奇妙な家族が事故物件巡りをしてたら本当に怖い目にあった。
カーテンが開いた。
そう、朝がやって来たのだ。
ずーっと待っていた。
その時が来るのを。
今日は家族でお出かけ。
どこまで行くかって?
特に決まってないんだけど、ドライブすることだけは決まっている。
高速に乗ってどこまで行くのか…。
家族といっても本物ではない。
たまたま人数がその程度しか集まらなかったからそうなっただけである。
年齢的にも当てはまるのが家族らしくて面白い。
父、母、兄、姉、僕、妹、弟。
7人揃っている。
顔は全く似ていないんだけどね。当たり前だけど…。
車はレンタカーを借りてきている。
もちろん父親役の人がである。
「さぁて、何処に行こうか?」
「そうだなぁ〜。…何処がいいと思う?」
「遊園地!」「は飽きたからヤダ!」「え〜!?いいのになぁ〜。」「却下。」
「なら何処がいい?」「なんかありきたりの場所はやだな〜〜。正直飽きちゃって…。」「なら何処がいい?」「事故物件巡りとかは?」「何?それ。そんなのちーっとも面白くない!」「でもさ〜他に何かある?面白そうな場所。」「う…ん。」「じゃあ、決まりだね。」
と言うことで、事故物件巡りをすることになった。その手のはネットで調べればすぐに出てくる。便利な世の中だ。
別に本当に住むわけではない。
ただ単に面白半分なところが大きい。
妹は一番嫌がっていたが…。
今はだんまりを決め込んでいる。
最初に着いたのは閑静な住宅街の一角にあるマンション。
何処にでもあるマンションなのだが、ここではどうやら事件があったようだ。殺害されたのも載ってる。ただ詳しい内容までは書かれていない。
大家は借りてくれるものと思い熱心に勧める。
でもね、僕らは全くその気はない。
ただ見たいだけ。
どうやら事件があって以降借りてはないらしい。そりゃそうだ。よほどのことがない限りそんな不気味な場所借りたいと思う方がおかしいんだ。
僕らはそんなことは気にしない。なので、持ってきたビデオカメラで周りを録画しながら動き回る。業者は借りてくれるものを期待してか腰が低い。
「ねぇ、パパ。僕他のところも見て見たい。」「そうそう、ここだけしか見ずに決めるのもどうかと思うよ。他にも行こうよ。」
これが私達のやり方だ。
ただし一応値段だけは聞いておく。
そして一番安い場所をジックリと見て回るのだ。
そして、二件目にやってきたのは一戸建ての家だった。
予算額(だいたいの想像額)を大幅に超えると思っていたのだが、ここは意外と安かった。
ここは家族が身内を惨殺するという事件があった場所。上2人は期待に息が上がっている。
僕は…ちょっと…ね。
少しは霊感持ってるらしく、下二人は嫌がった。
そこを後にして三件目、四件目と周り、今は五件目を周り終えたところだ。
もちろんビデオカメラは回しているよ。
何か映ってるかもしれないからね。
僕はあまり期待してなかったんだけどね。
お昼に近くなったので、どこかで昼食をと通り道にあった店に入る。ここはどうやら個室が使えるようだ。メニューを見て注文し、料理が出てくるまでの間の短い時間にさっき撮っていたビデオカメラを巻き戻し最初から見て見る。
一件目は特に何もなかったなぁ〜。
まぁそう簡単に何かが映るわけでもないだろう…。
でね、二件目に訪れた一軒家でのビデオ映像にそれは映っていた。天井からぶら下がる黒い塊。頭だけがちょこんと出ているように映っている。
それが徐々に動き出し、私達のすぐそばまで来た時ボトリと塊が落ちた。
それが立て続けで二回もきたもんだから、下二人はキーキー悲鳴をあげ出した。ここは店だからと静かにさせ、続きを見る。
部屋を移動して見たら、今度は手が出て来た。その手は何本も出て来てそれぞれが意思を持っているかのように蠢いていた。
さすがにこれはまずいと慌てて早送りをかけるが、ここまで見てしまった以上、最後まで見るしかないと観念して下二人は見ていた。互いの手をぎゅっと握りしめて…。
それ以降の訪れた事故物件は特にこれといって怖いことはなかった。さすがに二件目にあった体験には勝てないと皆思っていただろう。その時ちょうど料理が運ばれて来た。
ビデオカメラを脇に寄せ、食事を始めるが、ビデオカメラが気になって仕方がなかった。
それはそうだ。
誰だって同じだろう…。
それからの事を皆で話し合い、今日はここでお開きということに決まった。
最寄駅のそばまで車で運んでもらい、皆その場で別れた。また再開するかもと期待をして連絡番号は控えてある。
ビデオカメラを持って来ていた姉役の人からラインが入っていた。
見て見ると…まずいらしい。
どうやら事故に巻き込まれたらしく、今病院の処置室にいるそうだ。
巻き込まれたって?どのように?
