第1話 俺は女神と魔神の女の子に決めた。
〝俺はファンタジー世界に”シリーズ第2弾。 読んで頂いた皆様に、何所でも良い、「ふっ。」と笑ってもらえる様なシーンを考えていきたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。
2017年3月。冬の寒さが、春の暖かさへと変わっていく季節。
そんな日本の、とある地方のとある一軒家の一室。
そこで、カタカタと鳴り響くキーボード。カチカチと音を立ててクリックされるマウス。そんな室内で1人喚く男が居た。
「ああー! ちゃんと回復しろよ! くそっ! あいつ、もう狩りに呼んでやらね~!」
神代健魔19歳。
職業、ニート兼、ネトゲ廃人兼、一応浪人生。
健魔は大学受験に失敗。気を紛らわせる様に始めたネットゲームにドハマり。今も受験勉強そっちのけでオンラインゲームをプレイしていた。
そんなダメ人間な健魔のパソコンに、1つの差出人不明のメールが届いた。
「ん? メール・・。 何だ。 またスパムメールか。 かなり文字化けしてるな。 それに何だこの画像は・・・。」
差出人不明のメールなんかを開いてる時点で、このバカは大学受験失敗するのは必然かもな、と思う人が多数だ。
だが、健魔がバカだからこそ、ここに奇跡が起きた。
「ハァ~イ。 健魔ちゅわ~ん。 あ・な・た・は、選ばれましたぁ~。 はい、握手ぅ~!」
メールを開いたパソコンの画面から、急にお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんが映し出されたのだ。
「うげっ! ウイルスか!?」
普通の人はそう思うだろう。一応・・未だ健魔もそう思う人だった。
「もぉ! あたしをウイルス呼ばわりなんてぇ・・・失礼しちゃうわねぇ!! ぷんぷん!」
「キモッ! 会話出来てる・・。 キモッ!」
「キモッだなんてホントに失礼しちゃうわねぇ、もぉ! まぁ良いわ。 あなた、あたし好みのカワイイ顔してるものぉ! うふふ。」
お姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんがウインクしながら舌なめずりをすると 健魔の背にゾクゾクゾクっと大きな悪寒が走った。
「うぉぉぉぉぉぉ! キモイからやめろー! てか、お前、ウイルスじゃないなら、何なんだよ!?」
「おバカな健魔ちゅわ~んにも分かり易い様に言うとねぇ~。 I am a GOD!」
「おい、おっさん。 何でわざわざ英語で言った?」
健魔は白い眼をしながら、自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんに突っ込みを入れた。
「はい! と言う事でぇ~。 健魔ちゅわ~んはぁ~、今から異世界に行ってもらいまぁ~す! ファンタジーな世界よぉ~。」
「おい! 聞けよ、おっさん!」
「って、異世界? ファンタジーな世界に俺が!?」
異世界やファンタジーという単語を聞き、健魔は思わずワクワクした顔で聞き返してしまった。
「そうなのよぉ~。 異世界に行ってもらってぇ~。 新しく生活してもらってぇ~。」
「・・・・。」
「さぁ! 行きましょ~!」
「おぉい! 最後までちゃんと言えよ、おっさん!」
すると突然パソコンが一瞬点滅したかの様に見えた後、その中から、あの自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの逞しい腕がにゅっと伸び、ガシッと健魔の腕を掴んだ。
「ひぃ! 鳥肌立つからやめろ! 触んな!!」
「もぉ! 煩いわね! あたしの熱いKISSで黙らせちゃうわよぉ~?」
「・・・・・。」
そんな自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの言葉に、健魔は本能的に一瞬で沈黙を選んだ。
「物分かりの良い子は好きよぉ~。 うふふふ。」
「う、うわぁーーー!」
こうして健魔はパソコンの中へと引きずり込まれていった。
「・・・・・・。」
「う、う~ん・・・。」
そして、パソコンの中に連れ込まれた時の反動で、少しの間気を失っていた健魔が意識を取り戻した。
「起きなさぁ~い。 健魔ちゅわ~ん。 ん~~~~~~。」
自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの顔面が、健魔の顔にドアップで接近していた。
「うわーーーーー!」
「はぁはぁはぁはぁ・・・。」
人生で初めて心からの恐怖を覚えた健魔は、目を大きく開いて思わず叫び声を上げた。
「もう! 急に大声出さないでよねぇ! ビックリするじゃなぁい。」
「こっちのセリフだ!」
「で、ここは?」
健魔はキョロキョロと辺りを見回し、自分が居る所は何所かを確認しようとした。
そこは天井も床も真っ白で、扉も窓も一切無い部屋。在るのは白い椅子が2席だけだった。
「ここはねぇ・・・精神ととき・・」
