鉄を求めて二里(7.8km)
家を作り直し次に取りかかったのは、
―――『道具』。
そろそろ道具を作って色々したい所だ。
木材はこの辺にあるためなんとかなるが
問題は―――
『鉄』
クワを作ろうにも金具の部分に鉄が要る。
鍋を作ろうにもやはり鉄が要る。
バケツを作ろうにもこれも又、鉄が要る。
いろんな道具を作ろうと思ってもなにかしらと鉄、鉄、鉄と『鉄』が要る。
鉄がなければ、血液中の鉄分を使えばいいじゃないと誰かが囁く。
アホかっ!!普通に鉄分がなくなって死ぬわ!!
どこかに鉄はないかな~。とダメ元でミレドに聞いてみる。すると、
「鉄ならあるぞい。そこいらに。」
マジかー。何でも聞いてみるものである。
「どこに行けば取れるんだ?」
「おぬし、鉄が欲しいのか?なら取りに行くぞい。刀を取ってこい。」
「えっ?ツルハシじゃなくて?」
「いいから、いいから。早く取ってこんか!!」
言われた通りに刀を取りに一度家に戻る。
「どこかに、行かれる、のですか?」
二階の部屋にある刀を取り準備をしていると、部屋の扉からクーシェがひょっこりと顔を覗かせる。
「ああ、クーか。ミレドとある物を取りに行ってくる。夕方頃には戻ると思う。留守番頼めるか?」
「は、い、夕食の、準備をして待って、います。」
「ああ、頼む。」
クーシェの頭を撫でてあげる。気持ち良さそうに目を細めて撫でられている。
あれから数日経ち、クーシェも少し気持ちの整理が着いたのか以前よりよく話し掛けて来るようになった。拙い言葉は相変わらずであるが、数日前と比べると進歩である。
クーシェと話したあとに戻ると、ミレドが、
「それじゃ、取りに出発じゃ!!」
元気よく言い出す。何が何だか分からず、
「一体どこにだよ?」
と問うと、
「行けば分かる。いけばのう。」
と答える。
ミレドの後を追い、森の中へ進んでいく。
―――数時間後、
「ほれ、着いたぞ。」
着いたのは、湖を北に進んだ所である。
辺りは森を抜け、岩場になっているがそれ以外目立った物は何もない。
「何もないじゃないか。」
岩以外は何もない。
「おぬしの目の前にあるではないか。」
ミレドは岩を指差す。
「いや、ただの岩じゃないか。」
「仕方ないのう。ちょっと見ておれ。」
指差した岩へと近づいていき、そして、岩に振れる。そして、
「ふんっ!!」
岩を殴る。岩は跡形も無く、吹き飛んだ。
「いやいやいや、何やってんだよ?!」
「おぬし離れといた方が良いぞ。」
「えっ?」
突然のミレドの行動に近寄っていた足を止める。
ガタガタガタガタ
地面が揺れだす。
「なんだ?地震か?」
すると、地面が盛り上がる。
グルルガギイヤアア!!!
そして、現れる。日でピカピカと光沢が輝き、
山のようにデカい亀?
「ほれ、取るぞい。」
「いや、取るじゃなくて、これは狩るだろ?」
いつの間にか隣に戻ってきたミレドがそう言い出す。目の前の巨体。ピカピカと光り輝く亀を見ながら―――。
<メタートル>
甲羅が鉄でできている亀。大きさはそれまで生きた分だけ大きくなる。一メートルずつ成長するのに約百年。地中を移動して動くため地上に出ることは稀である。一キロメートルを越えるこのモンスターが動くとよく地震を起こすことがある。餌は、岩などの岩石でこれを壊すと怒りだし地上に這い出て暴れだす。
基本は温厚な性格
甲羅は鉄として、採取可能である。
「コヤツは小さいのう。大体、500ちょいぐらいかのう。」
「いや、50メートルでも十分デカイだろ。」
「それじゃあ、ちゃちゃっと終わらせるかのう。」
手や首を鳴らして、亀へと進んでいく。亀が尻尾を振り攻撃してくる。
ビュン!!
尻尾がミレドへと命中する。
しかし、
―――ミレドの体が消える。そして、
ズドンンッ!!
亀が空中へと飛ぶ。
ドスン!!ドスン!!
そして、甲羅がバウンドして亀がひっくり返る。亀本体は瞬間に顔を引っ込めていたためか無傷であるが、
ひっくり返ったことで仰向けになり、動けないでいる。引っ込んでいた顔を出し、目の前でじたばたしている。
ミレドが亀の上へと登っている。
そして、亀へと手を翳し、
「これで終いじゃ、【雷電】」
ミレドの手から亀に向かって稲妻が走る。
バチッ。ビリビリビリ!!!!!!
雷の火花が散り亀を焦がしていく。
グルルガギグルヤヤアア!!!
亀は最後の雄叫びを上げる。
その雄叫びのあと、沈黙した。
電気が放出し終わり"ジュウウウウウ"と煙を上げて亀の上を漂っている。
本当に一瞬であった。まず始めにミレドが何をしたのかが分からない。
「どうじゃ?参考になったかのう?」
ストンッと、
ミレドが軽やかに降りて自分の目の前に着地する。
「いや、全く。まず最初に何したんだ?」
「??。コヤツの足を引っかけただけじゃが?」
おかしい!!絶対この子おかしい!!
普通の人間に直径が五○○メートルもある亀の足を引っかけて、転がすなんて芸当できる筈がない。
ネスクはこめかみを押さえ一言、
「頼むから普通の人間でもできるやり方を教えてくれ!!」
「うむむ、おぬしならちょっとコツを掴めば出来ると思ったんじゃが。」
「俺に期待し過ぎでは?」
「これが期待せずにはおられんよ。おぬし、知らぬ間に妾の光魔法と幻影魔法の応用を自分の物にしておったではないか?」
おそらく、ミレドは【朧月】のことを言っているのだろう。
湖に戻った当初、一度だけ【朧月】をミレドに使ったことがあった。
「あれは自分の物にしたというよりかは真似ただけだよ。」
「それはそれで凄いことじゃと妾はおもうがのう。まあ試しにその内、やってみ?」
「機会があればね。取り敢えず、この亀どうやって持って帰るんだよ?」
「簡単じゃ、こうするのじゃ。【圧縮】」
すると、メタートルが徐々に小さくなっていき、二人で持てる大きさとなる。
「おお!!凄いな!!」
「更に【反重力】」
ミレドがよく分からない魔法を掛ける。
「何したんだ?」
「まあ、持ってみよ。」
言われた通り、亀を持ってみる。
すると、
「‥‥‥‥軽い」
鉄のため重いと思っていたが、ハリボテでも持っているかのようにとても軽く、まるで空気を持っているかのようである。
「うむ、それは良かったのじゃ!!それじゃあ戻るかのう。クーシェがそろそろ飯の準備をしておる筈じゃからのう。良い物が手に入ったのう!!」
ミレドはご機嫌で軽い足取りで来た道を戻っていく。
「まさか、とは思うがスッポン鍋でも作るつもりか?あっ!!でも鍋がないんだった!!」
太陽が傾き、日差しが赤々と照らす中、ネスクはミレドの後ろを取った鉄を持って追いかけ歩き出す。
いつもより長くなりました。次回は取った鉄を使って道具作りです。