誰!?
今日も朝から森へ来ていた。
しかしヴィゴはいない。
どこかへ出かけてしまっている。
「一人で森に行くな。いいな、行くなよ、絶対」
この言葉を忘れたわけでは、ない。
ない、が・・・・・・
「暇でしょうがない!!!」
叫んだ言葉は誰に聞かれるとも無く、虚しく響いた。
実際森でまだ危険な目にはあっていない。
それに誰にも見られずに描く絵と見られながら描く絵は違う。
と、いろいろ理由をつけて家を飛び出したはいいものの。
(なんか、変な空気・・・・・・)
森を見渡すが、いつもの穏やかな雰囲気がしない。
なんというか、緊張した息遣いをどこからか感じる。
・・・・・・電波少女じゃないからね。
初めてヴィゴの案内なしで森を歩く。
当然、道なんてない。
家の周りはまだしも、進んで行くと、原生林みたいな荒々しい景色になっていく。
植物もサイズが大きい。
(小さい魔物がいない)
いつもなら木の上を逃げるように走る魔物も、今日は見ることはない。
偶然だろうか。
しばらく進むと、いつも見る小川に行き着いた。
どうやら迷ってはいなかったようで安心する。
川辺の手頃な岩に腰掛け、一息つく。
すると、微かだが、人間の匂いがした。
普段森の匂いばかり嗅いでいると、異質なものに敏感になる、気がする。
ヴィゴの匂いでもない。
あたりを見渡す。
(どこ・・・・・・、あ)
足元だった。
登って来た反対側にいた。
小さな女の子が。
(・・・・・・誰だ!?!?)