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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
1章 転生、異界『ラシル』の地にて。
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ミレドの教え≪レクチャー≫その1

<????>

 草木が風に吹かれて擦れる音か森中に響く。


  黒い()()()()が駆け抜ける。


 草木を掻き分け、自分より何倍もある岩を飛び越えて……



 走る 走る 走る 走る


 その体は擦り傷だらけになりながらも


 走る 走る 走る 走る 走る



 その体に似合わない()()()()

 鎖に擦れ、カシャカシャと音を立てる。


 頭には、赤毛の先が尖った耳、

 体はボロボロの布同然の服に包まれて――


 耳が周りを伺うようにピクピクと動く。


 まるで()()()()()()()()()()()()()()()のように必死に……。



 





  *

『おぬしはこれからどうするのか決めておるのかのう?』


  今、ミレドグラル様が持ってきた肉を焼いてもらって食べている。丁度良い焼き加減(ブレス)である。

 食べ終わるのを見計らってのその言葉。食べるまで待ってくれたのだ。威圧的な雰囲気(オーラ)とは裏腹に優しい――そう感じる。


「うーん、行く当てもありませんし、何も考えていません。」

  お腹一杯に膨れ上がったお腹を擦りながら問に答える。

  実にお腹が満足したといわんばかりに満腹中枢が働いている。まるで久しぶりの食事に体が反応するかのように。


「行く当てが無いのなら、しばし、此処に留まると良かろう……。

 妾がおぬしのことを鍛えてやる。そんな貧弱な身体じゃとここを出た瞬間に魔物の餌になりそうじゃからな。」


  確かに魔物のことはよく分かっていない。正直な所この申し出はとても有意義である。ここを出た瞬間に魔物に喰われてそれで終わり(ジ・エンド)とは洒落にならない。

 ―――そんなのお断りだ。


  考えがまとまると、ミレドグラル様にその事を伝える。

「その申し出慎んでお受けいたします。どうぞ、暫くの間、宜しくお願いします。」


「ああ、そんな畏まらなくてよい。こっちが気が滅入りそうになる。友人と話す口調でよい。

 後、妾のことはミレドで良いぞ。」


「‥‥‥‥。分かりま‥‥‥‥分かった。」


「うむ、では、≪最初の課題≫じゃ!

 此処から出て北西に向かうと湖がある。()()()()()()()()。」


「先程此処を出ると直ぐ魔物に喰われると行ったではないですか。それを一人で!?」


「無論、おぬしが対応できない魔物は妾が先に排除しておく……。じゃから、おぬしは弱い魔物を駆除しながら進むことじゃ。

 まずは魔物と戦う事で慣れろ。その方が速い。」


「分かった……。でも、その前に『魔法』について教えてくれ。」


「‥‥書庫で調べたのじゃ無いのかのう?」


  怪訝そうな声音。どうやら、ミレドは魔法の事も書庫内で調べて来たと思っていたようだ。

「調べた。が、実際に使った方が早いとのことだから。知識は覚えたが使い方は知らん。」


「なるほどのう……。()()()()()()()()と‥‥使えなんだな。

 良かろう、教えて(レクチャーして)やろう。」


「その言い方。‥‥ミレドは書庫に"入った事"があるのか?」


「ああ、あるぞ。『ジル』に一度だけな‥‥」


「へぇ~~そうなんだ……。」


  ジル、確か初代守護者の‥‥。


「では、始めるか。(はよ)う始めなんだら日が暮れてしまうからのう。まず、魔力は生物全てに通っておる。その魔力は何処に溜まっておるか分かるかのう?」


「≪心臓≫つまり体の中心でしょう?」


「左様その通りじゃ、魔力は心臓に溜まる。その量は人それぞれじゃ。例えるなら、体が器、魔力が水じゃ。器は、鍋、コップ、やかんなど様々あるじゃろう?それと一緒じゃ。」


「じゃあ、元々。器が小さい奴はずっとそのままなのか?」

「いや。ある方法を使えば、

 大きくする事も可能。

 ―――じゃが、おぬしには効果無いじゃろう」


「なぜ?」












「おぬしは既に器の大きさが限界を()()()()()。それ以上大きくすると体が持たなくなるからのう。」


「そうなのか……。」


 ―――少し、残念である。魔力の器が"それ以上、大きくならない"という事は、

 ―――器の伸び代が無い。ということだ。


(‥‥ということは、

 貯める事の出来る魔力はそこまで多くは無いといことか…。)

 そうこう考えているとミレドのレクチャーが続いていく。


「心臓から血管を通って全身に流れるようイメージしてみよ。そして、魔力の流れを感じるのじゃ。まずはそこからじゃな」

  言われた通りにまずは、

 ―――魔力の流れを感じてみる事にした。



  石碑に触れた時に流れた魔力を思い出す。温かくて全身に行き渡っていくようにそして、源は石碑ではなく心臓にイメージを置き換えて。



 ―――中心(心臓)から体全身へ‥‥‥‥。

 


  リズミカルな鼓動で血と共に魔力が運ばれていく。()()()()()を感じる。


「‥‥感じたかのう。では!

 その流れを意識しながら手に集中してみよ。」


  魔力の流れを意識する。そして、集中力を手に切り替える。手の平いっぱいに全身に感じていた温もりが手に縮小してとても熱い。


「そして【(ファイア)】と唱えてみよ!!この時も燃えるイメージを強く思え。」


 業々と燃え盛る炎が手の平で燃えるように

 空気中の空気と空気が擦れ合い火花が散り、酸素に引火し火が()()()に膨れ上がる。


「【(ファイア)】」

 手の平に炎が出る。


 ――が、


 炎が段々と巨大になっていき、


 ―――そして


 ボオンッ!!!


  炎が勢いよく吹き飛んだ。顔には(すす)が付き、髪がチリチリになる。


「成功じゃが……、おぬしは一体。

 何をイメージしたんじゃ?」

「火が起こる理論を少々加えました‥‥。」


  素直な回答。それ以外の言い訳はしない。

 ‥‥反省しよう。


「‥‥‥‥まあ、良い。こうもあっさり成功させるとは、のう。おぬしは魔力適性が高いようじゃな。」


「おかげで魔法の事がよく分かったよ。ありがとう」

 チリチリになった髪を戻しながら言う。


「何、こんなの朝飯前じゃ!あともう一つ、レクチャーじゃ!魔法は『イメージ』が大切なのじゃよ。理論も大切じゃ。が、どんな現象を起こすのかが重要なのじゃ。

 ――じゃが、それと比例して現象を起こす魔力が消費されるのじゃ。現象は大きければ大きい程、それに伴い魔力も多く消費されるのじゃ。そこは注意しておくように。

 魔力を大量に消耗すると、魔力切れでしばらく動けんようになる。まあ、おぬしの場合は滅多に無いじゃろうが……。」


(それは限界突破をしているからだろうな

 おそらく。)

 その言葉に少し胸の当たりがチクリと痛む。でも、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 首を振り、気持ちを切り換える。

「忠告ありがとう。あと、僕のことは"ネスク"と呼んでくれ。」

 そう伝えると、

「良かろう、ネスクよ。では、

≪特訓開始≫じゃ!!」


 若干、楽しそうにミレドが言う。

 そして、翼を広げて外の世界へと羽ばたいて行った。

  何だか、とても大変な事になった気がする。

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