三人と自己紹介
「そうだな。先に自己紹介からにしよう。」
「では、まずは妾からじゃ。妾はこの世界で唯一の龍、『聖龍ミレドグラル』じゃ!」
ミレドが板同然の胸を張ってえっへん。とする。
「‥‥‥‥りゅ、う?」
少女が頭に?をいっぱい浮かべて困惑している。まあ、普通の人が聞いたらそんな反応にもなるだろう。何せ、何千年も生きる龍の姿はどこからどう見ても
―――普通の少女の姿をしているのだから。
「で、も?ふつ、うの、人、の姿で、は?」
「ああ、ミレドは人の姿に変わることができるんだ。」
実際に見なければ分からないだろうな。
「そうじゃ、妾は姿を変えることができる。ほれ、このように。」
ミレドの姿が光り出す。
(まさか、ここで龍の姿になったりはしないよな?)
前回のことを思い出す。前回は龍の姿になり、戻った際、近くに作っていた物を自らの手で跡形も残さず、壊していた。今ここでそうなると、自分たちが潰される。その事に軽く戦慄する。
姿が徐々に変わっていく。そして、
ぽんっ!!
軽い音と共に煙が上がる。
「むっふっふ。どうじゃ?」
「確かに、そう、ですね。けど‥‥」
「けど、・・・・なんじゃ?」
ミレドから不思議そうな目で見つめられる。
「‥‥‥‥‥‥かわ、いい」
「かわいい?」
「確かに可愛いな。今のミレドは。」
確かに龍の姿へと変わったミレド。しかし、前に見せた巨体ではなく、ぬいぐるみサイズの龍がそこにいた。
「か、可愛いとはなんじゃ!?失礼な!!」
ぬいぐるみサイズの龍がプンスカ怒る姿は威厳など欠片もないくらいに可愛らしい。口から出た炎のブレスも焚き火の炎程度であった。
「そのサイズだからな。仕方ないさ。」
「仕方ないって、おぬしのう!??」
「なら、元に戻ったら?」
「むむむ、何やら不服じゃがそうする。」
不服そうな顔をしながらも、再び光り形態が変化していく。また裸で出てくるのでは、と身構えたが、その心配も蛇足に終わった。
心の中で一人ほっ、とするネスクであった。
「ミレ、ドグラル、様はあの、伝承、の龍、なので、しょうか?」
元に戻ると、少女がミレドへと疑問をしてくる。
「ああそうじゃ!!」
「やは、りそうな、のですね。」
「あと妾のことは、ミレドで良いぞ。名前を全部で言われるのは歯痒いからのう。」
「で、は、ミレド様と、お呼び、します。」
「様も要らんのじゃが……。まあおぬしに任せる。」
「ありが、とう、ござい、ます。」
一通り会話がまとまったところでネスクが間に入る。
「じゃあ、次は僕だ。僕はネスク、普通の平民だ。よろしく。」
「よろ、しく、お願い、します。ネスク、様。」
「ネスク、普通というのは無理があるぞい。おぬしは、『守護者の後継者』なのじゃから。」
「あ、そういえばそうだった。」
がくしっ。
ミレドがその一言で転けそうになる。
「おおい!!そんなこといったら、アイツが泣くぞ!!」
「アイツ??」
「おぬし会ったじゃろう?!書庫の中で!!禁書庫官と!!」
「禁書庫官・・・」
そして一人の白い髪の少女が浮かび上がる。
「ああ、ソフィアのことか。」
ネスクが『ソフィア』と言うと次は、逆にミレドが首を傾げる。
「ソフィア??」
「ああ、書庫の中で会った少女のこと。昔の名前を付けるのも、女の子っぽい名前じゃなかったから付けてあげたんだよ。」
「そうか…。アイツも喜んでおったじゃろうな。」
そう言うミレドの表情は我が子を見ながら微笑む母、いや姉が妹を優しく見守るような顔をしていた。
「あ、あの……。」
少女が話に付いてこれていないみたいで困惑している。
「ああ、悪い。続けよう」
「あの、ネスク、様。守護、者という、のは英雄、の、ジル、様のことです、よね。」
「ああ、そうじゃな。コヤツはその英雄ジルが正式に認めた後継者じゃ。」
ネスクの代わりにミレドが答えてくれた。
「僕自身、何てことないよ。」
そう、自分は普通である。
魔力はそこそこある。だが、限界突破をもうしているためこれ以上は延びないし、剣術だって何てことない剣技だ。
「おぬし、それ、人族の前で言ったら、全員首を横に振ると思うぞ。」
?
「何で?」
首を傾げながらミレドへと返す。
すると、ミレドは呆れたように語り出す。
「はあ、おぬしのう。色々言いたいことがある
のじゃが……。
まず、おぬしの魔力は普通の人族の魔力と比べると比較することができぬ程多いんじゃ。
それに、『剣術』じゃってそうじゃ。
普通の人族は妾と剣を交わすと一瞬。反応すらできずに終わるのじゃ。
そして決定的なのが昨日の獣との戦い。
アレに一撃入れとったじゃろ?おぬし。
普通、人族はアレに一撃も入れることなどできぬよ。
たとえ、聖魔法を使えてものう。」
まるで心を読んだかのように先程考えていたことを射抜いてくるミレド。君はエスパーか!!
「でも魔力の限界突破は出来ないんじゃ……」
「誰もおぬし自身元々持っている魔力が最初から少ないなどと言っておらんと。
―――確かに、
限界突破はできぬよ。普通なら魔力の器は成長することはないんじゃがおぬしの器は、」
そこで言葉を切る。そして、
「成長をしておるから限界突破ができぬのじゃ。」
「っ!。そう、だったのか。」
ごくり、と唾を飲み込み納得する。
その言葉に再び自分の中で何かが燃え出す。
始め限界突破できないと聞いたとき、その時に何かがそこで燃え尽きたような感覚があった。――言ってしまえば『諦め』だろうか。
しかし、ミレドの先程の言葉で諦めかけていた何かが燃え返す。
修行を戻って早くしたいと思えるほど激しく。
「あ、あの」
再び少女に声を掛けられ現実へと引き戻される。修行のことは後回。今は自己紹介を再開しよう。
「ああ悪い!それじゃ、君の番だ。」
少女へと視線を送る。
「私は、『クーシェ』です。年は、今年で、十三となり、ます。気軽に、『クー』と呼ん、でくださ、い。」
いつもより少し量が多いですが、取り敢えずここまでにします。次回から、再び戻り三人の生活について書いていきます。