新・事実と逃避行の果て
「‥‥なるほどのう。ぬしがたまによくわからん言葉を使うのはそのせいか……。」
あれから、自分の前世についてを現時点で分かる範囲をミレドに伝えた。
意外なことにミレドは以外なことにすんなり受け止めてくれて、取り乱すこともなく冷静である。
「意外だな、普通は信じないと思うが。」
冷静なミレドに驚愕を隠せない。
「妾を誰だとおもっておる?こう長い間、
生きておれば似たような者にも会うぞい。」
「なんか、ババ臭い言い方だな。」
「ババ!?誰がババアじゃ!!妾はこんなにすべすべじゃと言うのに。」
ミレドが自分の肌を近づけてくる。
「あはいはい!分かった分かった!!
すいませんでした。だから近づいてくるのはやめてくれ!!」
ただでさえ美人なミレドが自分の肌を見させるために近づいて来られては堪らない。
「うむ!!分ければ宜しい!!」
満足したのか元の位置へと戻る。
「話を戻すがどんな人と今まで会ったんだ?」
「レイブとジルじゃな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・?
「・・・・はい?」
「じゃからレイブとジルじゃ。」
「いや、ちょっと待て。レイブとジルって英雄の?」
「うむ、その二人で合っておる。」
「‥‥‥本当なのか?」
「本当じゃ。」
ミレドの口から意外な人物のことが飛び出した。『新事実』である。
「今日はもう遅いからのう。そろそろ寝るとしようかのう。」
新事実に呆けていると、ミレドが話を切り上げ寝る準備に入る。
「おぬしもそろそろ、寝ておけ。食べたが、まだ魔力が回復しておらぬし、体も相当無茶しとるからのう。早めに休めよ!!」
「あ、ああ、そう、だな、そうするよ。」
「結界で魔物は出てこんからのう。今夜はゆっくりせい。」
「ああ、じゃあお休み。」
「うむ、お休みじゃ!!」
刀を傍らに置き、体を再び横にする。
そして、眠気に誘われるまま、眠りの中へと吸い込まれていく。
*
暗闇の森の中を走る。
ハア、ハア
息が上がる。
呼吸する事が辛い。だけど、足を止める訳にはいかない。
月明かりで道が分かる。光に照らされる夜道を走り続ける。
――そして、
少し行った所で木を背中に押し付けて少し休む。月明かりで小さな影が照らされる。
赤い髪と目、そして獣の様な耳と尻尾、薄汚れた服、裸足の上、土で汚れている。
普通にしていれば、一般人とさして変わらない。
だが、首には、体に似合わないくらい大きな首枷。この枷が彼女の存在を一般人と歪めている。
そして、枷が彼女の姿を物語ってしまう。
「ハア、ハア、ハァ、ここまで、ハア、来れば、ハア、ハア大丈夫、かな?」
息が出来ず、言葉がとぎれとぎれになる。
周りを見渡してから腰を下ろす。
いつから走っていたのか、ここがどこなのかも分からないが、足は裸足で傷だらけ。
体中には切り傷が無数にある。
ふと、上を見上げると真ん丸の月が一つ浮いている。
辺りには雲もなくキレイな満月である。
「キレイな月‥‥」
月を眺めていると、
ヒュー、プスっ!!
足元に何か飛んで来た。
咄嗟に動こうとするも、疲労が溜まって反応が遅れた。次の瞬間、
「っ!きゃああああ!??」
体に電流が走り、地面へと倒れ伏した。
体中がビリビリと痺れて動けない。
「ようやく、見つけたぜ。」
「やったな、おい!!」
「俺の弓の技量は一流だ!!」
森の茂みから三人の男達が現れる。薄汚れた格好にとこらどころ破けた服。
彼らは盗賊。三人とも剣や弓を持っている。
ほんの一瞬の隙が自由を奪い去った。
ちょっと短めですが、次回に繋がる話です。