1週間後
人生割と忙しめ。
え〜と、ですね。
聴こえないはずの声が聞こえるようになってきました。
何を言ってるかは、わからないんだけどね。
ボソボソと聞こえるんですよ。幻聴ってやつですね。
何故そうなったか。
いや、始め耳がおかしくなったと思ったよ?でもね、いつも通り殺されて死んでたら、どんどん聞こえてくるようになって・・・
なんだろう、精神的に死んでも治らない部分が出てきたのだろうか。
死ぬ頻度はどんどんマシになってるけどね。
まぁ、夜は・・・うん、無理。見えない。この森暗すぎ。
今の所、餓死はしてないけど、何かを食べるということもしていないという・・・
で、夜を七回ぐらい経験したのでちょうど一週間経ったと思う。
足の速さ、気配を感知する能力が明らかに上がっている。
自分の思い込みとかじゃないレベルで。
まぁ、別にそんなことはどうでもいいかな。
幻聴の件もだが、本当に此処に来てから苦痛しかない。
命を狙われただただ逃げる毎日。
それも一週間過ごした訳。
本当の意味で死にたくなってきた。
そろそろアレだな。
反撃してやろうかな?
武器が無いので、もちろん素手で。
「お、あれでいいかな」
ちょうど見つけたのは、前世で見た蛇より二回り三回り大きい蛇。
普通の人なら、関わらないよう逃げるとこだ。
しかし俺はもはや八つ当たりに近い様な感情で近づいていった。
「く、早いな」
ウネウネと動く身体。その形に合わないスピードで動く。
しかし、蛇は顔さえ気を付ければいい。
俺は上手く後ろをとる。
「おりゃっ」
蛇の首元を両手で押さえる。それと同時に全身を蛇の身体の上に乗せる。
「よっ・・しゃっ・・・」
蛇は思ったより力が強く、俺から逃れようと動いてるのをお腹に感じた。
・・・はい。もうどうしようも無いです。
王手までして後のことを考えてませんでした。
そんなずっと力持ちませぬ・・・
俺の力が尽きたのがその3分後くらいだった。
その後、気付いたら首に蛇の身体が巻きつかれ、森の中全裸で佇んでました。
もはややる事がないので、幻聴をぼーっと聞き流してます。
集中すると、何を言おうとしてるかわかる気がする。
気がするだけかな・・・
「いや、本当になんか言ってる!?」
俺のことを言っている。そう確信できる。
なんだろう言葉は喋ってないんだが、そう聞こえる感じがするのだ。
聞こえるっていうのも違うか・・・思っていることが伝わってきている?
詳しくは分からないけど、何を言おうとしてるのかが頭に直接届いてる感じだ。
どうやら俺が何回も生き返るのを不思議がってるみたいだ。
う〜ん、こっちが思っていることも伝わるのかな?
水辺がここら辺にあるのか?って強く思ってみる。
「・・・無理だよね。これで水があるところが聞けたら苦労しないんだけどね〜」
!!!???
え?こっちだよって聞こえた気が・・・
「こっち?」
今度は声がした方向を指差して聞いてみる。
・・・うん。本当にこっちにあるみたいだ。
しばらく歩くと綺麗な湖。
湖と言ってもかなり小さな方で、8メートル先が対岸ぐらいの大きさだ。
「冷たっ」
手の中にある澄んだ水。俺は躊躇することなく一気に飲み込む。
これがここに来てから初めて口にする飲食物だった。