第2話 俺はいきなり魔王に勝負を挑まれた?
登場キャラクターのビジュアルを、金髪から白髪に変更しました。 2017年4月1日
異世界へと転送されていった健魔。今は現実世界と異世界とを繋ぐ、ワープトンネルの中に居た。
「ふふふっ。 ふふふふっ。」
「俺、もうすぐ異世界に行けるんだ! 綺麗な女の子を2人も貰えるし、何てお得なセット旅行!!」
健魔は、ファンタジー世界に行ける嬉しさから、笑いを零した。そして、そんな健魔は実に呑気な考え方をしていた。
「早く2人に会いたいな~。」
「ふんふんふん~。」
「・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
健魔が発言してからしばらく経った頃、ワープトンネルの先にある光りが強くなってきた。もうすぐ出口に着きそうだった。
「おぉいっ! 2人共来ねえじゃん!? もうすぐ異世界着いちゃうぞ!? あのおっさんめ・・・まさかハメられた? 自称神なんて言う奴の事なんて、信用するんじゃなかったな!」
「もうすぐ出口です。 少々衝撃がありますので、ご注意ください。」
「ワープトンネルに、アナウンスなんてあるんだ!?」
「なお・・・」
「ん?」
アナウンスの音声が途中で急に止まった事に、健魔は違和感を感じていた。
「それ以上神様を侮辱するならば、魂ごと消滅させるぞ小僧!!」
「ひぃぃぃぃぃ!?」
アナウンスの音声が突然豹変した事で、健魔は恐怖に駆られた。
「では、良い異世界への旅を。」
アナウンスが最後の案内を終えた。
「まさか神様とかの関係者は、皆こんななのか!?」
「うお!?」
そうこうしている内に、健魔はワープゲートの出口に辿り着いた。そして、そこの光の余りの眩しさに健魔は目を瞑り、自身の腕で目を庇った。
「ふははは! 魔王城へよく来たな勇者よ!」
目を見開いたその先は、ある魔王城の魔王の間。実に絶体絶命な健魔であった。
「おいおいおいおいおいおーい!!」
健魔は今の状況が上手く受け入れられず、そんな言葉しか発する事が出来なかった。
「そ、そうだ! 女神と魔神の女の子・・・はどこ?」
健魔は辺りをキョロキョロと見回し、異世界行きの特典である、女神と魔人の女の子を探した。
「・・・。」
「居ねぇじゃねぇかぁーーーー!?」
しばらく辺りを見回した健魔だったが、近くに居る者は、魔王と名乗った者だけだった。
「さぁ、雌雄を決しようじゃないか、勇者よ!」
魔王と名乗った者が、いきなり健魔に戦いを望んできた。
「声シブ! あ、あの~、魔王様? 俺、丸腰なんだけど?」
健魔は一先ず、魔王と名乗った者に交渉を試みた。
「さぁ、雌雄を決しようじゃないか、勇者よ!」
「まさかのリピート!?」
だが、魔王と名乗った者は、全く同じ言葉を繰り返した。
「さぁ、雌雄を決しようじゃないか、勇者よ!」
「おい、こら! 話を聞けよ!」
同じ言葉ばかりを繰り返す魔王と名乗った者に対して、健魔にイライラが募って来た。
「さぁ、雌雄を決しようじゃないか、勇者よ!」
「お、おう! 上等だ! かかってこいやー!!」
さすがに4度目の同じセリフに、健魔は我慢出来ずに、売り言葉に買い言葉で返してしまった。
「丸腰で何をたわけた事を言ってる、貴様ー! 身の程を知れー!!」
「お前が雌雄を決しようしか、言わないからだろ!?」
魔王と名乗った者が、健魔の発言に対して、怒涛の勢いでキレた。そして、健魔もそれに呼応する様にして、突っ込み返した。
「死ね!!」
「げふっ。」
こうして、魔王と名乗った者によって、健魔はあっさりと殺された。
「ちょっと待てー!!」
「あ、あれ? 俺、い、生きてる?」
しかし、殺されたかの様に見えた健魔が、急に起き上がった。
「健魔さん、大丈夫ですか?」
「すいません。 ゲートから落ちて来た健魔さんは、頭をあそこの岩に強打。 そして、気絶してしまったので、回復魔法を使おうとしたのですが、間違って幻夢魔法を・・・。」
すると、健魔に声を掛けた女性が居た。ボディラインにピッタリ合った白のドレスに、綺麗に肩から胸へと流れる長い髪をした、白髪美人だ。
「あれ全部夢!?」
