広場にて
観衆の熱気が襲ってくる。
お立ち台にあげられ、どうでもいい宣誓を掲げさせられる。
いい迷惑だ。
「そして!!私たちは!!必ず魔王を打ち取ってくると誓おう!!」
『オオオオオオッ!!!!』
異様な民衆たちの顔は希望に満ち溢れている。
彼らは「差別」しているつもりはない。
「抵抗」しているだけだ。
「亮一!!お前も声を出すんだ!」
神の子のごとき美しさを持つ男が駆け寄ってくる。
後ろで突っ立っているのがバレたのか。
民衆の叫び声と眩しいほどの日の光を背中に乗せた彼はとても神々しかった。
「いや、今は喉が痛くて。叫ぶのは辛いんだ」
本当に辛そうな、悔しい表情を浮かべると、男は簡単に信じたようで、こちらを案じてきた。
それを大丈夫だと押し返すと、再び前へ戻って行った。
馬鹿か、こいつ。
そのとき、人だかりの向こうに、見知った顔が見えた気がした。
周囲に不審がられないよう、そっと見渡す。
ああ、やっぱり、彼女だ。
無事に生きていることはわかったが、なぜここにいるんだ?
捕まったらどうするんだ。
そんな心配をしていると、その隣に見知らぬ男が、他人とは思えない近さで立っているのに気がついた。
あれは誰だ?
二人ともフードを被っているが、テンションの差でバレるぞ。
嘘でもいいから盛り上がったらどうだ。
おっと、見回りの憲兵だ。
広場の反対側。
あいつらも気づいていない。
「おい」
隣に、同じように突っ立っていた友人の腕を軽く叩く。
「なんだ」
「あいつらを隠してくれ」
「は?」
顔は二人からずっと離さなかった。
友人も誰のことを言っているのかわかったようで、ああ、と呆れたように呟いた。
「少し"弾く"だけだぞ」
「いい、憲兵がくる」
スッと二人の存在が消える。
もう彼らが見えるのは友人だけだ。
そうしているうちに、演説は終わったらしい。
勇者たちは、リーダーに率いられ降段していく。
自分も友人とともにそれに続いた。