夢物語の歩音
世の中の全ては
物語になる
君が虫を踏もうとも
虫を踏まずとも
君の枕が
後頭部にあったとしても
足元で
ふて寝していたとしても
君の顔が
今日はバッチリだろうと
昨日泣いたから
ずんぐり腫れていようと
君の服が
スッキリ着れようと
悩みの末に
アンバランスになろうと
君の持ち物が
全て揃っていようと
何故か
照明のリモコンが入っていようと
君の時間が
明日もあろうと
今日の帰りに
無くなってしまうとしても
くだらない物語ばかり
見せやがって
夢物語と空想の狭間で
遊ぶ事しか出来ず
現実の物語に
納得いかないからと
逃げ込んだ世界には
自分しか居ない
一人の物語は
交互に映り
駄作だなんだと
繰り返し上映される
一番どうでも良い日の
一番どうでも良いパジャマを
見られても良い人は居るか
その存在だけが
君を救う
君の足音は
続いているから
君が何かを考えると
考えない君が
浮かび上がる
君が人間を見ていると
人間だと見ない君が
掘り下がり
君が自然の音を聞いていると
自然の音を聞かない君が
セメントを練る
君が大切なモノへ触れると
大切なモノを壊す君が
影で映り
君が未来を信じると
何も信じられない君が
立ち止まる
君が心を抱き締めると
抱き締められない君が
砂になる
くだらない物語ばかり
見せやがって
綺麗なままで居られるなら
最初から綺麗だと言ってくれ
リバーシブルの身体は
いつ出来上がったの
日に焼けるだけじゃない
塩水に浸けられた
鉄釘みたいに錆付いて
動く部分と動かない部分
分けたのは誰だ
一番最初にどうしようもないと
思った自分自身は
一番最後に活躍しなくてはならない
その存在だけで
自らを救える
パイプオルガンが鳴り響く
教会を横目に
歴史ばかりに目のいく人間には
なりたくはない
今の現実を
作ってんのは自分だ
ステンドグラスを砕け
夢物語は
沸騰したお湯の中
レトルトカレーに変わる
隣の部屋の掃除機の音
上の部屋の子供の足音
蛇口から水滴
焜炉の火を消して
電子レンジの中の白ご飯
熱くなるなら
リスクを得る覚悟を決めろ
くだらない物語ばかり
見せやがって
頭の中の理想は
がなりがなり
コンセントと充電器
不屈の闘志は不靴の闘士
素足で走れば痛いだろう
あの痛みが出来事だ
時には刺さり
時には爪が変形し
時には歩けぬ道もある
靴を履いて生まれた人間は居ない
生まれ落ちた先で
靴を履かされてるだけだ
サンダルで歩く夢物語は
無理しなければ
全力で走れないのだ
一番歩いてる人間が
最後まで歩けるわけじゃない
一番上手く歩いてる人間が
最後まで歩けるのだ
その歩音だけで
昨日までを救えていく
夢物語の歩音は
君を救う