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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
1章 転生、異界『ラシル』の地にて。
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決着

 ウオゴグギルゴオォォォォォォ!!!


 咆哮が森中を駆け抜ける。


 傷の痛みと怒りによるもの物だろう。

傷口から血が流れ出る。だが、先程とは異なり傷がふさがらない。


(くそっ、致命傷にはならないか……。なら)


 懐から()()()を取り出す。


 しかし、ヤツが爪を使い斬り裂こうとしてくる。

「っ!!【加速(ブースト)】」


 加速を掛け、それを避ける。

 爪による斬り裂きで後ろの地面が抉れる。


「【深き霧(ディープ・ミスト)】」


  霧の濃度を濃くする。そして、


「【朧月】発動」


 静かに呟き発動させる。

 モヤが飛んでくるも、ことごとく【朧月】で回避する。

 爪による攻撃。薙ぎ払いと繰り出す。


 


 そして、射程圏内へと入ると()()をヤツへと投げる。


「爆ぜろ!!【火炎の球(ファイアーボール)】」


  【火炎の球(ファイアーボール)】単体ではヤツを倒せる力は無い。

 だが、魔法とは別のある物により、普通とは全く違うことが可能となる。



 ()()がヤツに当たりベチャリと潰れる音がする。投げたのは、()()()()である。

 そこへ火が加わり、周りは霧に覆われている。


「【防御の盾(プロテクト・シールド)】」


 自分の前に透明な壁のような物が現れる。


 そして、








 ボンッッッッッッ!!!!!










 倒れてきた瓦礫もとい木をどけて、立ち上がる。

 何が起きたかというと、グレープ(高濃度のアルコール)に火が加わったことで急激な火が発生。更に【深き霧(ディープ・ミスト)】により、高濃度の霧があったことで水蒸気爆発を起こしたのだ。

  ボロボロの体を引きずりながら爆発した元へと向かう。

 ―――ヤツの生死の確認のためである。

 被爆地は辺り地面が抉れ、クレーターになっている。その中心に黒い塊がある。


「やった、のか?」


 黒い塊と化したソレへと近づいていく。

 先程、入れた大きな切り傷がある。どうやらヤツで間違いないらしい。


「生き、残った、よう、だな。」

 そこで体がふらりと後ろへと倒れる。

 朦朧とする意識の中で、自分を呼ぶミレドの姿が見えた様な気がするがそこで意識が飛んだ。




  *

<ミレド>

 ネスクが探検へと出た頃、

  ミレドは()()()()を作りながら、考えていた。


 ネスクの成長は()()である。

 普通の人間は龍であるミレドに付いていけない。

  たとえ手加減をしていても試合をすれば、瞬殺となり試合にすらならない。

 それを一週間。始めこそ瞬殺でボコボコだったが、最近では()()()()()()になっている。

 それも()()()()()()()()()


  そして何より、異常なのが()()である。

 ネスクの魔力量は並みの人間が()()()()()()()()()()多い。何より、()()()()の魔法が使えるというのが異常だ。

  普通は、一人の適性が持っている属性は()()である。多くても三つ。稀に五つ持っている人はいるが本当に稀である。

 例に上げるとしたら、()()()()()ぐらいである。

「・・・ふぅ、このくらいかのう?」

  額の汗を拭いながらそれの出来栄えを確認する。

「こんな物かのう。おお!もうこんな時間かのう。そろそろ、アヤツも帰ってくる頃合いか。・・・・ん、この魔力。」


  その魔力に気づく。そう、忘れたくても忘れることが出来ない魔力が()()()()()()


「ヤツか…。行かねばなぬな。」

 ミレドの動きがピタリと止まった。

 その近くにあるもう一つの魔力に……。

「まずい!!アヤツ、アレと戦っておるのか!?」

  自身に魔力を掛け急ぐ。

「無事でいてくれよ……。」

 脳裏にあの時の光景が浮かぶ。

 あの日の。二人の最後が……。


 魔力を使い、全速力でかっ飛ばす。


「あと少し!」


 霧が漂ってくる。


―――そして、




 ボンッッッッッッ!!!!!



  前方で爆発のような何かが起きたあと、大量の煙が上がっている。急ブレーキを掛けて立ち止まる。


「なっ!?一体何が!?」


―――そこで気づいた。魔力が一つ消え、残ったもう一つも。

 今にも消えそうに弱々しく残っている。

 足が再び進む。急げ、急げと胸の鼓動が鳴る。


  濃厚な霧の向こう。

 前方でネスクが倒れている。


「ネスク!‥‥ネスク!!」


  ネスクへと駆け寄る。

 体がボロボロ。だけど、目も開いて、鼓動もちゃんとしている。手足に欠損もみられない。


―――"五体満足"で生き残ったのだ。


  ネスクの体へ触れ魔力を流す。

 ネスクの体が光り出すと、

 みるみると傷が塞がっていく。

 力も徐々に回復の兆しを見せる。


 ミレドは自身のオーラにより触れた者の回復を促すことができる。


「‥‥今度こそ、は、間に合っ、たのじゃ。」


  目からポロポロと涙がこぼれる。

 涙を拭うと()()に気づく。


「魔力は切れたようじゃが、まだ()()()()()ようじゃな。」


 その黒い塊は脈打っている。黒いモヤを生み出す。そして、赤い目がミレドを見る。


「その黒い霧、()()のか。なら、今度こそ完全に滅ぼそう。その内、ヤツも」


 手を翳す。すると、手から火が出てくる。

『白い炎』である。


「‥‥‥‥滅べ」


『白い炎』が獣へと放たれる。

 獣は白い炎に包まれた。

炎が収まる頃には跡形もなく、消し飛んでいた。


「全く、爪が甘いと朝にあれほど言ったばかりじゃというのに……。これは戻ったらまた修行じゃのう。」


 振り返り気を失っているネスクへと声を掛けるミレド。当然その返答は返ってこない。その声は呆れと共にどこか嬉しさを孕んでいた。

  *

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