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第3話 俺は世界を知り始めた。

 神へ悪態を突いた健魔は、何所で聞いていたのか神から警告を受けた。そして、警告を受けた健魔は恐怖に駆られ、悲鳴を上げたのだった。


 「すいませんでしたー!」


 すると、恐怖に駆られていた健魔は、謝罪の為の土下座をその場で敢行した。


 「ふむ。 健魔よ。 上空に「汝を許そう」とドラゴン達が集まって文字を形取っておるぞ?」


 「怖えよ!! あのおっさん、何でもありか!? あっ、神だもんな・・・。 ありか・・・。」


 今度は女神の黒髪美人が、空にドラゴン達が自身の体を使って、文字を書いている事に気付き、健魔にその事を伝えた。すると、健魔は驚きはしたが、もう大分馴染んできたのか、納得する様になっていた。


 「はぁ・・・。 何だか、異世界生活が始まる前から、すでにもう疲れて来たぞ、俺・・・。」


 健魔はため息を吐き、自身がすでに疲労困憊であることを呟いた。

 

 「それで? 2人は体どうなんだ? ちゃんと使えるのか?」


 「い、いきなり体を使った奉仕の要求ですか!?」


 「健魔よ。 我等にセクシャルハラスメントか?」


 健魔は、女神と魔神の女の子の体と精神が、あべこべの仕様で創られてしまった事を案じたが、健魔の言葉の選択が悪く、女神と魔神の女の子に勘違いされてしまった。


 「ち、ちっげーよ!! 何かおかしな事になってるっぽいから心配したんだよ!! ていうか、何であんたはセクハラを正しく言えるんだよ!? あっ、でも可能ならお願いします!!」


 そんな2人に対し、健魔は怒涛の勢いで突っ込みを入れ、更には自身の欲望をも加えて告げていった。


 「それで現状ですが、私達は未だ上手く力が使え無い様です。」


 「その上、我等は互いに、どの様な女神や魔神であったかも分からぬ。 自身の名もな。」

 

 「おぉいっ! 無視かっ!?」


 しかし、女神と魔神の2人は、健魔の言葉を聞いていても意味が無いという様に、現状の話へと話題を転換した。そんな2人の対応に驚きを表す様にして、健魔は突っ込みを入れるのだった。


 「ふふふっ。 なら俺が命名してやろう。 こういうのって、肩書と名前があれば良いんだろ?」


 『・・・・・・。』


 健魔は、ニヤニヤと女神と魔神の2人を見ながら、自身の考えを提案した。しかし、そんな健魔の様子から、女神と魔神の女の子の2人は、綺麗なその美貌を、ひどく嫌そうな顔に歪ませた。


