‥‥‥‥‥‥誰ですか?
「おぬしはとりあえず、湖でその血を流して来い。魔物の血は服に染み付けば落ちにくい。
乾き切る前に洗うが良い。」
近づいて来たミレドが言う。
「もうすぐ日も暮れる……。血を流した後、その辺の茂みから枝を集めてこい。」
「‥‥分かった。」
湖へ近づいて水を掬い、顔や体を洗っていく。冷たい水が肌を潤す。
夕日に照らされる湖の水。水面が反射して真っ赤に染まっていく。それと同じように付着した魔物の真っ赤な血も洗う毎に広がってしまう。
(‥‥いい加減。この格好も何とかしないとな。魔法で何とかならないかな‥‥)
返り血や泥の付いたぼろぼろの自分の服?を見て思う。服を何とか出来ないかと思考するも、上手く考えがまとまらない。
あれこれ考えている内に、汚れを落とし終えた。
(仕方がない。日も暮れるし先に枝を拾いにいくか……)
考え事を途中でぶち切りにして、枝を採りに行く。
一時間後、
腕で抱えられるだけの枝をかき集めたため、
ミレドのいる湖へと戻る。
湖にたどり着くと先程まではいなかった筈の誰かが何かを作っている。近づいて行く。
――その人物に近付くに連れて段々とシルエットがはっきりしてくる。
格好はチャイナ服?のような格好だが、腕の部分が広がっていて、着物のようになっている。
―――何故かは分からないが、その人物の周りだけがもう日が暮れているというのに光り輝いている。オーラのようにも見える。その光によって白銀の髪に少し青みがかった髪が輝き幻想的である。頭には角?が生えている。
気配を感じたのかその人物が振り返った。
金色の瞳に、猫のような縦一本に細い瞳孔、色白い肌まるで人形のような整った顔だ。
「おお戻ったか。ではここに枝を置いてくれ!」
不意に話し掛けられたため、反応が遅れた。
「‥‥‥‥‥‥誰ですか?」
「なんじゃ、おぬし。もう忘れたのか?妾じゃ、妾」
不満そうな顔でそう言ってくるその人物。だけど、こんな人物に心当たりは無い。
「‥‥‥‥‥‥わらわら詐欺?」
オレオレ詐欺のような自分でも言ってて分からなくなるようなニュアンスでその言葉が飛び出た。
「なんじゃその虫のような物は、旨いのか?
では、食べたいのじゃ!!」
口から涎を垂らしている。
(何故この子は食べるの前提で話しが進んでいるんだ?食いしん坊なのか?てか、涎拭け!!)
食いしん坊であるかのように聞こえてしまった。いや、絶対。―――食いしん坊だ。
その人物が曲げて座っていた腰を上げる。
身長は自分より頭半分下ぐらいである。
見た目が美人過ぎて自分に少し勇気がいる。
すぅー はあー
深呼吸を一回する。
「前にお会いしましたか?」
今ある記憶にはこのような顔の人物に心当たりはない。という事は記憶をなくす以前にあったのであろうか。
「なんじゃおぬし、もう忘れたのか?
頭がもう年寄りなのか?まあ、良い。
妾じゃ、『聖龍ミレドグラル』じゃよ!」
先程の涎を吹きながらその人物はそう答えた。
「‥‥‥‥‥‥。」
辛辣な言葉だが、
その言葉を聞いて次に出る言葉を失う。
しばらくの間、
その人物からの言葉が頭の中をぐるぐると巡って頭が真っ白になった。
「‥‥‥‥いやそれは無いでしょ!!まずミレドは龍だし何よりこんな少女のはずがない。喋り方からして爺臭い喋り方だったから。」
「なんじゃ、おぬし!!そんな事思っておったのか!!失礼なヤツじゃな。‥‥はぁ、仕方ないのう。」
少女は目を瞑ると、数秒後体が発光、体がでかくなっていく。そして、
「‥‥これで納得したかのう。」
初めに会った龍の姿へとなる。