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第4話 俺はステータスを見てみた。

 この世界の事について、少しは知識が増えた健魔だったが、新たに疑問が生まれてしまうのだった。


 「とりあえず、どこか街まで行って、もうちょっと情報を集めよう。 RPGの基本だしな!」


 健魔はメリエルとエルフィーナに向け、町で情報収集をする事を提案した。


 「そうですね、健魔さん。」


 「ああ、それで構わん。」


 「健魔さん。 ちなみにですが、ステータスを見る方法なら分かりますよ?」


 メリエルが、健魔の口にした疑問に対して、解答を持っている様だった。


 「ステータス!? そんなの見れるのか!?」

 「教えて!」


 「どちらの手でも良いので、自身の眉間に人差し指を当てて、「ステータス表示」と発言すると、眼前に四角いウインドウが出ます。」


 「ゲームかよ!?」


 健魔はたまらず突っ込む。


 「ちなみに、このウインドウの端に指を当て、そっと弾くと、相手に飛ばして見せる事が出来ます。」


 「な、なんか便利だな!」


 「まぁ、先程の通行人が説明してくれた様に、この世界は中々に物騒だ。 このウインドを人に見せる事で、回避出来る問題もあれば、逆に見せた事で問題になる場合もあるだろう。 気を付けろよ、健魔。」


 「なんだよ、2人共ポンコツだけど、ポンコツじゃないところもちゃんとあるじゃん。」


 『・・・・・・。』


 「あっ・・・。 ごめんなさい・・・。」


 笑顔でじっと健魔を見つめる2人。しかしそんな2人の表情とは裏腹に、健魔には2人の笑顔の奥に潜む怒りが、人の様な影の姿に具現化し、それぞれの背後に立っている様な、そんな幻が見えた様な気がしていた。


 「ま、まぁ、とにかく見てみるか!」

 「ステータス表示!」


 健魔は自身の眉間に、右手の人差し指を当て、そう言葉を発した。


 「えーっと・・・何々。 職業、ニート、レベル19・・・。」


 健魔は、眼前に展開した自身のステータスウインドウの上部に書かれている、情報の一部を読み上げた。


 『・・・・・・。』

 『ふっ。』


 「そんな憐れむ様な目で、俺を見るなぁ!!」


 健魔の読み上げた情報を聞いていた2人は、健魔を可哀想な人を見るような目で見ながら、1つ小さく噴き出した。


 「俺は未だニート歴1年だよ! 普通レベル1だろ!? なんで俺の年と変わらない数字になってるんだよ!?」


 「そ、そういうお前らはどうなんだ!?」


 「私達ですか?」

 「我等か?」


 『ステータス表示!』


 「私は職業、戦慄の魔女、レベル178です。」


 「我は、破壊神、レベル146だ。」


 健魔がメリエルとエルフィーナに職業を聞くと、2人共ステータスウインドウを展開させ、健魔の読み上げた情報量と同じ量だけ読み上げた。


 「それ職業!? レベル高っ!? ていうか、あれ!? 中身が女神なのはどっちだっけ!? 何かどっちも物騒な職っぽくて、分からなくなるな・・・。」


 2人の職業とレベルを聞いた健魔は、突っ込み、驚き、問い掛ける。やはり創られたばかりとは言え、2人共神なだけはあると言える、職業とレベルをしていた。


 「我が女神だ。 忘れるな、健魔。 次忘れると壊すぞ?」


 「もうセリフが女神のそれじゃないよな!?」


 冗談のつもりだった健魔だが、そんな発言をした健魔に対して、エルフィーナは二度と忘れない様に、自身の職業に関連付けて、脅しを掛けた。


 「と、とりあえず、職業ニートの説明はっと・・・。」

 「えぇっと・・・。 頑張ろうと思えば、どんな職にでもなれる可能性があるかもしれない万能職です。 もしかしたら、あなたはこの世界の救世主になれるかも? ぷぷっ。」


 「ふざけんなっ! 説明の中でも俺を馬鹿にしやがって! これ作った奴どいつだ!?」


 少々動揺しながらも、自身の職業の説明を読み上げた健魔は、怒りを露わにしながら、ステータスウインドウの作成者に、八つ当たりしようとする。


 「あっ、ステータスウィンドの作成者、貴方の愛する神よりって書いてますね。 どの神でしょうか?」


 「いや~、これ作った神様って流石だな~! ばっちり的を得てる。」


 メリエルが、作成者の標示を見付け、それを読み上げると、健魔は直ぐに態度を一変させた。


 「見事な掌返しだな、健魔。」


 「いや~、何の事だか。」

 「よし! 町を探しに出発だ!」


 態度を一変させた健魔を、ジト目で見ながら指摘するエルフィーナ。しかし健魔は、どこ吹く風で気にした様子も無く、先へ向けて歩き出す。


 「しょうがない方ですね。」

 「仕方の無い奴だ。」


 こうして、健魔達3人は、町を探しに歩き出した。


 「いや~。 今までバタバタしてて気にする暇が無かったけど、この世界は自然が一杯あるな。 というか、今の所自然しかないな・・・。」


 「そうですね。 健魔さんの居た現実世界は機械科学が発達して、機械などが生活の基盤になっていましたが、この世界では、自然科学が発達していて、魔法が生活の基盤となっています。」