 「何で2人共、そんな嫌そうな顔してんだよ!?」

 「もう付ける! 付けちゃうからな! 魔神の方は《白の魔神メリエル》、女神の方は《黒の女神エルフィーナ》だ! どうだ!?」


 そんな様子を示した2人に突っ込みを入れる健魔。しかし、健魔は突っ込みを入れた勢いのまま、間髪入れずに、女神と魔神の2人の肩書と名を、それぞれに告げて行った。


 「肩書は見た目をそのまま付けたのですね。 名前は気に入りました。」


 「我も、名は気に入った。 名はな。」


 健魔の付けた肩書は、あまり気に入っていない様子のメリエルとエルフィーナだが、どうやら名前の方は、両者共気に入った様だった。


 「ま、まぁ・・・、名前は気に入ってもらえた様で、良かった・・・です・・・。 はい・・・。 よし! とりあえず、これから宜しくな! メリエル。 エルフィーナ。」


 「宜しくお願いします、健魔さん。」


 「ああ、宜しく、健魔。」


 命名について、メリエルとエルフィーナが口から零した感想を聞いた健魔は、苦笑いを浮かべてがっくりしたが、気合を入れて気を取り直し、2人と改めて挨拶した。


 「これでやっと、この質問が出来るわ・・・。 ここって何所?」


 「分かりません。」

 「分からん。」


 「へ?」


 健魔が質問した事に対しての、メリエルとエルフィーナのあさりとした回答に、健魔は目と口をポカンと開けて呆けた。


 「私達は神と言えど、あなたと一緒にこの世界に来たばかりですよ?」


 「そんな我らが、知っていようはずも無いだろう?」


 ポカンと呆けている健魔に、メリエルとエルフィーナは、それぞれ先程の回答の理由を話す。


 「悪かった! もう、良いよ。 誰かに聞くから・・・。」


 メリエルとエルフィーナの物言いに、健魔は不貞腐れた様に言い放った。


 「ん~~~~。」

 「あ、おっちゃ~ん! ここって何所? 俺達旅してるんだけど、ここが何所だか分からないで来ちゃって。 馬鹿だろ~? ははっ。」


 しばらく辺りをキョロキョロと見回していた健魔は、1人の通行人を発見し、声を掛けた。


 「うん? お前さんよそ者か? なら、親切なこの親父が教えてやろう。」


 「おお~! 助かるよ!」


 普通は互いに警戒するものだが、お互いに用心深さが欠如している様だ。


 「ここは勇者達と魔王達が争う地、《ディスケイブ》。」


 「んんん!? 勇者・・・、達? 魔王・・・、達? 聞き間違いか?」


 「ここは大まかに3つの勢力に分かれている。 勇者の勢力、魔王の勢力、その他の勢力の3つにな。」

 「そして、勇者の勢力と魔王の勢力は常時争っている。 最近では町中や、野原に山にと、どんな場所でも殺し合いが絶えないな。」


 通行人の親父が、健魔に向けてこの世界について説明を始めた。


 「怖えぇよっ!! 何でこんなとこよこしやがった!? あのおっさん!!」


 しかし、いきなりな上、余りにも物騒なこの世界の情勢を聞いた健魔は、怒りを言葉に乗せる様にして叫んだ。


 「それぞれの町に、《勇者組合》、《魔王組合》、《その他組合》があって。 3つの組合の内のどれかに必ず入る必要がある。 まぁ、義務ってやつだな。」


 「そ、《その他組合》とか名前適当だな・・・。 もしどれにも入らなかったら?」


 「全勢力から狙われる事になるだろうな。」


 「おいぃぃぃぃぃぃぃ!? 酷過ぎだろっ!? この世界!!」


 この世界のルールはとても過酷な様で、それを通行人の親父から聞いた健魔は、またも叫んでしまう。


 「まぁ、この親切な親父が更に教えてやろう。」


 「最初に《勇者組合》だが、《魔王組合》の者を殺せる権利と、《その他組合》の者が《魔王組合》の者に襲われた場合、《その他組合》の者を守る際に、《魔王組合》の者を殺せる権利を得る。 ただし、《魔王組合》の者を殺す前には必ず、《魔王組合》の者に勇者の決め台詞を言わなければ、犯罪となってしまう。」


 「物騒過ぎるわ!! もらえる権利人殺し用のしか無いのか!? しかも変な条件付いてるし・・・。」


 「次に《魔王組合》だが、《勇者組合》の者と《その他組合》の者を殺せる権利を得る。 そして、2つの組合の者を殺す際には、必ず魔王の決め台詞を言わなければ、犯罪となってしまう。」


 「こっちもかよ!? はぁ・・・、じゃあ、《その他組合》は?」


 「《その他組合》は《勇者組合》の者に守ってもらえる権利と、《魔王組合》の者に襲われた際に、反撃する権利を得る。 ただし、反撃した際に《魔王組合》の者を殺しては犯罪になってしまう。」

 「最後に、犯罪者となった者に対しては、どの組合の者でも無条件で殺しても良い。 以上だ。」


 通行人の親父は、この世界の情勢やルールを健魔へ伝え終えた。


 「もうやだ・・・。 物騒過ぎる・・・。 この世界・・・。」


 話を聞き終えた健魔は、悲しみか、恐怖か、又は他の感情か、何とも形容しがたい思いを胸に、両手で自身の顔を覆い隠しながら、ぼそぼそと一人ごちる。


 「健魔さん。 私達が付いていますから、頑張りましょう?」

 「健魔よ。 我らに任せれば良い。」


 「いやいや、無理だろ。 お前ら今、ポンコツじゃん?」


 健魔は独り言のつもりで呟いたつもりだっが、メリエルとエルフィーナには聞こえた様だ。2人は、健魔の事を思って優しい言葉を掛ける。しかし、健魔からの応答は、2人を小馬鹿にする様な残念なものだった。


 『・・・・・・。』

 

 「(いだ)だだだだだっ!? む、無言の笑顔でさっきの傷口を広げるな! ア、アイアンクローもやめろー!!」


 健魔の言う様に、メリエルとエルフィーナは、2人掛かりで健魔に、先程の健魔の心無い発言に対する制裁を加える。


 「す、すいませんでしたぁ! 心配してくれてありがとうございますっ!」


 「もう、健魔さんたら、初めからそう言ってくれれば良かったのに。」

 「初めからそう言え、健魔よ。」


 メリエルとエルフィーナに謝罪とお礼を伝えた健魔。すると2人は、ニコッと健魔に笑い掛けながら、健魔への制裁を止めた。


 「はっはっはっ。 お前さん、乙女心が分かっとらんな~。」


 「あんたに言われたくないわ!」


 今の遣り取りを見ていた通行人の親父に、乙女心の機微を注意された健魔は、通行人の親父に突っ込みを入れた。


 「あぁ、でも色々教えてくれてありがとう、おっちゃん。」


 「なぁに、構わんさ。 通行人レベル36のこの親父にかかればこんなもんだ。 じゃあ、お前さん達。 達者でな。 お互い生きてたら、また声掛けてくれ。」


 通行人の親父は、最後に意味あり気な言葉を残し、別れを告げて足早にと言うよりも、砂埃を大きく立てながら猛スピードで去って行った。


 「・・・。」

 「通行人レベル? 何それ?」


 そして新たに疑問が出来た健魔なのであった。

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