなくなる。


  ネスクが何をしたのかというと、

 懐に入った時、確かに右肩から左脇に掛けて斜めには斬った。

しかし、()()()()である。


 【加速】と【纏・雷】だけの攻撃では、

ヴラムには届かないと――、

 そう錯覚したネスクがほんの瞬間的に、ヴラムと同じように感情のまま魔力を使った結果。


斬る瞬間の動きが速すぎて見えなかったのだ。

 しかし、


 決定的な致命傷を与えたのが【付与・斬撃】。


 刀に【斬撃】を付与したことで、


一度斬っただけ(かすり傷程度でも)で、

"斬った"という概念が山彦(やまびこ)の如く全身に反響していく。

 その斬撃が最終的には全身に回り、体の内側からもダメージを与えたということだ。


「……ふう、……終わった、な。」


 激戦が終わり一息つく。


(まだ、魔力も残っているし、前回よりはうまくいった筈、しかし【()()()】の魔力消耗が多すぎる。もっと改良が必要だ。)


  咄嗟に思い付いた技。

  攻撃は地味だが、暗月、新月のように暗闇の中でただ斬るだけで人を死に至らせる技である。どちらかというと暗殺技に近い感じ。



「【探知(サーチ)】」


探知(サーチ)】でミレドの魔力を確認する。周りの魔力が消え失せている。

 しかし、ミレドの動きがおかしい。まるで()()()()()()と戦っているかのようである。

次回、再びミレドに戻り、その後進展します。

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