僕は興味本位で書いていた。
歩いていたら、車が急に突っ込んで来てね、慌てて避けたんだけど間に合わなくて体の一部が車と接触。で、飛ばされたんだけど、それほどひどくはないという。何より本人の意識がはっきりとしている。それが何よりだ。
「そう言えば…。」と書き出しがあったが、書くよりも直接話した方が早いと、電話をかけてみた。
何回か鳴った後で電話が通話になり、本人と話しができるようになった。連絡先聞いといて正解だったかも…。
でね、聞いてるうちに気持ち悪くなってきちゃった。だってね、歩いてた時にふとビデオカメラが気になったんだって。何でだろう?
ビデオカメラはみんなで見た時以降見ていなかったといってた。でもね?こういうのってそのままにしとくのもよくないかもって思って一度は消そうとしたんだよ?だけどね、なんかこう〜不気味なものを感じてね、歩きながら見てたんだって。危ないのにね。
でね、例の不気味なものが映ったあたりで後方から何か車の音が聞こえたんだって。それも猛スピードで…。
運転手はこちらには気づかなかったっていうけど、横断歩道はちゃんと歩行者側が青になってたという証言もある。
彼女もそういっていたっけ。
「仕方がないのでビデオカメラを誰かに預けたい。」と言うので僕が預かることに。
彼女いわくそれが関係している気がしてならないと言う。僕には霊感なんてものはないから何をそんなに驚くのかがわからない。
でもね、そんな僕でも怖い目にあった。
誰かにどこからか見られている気配を感じるのだ。それが誰なのか…どこからなのかが全くもって分からない。
でもね、気になるのはビデオカメラだけ。
「まさかここから見てるわけなんてないよな。」なんて独り言を大声で言う。
正直何なのかが知りたいとは思うけど、怖い目に会うのだけは勘弁して欲しかった。
そんな期待を見事に裏切ることが起きてしまう。
お風呂に入っていた時、突然大きな音でテレビがついた。消して入ったのにだよ?
大音量だったので慌てて消しにいったよ。
戻ろうとした時机の上に乗っているそれに気付いたよ。
そう、ビデオカメラだ。
それも電源が入っていた。
たしか…渡された時にも電源入れてなかったはず。なのに何で?
ビデオ映像は例の不気味なものが映ったあたり。
その時ふと後ろを振り返った。
でも何もいない。
怖いよね。
慌てて電源を落としたよ。
そして振り返った時僕の目の前にいたものは…。
そこから記憶が飛んでいる。
何かを見たのには違いないが、思い出したくないようだ。考えると頭が痛くなる。
一体僕は何を見たと言うのだろう…。
それを聞いたビデオカメラの持ち主の姉役の人はすぐにビデオカメラを処分した。
それ以降、怖い目にもあってないし、事故物件巡りも辞めた。
今では当時のメンバーとラインをするだけに留めている。