神話のその後と移りゆく世界
魔王を打ち倒した後、その勝利を祝い宴が開かれた。
飲んで騒いでどんちゃん騒ぎ。
三日三晩続いたそうだ。《恐怖》から解放された事もあるが、
―――女神が現れ、その力を貸して貰えたことが大きかった。
その後、三年間は混沌に見舞われた。各種族が失った物を取り戻すために躍起になった。
食料確保や建物の建て直しで元に戻すのに時間がかかったからである。落ち着いた頃に聖龍が二人の英雄のことを告げ去っていった。最初は皆、困惑をしていたが次第に落ち着きを取り戻す。
そして、月日が流れ、十年が過ぎた。この頃にはもう既に今の国の形になっていたが、今と違い、まだ各種族と人間の交流は盛んであった。―――しかし、それは長くは続かなかった。
事が動き始めたのが、それから翌年。
次第に人間が他の種族より優れているという考えが芽吹き始める。その例が『レイブ』と『ジル』。二人が先の魔王討伐の功績を出した事が大きかった。
種族の為に戦ったはずの二人が皮肉にも、人間が最も優れている証拠にされてしまったのである。
そこからの人間の膨張は急激であった。種族間の交流は徐々になくなり、他の種族との絆は徐々に亀裂が入っていった。
―――そして、ある時を境にその繋がりも完全に崩壊した。
―――女神『セレネ』が人々の前から完全に姿を消してしまったのだ。
人間は女神『セレネ』が姿を隠してしまったのは、他種族にあるという理由で唯一人間以外の種族で作った国であった【ペルメス連合国】に【聖王国イブ】が攻め込んだ。
結果は【ペルメス連合国】が勝利した。
だが、人間と種族間の繋がりはこれ以降完全に切れてしまったのである。
人間は他種族を差別し、奴隷とする風習始めた。
【ペルメス連合国】が勝利したものの多勢に無勢である。この時点で人間の数は他種族のおよそ数倍にもなっていた。3つの国が連合を組んでしまうと勝ち目が最早ない。
この戦争で【ペルメス連合国】側が求めたのは、不可侵の条約であった。人間による侵攻に備えるために他種族は力を付けるためにである。
◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇
最後の本を閉じる。
「‥‥大体の事は分かった。」
―――自分の情報、聖域と神話、そして龍。
今まで調べて来た情報が頭の中を駆け回る。
しばらく目を閉じ、こめかみを押さえて頭の中の情報を整理していく。余りの量だったためか頭が重く痛くなってきた。
‥‥‥‥甘い物が欲しくなってきた。
そう思っていると、
「よろしければ食べますか?」
目を開けると目の前に皿に載せられた黒い塊が置かれている。『チョコレート』である。
(君はテレパシーか何かでも使えるのか?)
ソフィアの余りにも心を読んでいるのかという気配らせに疑問が浮かぶ。
「はい。読んでいます。」
(なあ~~~~にぃ~~~~ぃ!!!???)
「‥‥当然でしょう。ここはオオヅキ様の心理世界にも繋がっていますから。そんなの朝飯前です。えっへん!」
そういうと、胸の無い体を反らして、威張ってくる。
(こういう子供のようなこともするんだなあ)
「ちょっと、聞こえてますよ!!」
普段どこか大人びたソフィアの子供じみた体相応の無邪気さを見ながらほのぼのとするオオヅキであった。
やっと書きたい情報を粗方書くことができました。
次回は少しソフィアと話した後、現実世界に戻ります。