「うわぁーー! それ以上言うなーー! おっさんの口からその名前を聞きたくない! 聞きたくな~い!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・。」
自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの言葉を遮った健魔だったが、叫び続けた所為で息も絶え絶えだ。
「もう! しょうがないわねぇ!」
「こ・こ・はぁ~、あたしの神部屋よぉ。」
「神部屋?」
「そうなのぉ~。 ここで、色々な世界に皆を送ってるのよぉ~。 今回は健魔ちゅわ~んねっ。」
「おぉ~! これから俺、異世界に!」
「・・・・。」
「は~い。 これからの説明はこの子に聞いてね~。」
自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんが、一瞬笑顔のまま黙ったかと思うと、何所から取り出したのか、カチッとラジカセのスイッチを入れた。
「ラジカセ!? おっさん、説明すんの面倒になったんだろ? なぁ? なぁ?」
「おい小僧。 黙って聞け。」
茶化す様に聞いてくる健魔に対して、自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの顔が、急にヤクザの様な鋭い眼光をした真剣なものに変わり、ドスの効いた声色になった。
「は、はい・・・。」
そんな自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの様子の変化に、臆病風に吹かれた健魔は、銀行強盗に銃を向けられた銀行員の様に怯えながら返事を返した。
「それではこれよりチュートリアルを始めます。」
ラジカセから聞こえて来た音声は、自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの声とは違っていた。
「これはねぇ~。 あるゲームの初心者用のチュートリアルを録音したものよぉ~。」
「パクリかよっ!!」
「うふふ。 神様には著作権何て適応されないのよぉ~。」
「貴方はファンタジー世界へ。 夢のある冒険の世界へ旅立って行きます。」
健魔と自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんの遣り取りなど、気にする様子も無くラジカセは音声を流し続けていた。
「そこへはあなたの望むモノを持って行く事が出来ます。」
「お、おぉ~? 個数制限無し!? 何て太っ腹!!」
流石にネットゲームにドハマりしていたこともあり、健魔はラジカセの説明から想像力を働かせていった。
「それではこれより30秒だけ時間を差し上げます。 良く考えて下さい。」
「短!!」
考察に使える時間の余りの短さに、健魔は音声を流しているラジカセに突っ込みを入れた。
「1、・・・・2、・・・・。」
ラジカセからカウントが始まった。
「えーっと・・・・最強の・・・。」
「健魔ちゅんっていつも、オッパイ! オッパイ! って言ってるじゃなぁい? もうそれにしたらぁ~?」
「そんな事一言も言っとらんわ!」
自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんから、考察中に横槍が入ってきた。
「9、・・・・10、・・・・。」
「うぉ!? 時間が!!」
「あ、でも嫁は良いかもな~。 こう、綺麗な癒し系女神様だったり、ちょっとエロい魔神のお姉さんだったり・・・にへ~。」
しかし、オッパイという単語からどんどん妄想していく健魔だった。
「15、・・・・16、17、18、19、20、21、22、25、・・・・。」
突然、ラジカセの数字を読み上げるスピードが急に速くなった。
「嘘だろ!? 数えるの早くなった上に数字飛ばした!?」
「と、とにかく! 俺の事を好きな綺麗で美人な最強の女神と魔神の女の子!!」
そんなラジカセの様子に慌てた健魔は、願いをそう口にした。
「30。」
「健魔様の願望・・・妄想は受諾されました。」
「妄想言うな!」
健魔は思わずラジカセに突っ込みを入れていた。
「それではこれより、異世界への転送ゲートが開かれます。」
すると、白い壁がピカッと光ったかと思うと、そこに人1人が通れる位のゲートが出来た。
「その・・・おっさん、・・ありがとな。 俺、異世界で頑張って生きるよ。」
「健魔ちゅわ~ん! また会えると良いわねぇ・・・死なないでねぇ?」
「えっ!? そ、それってどういうこ、とぉ~~~~~~~~~?」
自らを神と名乗るお姉口調で筋骨隆々な白い衣服を纏った大男のおっさんが言った事について、健魔が理由を聞こうとしたところで、異世界へと転送されていった。
だがこの時、未だ健魔は気づいていない。女神と魔神の女の子の外見と強さしかほとんど設定していなかった事に・・・。
この先、健魔の異世界生活は一体どうなっていくのだろうか。