夕陽のような獣人の少女
「‥‥‥ということだ。」
あれから寝床に戻り、少女を床に下ろしてからミレドに事情を説明し終えたところ。
―――しかし、今の自分は何故か正座をさせられていた。
「うむ、成る程のう、いつの世も下賎な輩はおるものじゃが、コヤツにしたこと‥‥特に酷いのう。」
ミレドが少女を見る。その瞳には彼の者らに対する侮蔑と怒り、そして少女への悲しみが見て取れる。
「‥‥‥ああ、全くだ。一族皆を殺すか、奴隷として売り捌いて、挙げ句の果てにはその事を誇示しているようにも聞こえた。
‥‥‥ところで、ミレドさん?」
「なんだね?ネスク君よ。」
某探偵とその助手のような言い方になった。
「どうして……。
僕は地面で正座をさせられているんだ?」
―――当然といえば、
当然の疑問をミレドへとぶつける。
「うむ、今回は君に対処できる相手じゃったから良かったがのう。―――もし、自分より格上の者じゃった場合の対処を良い機会じゃ。
おぬしに教えてやろうと思ってのう。」
つまり、『説教』ってことか。
ミレドが黒い笑顔を浮かべている。背後には、
いつもの安らな光のオーラを放っているのが。
今は、――とても邪悪なオーラに見える。
お手柔らかにお願いしたい。
それから二時間、
みっちりとお灸を据えられた。
太陽が顔を出し掛けていたのが、終わる頃にはすっかり頭上でギンギンと輝いていた。
*
そして、二時間。
「これに懲りたら、まずは妾に相談すること。良いな!!」
「は、はい。分かりました...。」
うつ伏せに倒れ、足がピクピクと痙攣している。
(あ、足が‥‥‥‥)
ネスクは足が痺れている。 海からあげられた魚のように一定の感覚でピクリと足が動く。
「だらしないのう、おぬしは……。
たった二時間で足が痺れるとはのう。
軟弱過ぎやしないか?」
ミレドが痙攣している足をツンツンとつつく。つつかれる度に、足に電流が流れたような痛みが走る。
「ぎゃあああああ!!足をつつくな!!!!」
足がピクッと動き痺れが回ってくる。
痺れが取れるまで幾度となく続く。
「ふふふ。」
誰かが笑った。
誰かといっても、この場にいる人物は限られるが。―――まさか、それ以外では無いはずだ。
残す人物に寝っ転がったまま顔だけを向ける。寝ていた筈の少女がいつの間にか起きていた。
赤い髪が日に照らされて更に赤く見える。
「おお、起きておったのか。おぬし!」
ミレドが少女へと声をかける。
「は、はい。・・・先程・・・・助けていたただき・・・・ありがとう、ございます。」
たどたどしくもお礼の言葉を伝えて頭を下げてくる少女。
まだ自身も本調子には程遠い筈。
相手を気遣う少女の心の表れのように思える。
「ああ良いよ、良いよ。頭を上げて!
僕の方こそ、助けるのが遅れてごめん。もっと、早く助けるべきだった。」
「いえ、・・・感謝でいっぱい、です。・・・でも・・・どうして・・・助けてくれ、たのですか?・・・人族・・・・なのに」
―――その疑問は当然であろうな。
調べた限りでは、人族は他の種族を差別的な目で見る。それは今も変わっていないのだろう。その人間が自分を助ける理由はない。
――そう、普通の人であれば。
「大した理由はないさ。あえて言うとしたら、君と僕が似ていたから、‥‥‥かな。」
「似て、いる?・・・それ、はどう、いう?」
まあ、当然の反応か。
その問いに今答えてもいいが。
「それを答える前にまずは自己紹介をせぬか?
まだ名前すらお互い知らないのだろう?」
ミレドの言葉で遮られる。
―――そうだな、まずは自己紹介からだ。
濃厚な夜過ぎて、彼女の名前すら聞いていない。何かの縁だ。
この際だから少女の名前を知っていてもいいだろう。たとえ、いつの日か少女と別れる日が来ることになったとしても――。
次回、少女の名前公開!!
そして、物語は進んでいく...。




