異世界へ
―――ポツン―――ポツン
顔に冷たい何かが落ちてくる。
湿った空気で肺が満たされる。
薄ぼんやりとする視界が徐々に開けていく。
―――ここは・・・・どこだろう
顔に落ちたそれを手で拭う。
―――水滴が落ちてきていたようだ。
仰向けに転がり天井を仰いでいる。
ゴツゴツとした岩肌につららのように伸びた岩が天井にぶら下がる。
体の上体を起こし、周りを見渡す。
後ろに青々と茂った草木が広がり、
前は鉱石で発光して昼のように明るい。
そんな洞窟の中はところどころに水溜まりが広がっている。
―――洞窟の入り口で倒れていたようだ。
そして、ぽっかりと空いた入り口の右手に在るものが見えそれを凝視してしまった。
「うっ。」
ボロボロの布切れにキズだらけの装備をした白骨死体が二体転がっていた。
――その手に刃零れをした長剣が二本。
白骨死体のどちらも右手に握られていた。
体がまだふらつくが立ち上がる。
――そして違和感に気付く。
‥‥‥‥あれ、いつもより(目線が)低い?
‥‥‥‥それに手が小さい?
自分の服も確認する。ボロボロの、袖が破れた茶色のシャツとパンツのみ。
状態を確認するために洞窟に溜まっている水溜まりに近づいて確認してみる。
水は鏡のように透き通り発光している鉱石がよく見える。
恐る恐る水溜まりの中の自分の姿を見るため
覗き込んでみる。
「‥‥‥‥‥‥っ!?」
―――なんだ、こりゃ~~~!!
上手く言葉にならず、内心で叫んでしまう。
それほどまでに衝撃的であった。
そこには見知らぬ少年が映っていた。
白髪の髪に、黒い眼、幼さが残るが整った顔の輪郭をした少年。
‥‥一体、何がどうなっているのだ...?
急に動いたせいで動転する。
くらくらする頭が収まるのを待ってから
周りを見渡す。
とにかく、今どういう状態なのか調べなければ!!
外は‥‥森になっており何時、何に襲われるかわからない。最悪の場合、熊に襲われる危険もある。――とても危険だ...。
となると後は‥‥、
洞窟の中を先に調べた方が良さそうだ……。
何か思い出せないかと思い少し記憶を辿ってみるが所々の記憶しか思い出せない。
‥‥燃える家
‥‥何かを叫びながら逃げ惑う人々
‥‥自分と同じ白髪の男女
‥‥そして、黒いトカゲのような生き物…。
途切れ途切れの記憶の断片を思い出しながら顔に付いた汚れを落とす。山の水のように冷えた水で頭もバッチリ冴えた。
汚れを落とし終えると、取り敢えず白骨死体に近づいて握っている長剣を取り少し振ってみる。
‥‥‥‥心もとないが、丁度良い重さである。刃零れをしているが、無いよりはマシか……。
剣を白骨死体が腰に差している鞘に納め、死体の体から鞘を抜き取り、近くに落ちていた適当な紐で結び、その紐に体を通して背中に担ぐ。この体には合わない大きさの剣を抱えて洞窟の奥へと進んで行く...。
湿った空気が肌に触れる。
巨大な何かが出てきそうな雰囲気を醸し出した洞窟を突き進んで行く。
プロローグと少し姿が違いますが、その理由は今後の展開で明かしていきます。