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ASCHRON  作者: Doe
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開幕


 人々は進化していく。進化の先に何が待っているかも知らずに。

 あまりにも早い進化に追いつけないものたちも、置き去りにして。

 人々は進化していく。


 徐々に、壊れながら。




※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。


『ジーン』

 まただ。そう思い、ジーンは作業の手を止めた。

 外界、シドロア。創世の神、オリヴァスによって創られた天上都市、ガナージャの下に広がる汚染された大地。

 邪神、ダリアスの眠る大地――。

 ジーンはガナージャ政府内にある、外界の探索隊に所属していた。

 探索隊は万能資源ロナを糧として生きる機械的巨大生物、アシュロンに乗り込み、シドロアへ飛び立つ。アシュロン内部までは汚染の手が届かないためだ。

 ジーンは声の主を探すためにあたりの様子を伺った。

 しかし、いつもどおり、巨大な木々や名前の知らない植物が生い茂る森が視界いっぱい広がっているだけである。

 おかしいな。頭の中でつぶやく。

 アシュロンに乗っていると、その声がよく聞こえた。男の声だと思うが、定かではない。

 ジーンは作業を再開する。

 アシュロンに乗り込む操縦者は、体内に入りこんだ後、脊髄をつないで基体を操る。脊髄をつなぐためには、アシュロンから伸びた触手を首に刺す必要があった。触手は神経の束で、刺すことで同調して操縦が可能になるのだが、刺すとなると当然痛みも伴う。

 操縦者はそういう激痛に耐えなければならない。だが、慣れてしまえば、刺した瞬間の一瞬だけだ。ジーンはもう、躊躇せずに首に神経を刺せるようになっていた。

 自分の手足のようにアシュロンを動かし、一定量の土や植物を採取する。

 耳に引っ掛けてあった通信機から「引き上げだ」と聞こえてくると、ジーンは採取に使う道具などを腰の装備袋にしまい込み、森を抜けて川沿いに出る。川沿いはアシュロンの発着のために開拓してあり、わずかだが拓けていた。他にも数体、すでにアシュロンが帰還に向けてそろっていた。

 隊長のパーグスがガナージャの研究室から通信機で点呼を取る。

「はい、揃いましたね。じゃあ、昇降口を開けておきます。弐号機からどうぞ」

 いつもながら、気の抜けたパーグスの声を合図に、帰還が始まる。伍号機のジーンも順番を待ってシドロアを発った。

 飛び立つ瞬間、またあの声に名を呼ばれたような気がした。

 ちらりと、遠く離れていく地面を見つめたが、今更気にすることでもないと思い、肆号機に続いて故郷ガナージャの昇降口へ向かった。


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