 「お~。 メリエル、なんか先生みたいで良いな。 なんかこう、美人なだけあって、素直に聞ける感じだ。」


 「そ、そうですか?」


 メリエルはここまでの付き合いで、健魔の性格を段々と掴み始めて来ていた。ダメ人間ではあったが、裏表が少なく、素直に感じたままを言葉にする。そんな健魔からの美人という発言に、思わず照れる事となった。


 「そう言えば健魔よ。 職業、ニートとはどの様なスキルや魔法が使えるのだ? この世界では前代未聞な職業故、気になるのだが。」


 「そうですね。 私も少し気になります。」


 「そ、そうか? なら見てみるか。」

 「ステータス表示!」


 メリエルとエルフィーナの2人に、自身の職業について気になると言われた健魔は、嬉しそうに顔をニヤ付かせながら、ステータスウインドウを開いた。


 「えぇっと・・・、おっ? 3つ、何か書いてあるな。」

 「1つ目は、スキル、死んだ魚の目。 使用者の目を見た相手は、ある意味恐怖に駆られ、少しの間怯む。 場合によっては憐れんでくれて、戦意を完全に失くさせる事が出来るスキル。」


 『・・・・・・。』


 健魔は、自身のステータスウインドウに書かれている事柄を読み上げていく。その傍らでは2人が真面目な顔をして黙って聞いている。


 「2つ目は、スキル、働きたくない! 使用者はその場で寝そべり、完全にだらけた姿勢を取る事で、相手の戦意を失くす事が出来る。 但し、激怒された場合は、相手の攻撃力は5倍になるスキル。」


 『・・・・・・。』


 「ははっ。 もういっその事笑ってくれよ・・・。」


 健魔は自身の2つ目のスキルを読み上げた時、場の沈黙に耐えきれなくなり、自虐的に笑いながら、2人に笑う様に求めた。


 「健魔さん。 これは中々に強力なスキルですよ。」


 「え?」


 「ああ。 臆病な健魔にとっては、最適なスキルではないか。」


 「えっ!? 意外と高評価!?」


 メリエルとエルフィーナからの評価は、健魔にとっては思ってもみなかった程高評価であった為、健魔は思わず驚く。


 「じゃ、じゃあ、えっと最後は・・・、魔法適正・・・ほぼ皆無。 ステータスウインドウを開く事だけは可・・・。」


 『・・・・・・・・・。』


 魔法の発達した世界で、魔法適正ほぼ皆無という現実を突き付けられる健魔。それを聞いていた2人は、健魔に対し、流石に同情する目を向けずにはいられなかった。


 「健魔さん・・・。」


 「健魔・・・。」


 「私達が守りますから。」

 「我等が守る。 元気出せ。」


 2人は優し気な顔をして、健魔を元気付け様と声を掛ける。


 「うぅ・・・。 ありがとう・・・。 本当に・・・、ありがとう・・・。 俺、お前らに会えて良かったよ・・・。」


 『はぁ~~~~。』


 「うん?」


 「いえ。 なんでもありません。」

 「いや。 なんでもない。」


 長いため息を吐くメリエルとエルフィーナ。今の2人は、何だかダメな男を、更にダメにしてしまうかもしれないのに、ついつい甘やかしてしまう、そんな微妙な心境になっていた。


 「そ、そうか?」

 「おっ? あれ、建物っぽいの沢山建ってるし、町じゃないか?」


 「その様ですね。」


 「日が沈む前に辿り着けて良かったな、健魔。」


 健魔が道の先で、建物が数多く建っている場所を見付けた事を、メリエルとエルフィーナの2人に告げると、2人もそれを確認して顔を綻ばせた。


 「よし! 2人共早く行こうぜ!」


 「はいはい。」


 「まるで子供だな。」


 目をキラキラと輝かせながら、町を見てはしゃぐ健魔の姿に、少し呆れつつも、笑みを零す2人。


 こうして、健魔達3人は辿り着いた町へと入って行くのであった。

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