健魔が異世界に来て、初めて体験した事柄は、魔法による夢オチだった。そして、健魔はそちらの方に衝撃を受け、女性に驚く暇も無かった。
「あ、健魔さん。 怪我を・・・。」
「痛だだだだだっ!?」
どうやら、ゲートから落ちた時に、どこかで擦ったのだろう、健魔の腕には軽い裂傷があった。そして、健魔の怪我の患部に手を当てた白髪美人は、手に白い光を纏わせた。すると、健魔は急に痛みを覚え始めた。
「あっ! すいません。 傷口を徐々に広げていく魔法を使ってしまいました。」
「何で、そんな凶悪そうな魔法使えるんだよ!?」
白髪美人がまた魔法を失敗した事で、健魔の傷に痛みが走った様だ。健魔は、余りにも凶悪な響きの魔法の名前を聞き、突っ込まずにはいられなかった。
「あんた、見た目からして、俺が神のおっさんにお願いして、もらえる事になった特典の女神だよな?」
健魔は、自身の名前を教えていないのにもかかわらず、自身の名前を呼ぶ白髪美人に、核心を持って問い掛けた。
「いえ。 健魔さん。 私は魔神ですよ?」
しかし、健魔の想定とは全く異なっていた様で、白髪美人は自身を魔神だと答えた。
「魔神の方!? まじで!? そんな清廉潔白そうな見た目なのに!?」
健魔は、女神だと思っていた白髪美人が魔神であった事に対し、驚きを表す様にして、矢継ぎ早に白髪美人に問い掛けた。
「私の分かる範囲だと、体は女神、そして意思、というか心は私である魔神の様です。 使い慣れない体なので、魔法を含め、色々と未だ上手く使えないみたいです。」
「ど、どうしてこうなった・・・。」
そんな健魔の質問攻めにも、丁寧に答える魔神の白髪美人。しかし健魔は、想像の斜め上を軽々と超えて変化ししてしまった事態に対し、頭を抱えた。
「はっ!? なら、もう1人の魔神・・・、じゃなくて、女神の方はどうなってる!?」
もう1人の存在を思い出した健魔は、辺りをキョロキョロと見回し、特典でもらったそのもう1人を探した。
「・・・・・・・・。」
「居た!!」
健魔と魔神の白髪美人の居る場所から少し離れた所に、黒髪美人が黙って立っていた。
「健魔よ。 何故我は、この様な体になっておるのだ?」
今まで黙っていた黒髪美人、女神の方が、健魔に今の混在した状態に陥った理由を尋ねた。
「えぇっと、俺さ。 2人を「俺の事を好きな綺麗で美人な最強の女神と魔神の女の子」って神のおっさんに言ったんだよ。」
「けど、これだと細かな設定全く言えてないよね? という事で、俺の所為かな? ははっ。」
「痛だだだだだっ!? ア、アイアンクローはやめろぉー!?」
健魔が2人に事の顛末を語ると、女神の黒上美人が、健魔にアイアンクローで、ギリギリと頭を握りつぶそうとした。
「痛ぁ・・・。」
しかし、女神の黒髪美人は健魔の頭を潰さずに手を放した。
「この体であれば、我は其方の頭など簡単に、アイアンクローで握りつぶせるであろう。 次からは自重するのだな。」
「なに古風な言葉使いで、物騒なこと言ってんだあんたは!?」
女神の黒髪美人は、すぐにでも健魔の頭を握り潰せるにもかかわらず、そうしなかったのは、健魔の事を好きという設定が、あったからである。そして、次はと言う女神の黒髪美人の言葉から、今回は許してもらえると判断できるにもかかわらず、健魔は気にした様子も無く、女神の黒髪美人へ突っ込みを入れた。
「はぁ~~~~。 ほんと、どうしてこうなった・・・。 俺の所為か・・・。 いや! 絶対神のおっさんの所為だ! 選ぶ時間30秒とか短すぎだしな!!」
「ん?」
その様に、健魔が神に対して愚痴を言うと、空が急に暗く曇りだした。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
すると突然、空から連続して雷が健魔の足元へと落ちて来た。
「健魔さん。 地面に文字が・・・。」
「「おい小僧! 永久凍土の中心部で、生きたまま氷漬けにするぞ!」って書いてありますね。」
落雷のあった地面の焦げ跡から、魔神の白髪美人が何か文字が書いてある事に気付き、それを読み上げた
。
「ひぃぃぃぃぃぃ。」
神の凄さと恐ろしさを改めて知った健魔は、恐怖に引きつった顔になりながら、叫び声を上げるのであった。