初めての魔物退治?
昨日は失礼しました。15部で完結となっていましたが、あれは操作ミスによるものでした。申し訳ありませんでした。まだまだ書いていく予定ですので、ご愛読の程宜しく御願いします。
―――日が陰りを出し始めた頃。
ネスクは森の中を歩いている。
薄らと影ができつつある森は、少しずつ魔物が眼を光らせる森となり、とても危険で不気味である。そして、森が途切れ、視界が開けるその先は……。
ミレドと会話を終え、特訓開始の合図とともにミレドは空へ舞い上がり姿を消した。
あの後、洞窟を戻り、白骨死体が転がっている入口から外へ出た。
外は一面が緑一色となっていた。
―――草木が茂り、上には木の実がなっている。
おもむろに地面に落ちている木の実を取ってみる。リンゴの形をしているが、リンゴと違い表面が光沢を持ち、何よりつるつるとした手触りで固い。
―――まるで金属を触っているかのような手触り。
魔力に集中し、左手に集め、
「【調べ物】」
リンゴのような木の実を持っている右手とは逆の手に本が現れる。
≪調べ物<ノート> ≫
書庫で調べたり、読んだりした本を現実世界でも読めるようにする本を召喚する魔法。
これは現時点で『守護者』として選ばれた者のみが使用可能。
頁を捲る。すると、木の実と同じ絵柄の実が出てきた。その名も
―――『リンゴット』。
リンゴット
食用できる果物。表面が金属のように光沢を持ち固い。リンゴのように甘酸っぱい味の木の実。
熱する事で表面の皮が溶け出し中身のみが残る。溶けた後の皮は、使用可能。
金属としては軽くて強度の高い金属である。
この説明を読むに食べれる木の実であるようだ。取り敢えず木の実を持っていくことにした。
*
―――それから、三十分程歩いた頃。
草むらが揺れ一匹の魔獣が姿を現した。
異常に発達した二本の牙。尻尾が二本。
そして、狐のような姿をしている。
『ヴヴゥゥゥゥゥ!』
理由は分からないが毛を逆立て唸られている。
『ガアッ!!』
―――地面を後ろ足で蹴り襲ってくる。
咄嗟に右へ転がる。
先程自分のいた所に獣の鋭い爪が空を切る。
鎌のような爪。背筋がぞくっとした。
数秒遅れていればあの爪で……。
纏わり付く獣の純粋な殺意で体が震える。
――けど、やらなければ自身がやられる。
獣と向かい合うようにしながら、
背中に背負った剣を抜き構える。
『ヴガァッ!!!』
再び獣は前の爪で襲ってくる。
爪が上から下へと振りかぶる。
それを再び右へと、転がり避ける。
転がった先で体勢を崩さず踏み込む。流れに載るように剣を獣の腹へ下から上へと振る。
――しかし、
バキッ!!!
金属の折れる音。剣が目の前で根元から真っ二つに折れ鞘のみが残る。
『キャウンッ』
さっきの渾身の一撃が魔物の腹に入り、獣が後ろに飛び退く。
しかし、致命傷には至らない。
―――剣が折れ、絶対絶命。
『ヴヴヴヴヴヴゥ、ガァ!』
もう体勢が整ったのか、再び襲ってくる。
――次は右から横薙ぎ。
それを下に避ける。
――左から右斜めへ爪を薙ぐ。
後ろへ飛ぶ。頬に痛みが走った。
手で触ると血がベッタリ。かすり傷が出来てしまった。
――頬から血が流れ出る。
(さてさて。どうしたものか……)
呑気な事を考えていられる余裕はないのだが。
後ろへ飛んだ事で間合いが出来て、考える余裕が生まれた。流れる血を拭き取りつつ考えを巡らす。
(こんな時、【調べ物】が使えたら……)
今、【調べ物】を開いてもこの魔物の文献に眼を通していないため載っていないだろうが、―――攻略本のように何かヒントが無いかと考えしまう。
本といえば‥‥‥‥。
ふと、透明な鍵『ソフリア・クレ』が脳裏を巡る。
そして思い付いた事を試す。駄目元ではあるがこの状況。やらないより、やった方がマシだ。
「【構造具現化】」
構造具現化<クラフト>
一定の間思い描いた物を具現化させる魔法である。しかし、実際の物より劣るため、使い勝手が悪いが刹那の瞬間に使う場合には十分過ぎる時間があり、一瞬に使い切る場合は実際の物の強度を越える。
右手に透明な両刃の剣(所謂、ロングソードの形)が出来る。
―――剣を構える。
『ガァ!!!』
再び獣が間合いを詰めてくる。
そして、上へと飛び、空中で1回転し尾を振りかぶってくる。―――踵落としの原理だ。
左に避ける。
地面が尾によってぽっこりとめり込んだ。
魔物は、その尾をバネのように使う。
牙を剥き出し、こちらへ噛みついて来ようとする。―――懐から在るものを取り出す。
獣の口の中へ放り込んだ。先程回収した『リンゴット』である。
『キャウン?!!』
リンゴットを口の中に入れられたため、獣が動きを止める。
その隙を付き、剣を振りかぶり振り下ろす。
獣の胴体は数秒後真っ二つに切れ血が流れ出る。その鋭さは、錆びて刃零れをした剣よりも剣らしい。
「はあはあ、一体。こいつは何だったんだ?」
緊張の糸が抜けて脱力する。いつの間にか息を切らしていたようだ。
顔に付いた返り血を払いのける。
「【調べ物】」
本を取り出し、調べるも当然載っていない。
魔物の事は書庫では調べていないからだ。
しかし、あるページで手が止まる。
―――『リンゴットのページ』だ。
説明の後にこう書いてある。
【テウメッソ】
この果物を持っているとこの獣に襲われる可能性が高くなる。基本、この実は森の奥でしか取れないため栄養がとても高い。この獣はリンゴットを好んで食べるため、リンゴットを持っていると自分の獲物を盗られたと思い襲ってくる。特徴は二本の牙と尻尾、鎌のように鋭い爪、狐のような外見をしている。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
(もっと早く読んで置くべきであった……。)
こめかみを抑えながら、
自分の行動を反省するネスクであった……。
それからしばらく歩き続ける。
日が陰り出し、森が不気味になりつつある。 洞窟を出ておよそ一時間程。
あれからスライム、スケルトンなどと戦いながら進んでいる。
そして森が広け、視界が開ける。
夕日が差し湖の水が紅のように赤くなり、水面がキラキラと日を浴び煌めいている。やっと着いたようだ。
「ようやく、来たようじゃな……。」
ドスン、ドスンと地ならしをしながらミレドが近付いてくる。