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トライアングル  作者:
22/22

第20章 永遠じゃない

 その日はインターハイ出場を決めた西村の祝賀会だった。と言っても、部活内でもクラスでも散々行われ、今やっているのは私と佐々木、薫、ミッチー、鳩山の6人だけである。

「カンパーイ!!」

 これも散々行われてきた。私たちは佐々木の家にあった炭酸で乾杯する。

「ありがと!みんなのおかげです!」

 西村はぺこぺことお辞儀をしてグラスを全部飲み干す。

 100メートル走での決勝戦、ほとんど横並び状態だったが、それでも橘に続く第2位でゴールした。ケガをしてからの自己最高記録だったらしい。

「俺がここまでやってこれたのは、ほんとみんなのおかげだよ。ありがとう」

「そーだよなー!俺たちに感謝しろよな!」

 鳩山が調子の良いことを言う。みんな笑った。

「まぁ、これは俺の戦利品。おいしいぜ」

 と言って、シャンパンのようなものを取り出した。それがお酒だということはなんとなくわかったが、誰もコメントしなかった。


 しばらく食べたり飲んだりを繰り返しているうちにミッチーが、

「ねぇ、アルバム見せてほしいな」

「いいよ。ちょっと待ってて」

 西村がうなずいて本棚を探す。しばらくして赤い表紙の本を取り出した。

 ミッチーがそれを開いた。

「それは中学のときの。こっちが小学校」

「へー・・・やっぱ3人とも昔から仲良かったんだね」

 それはミッチーの率直な感想だった。確かに、写っている写真はどれも集団で写っているものだったが、とにかく3人が多かった。

「いいなーこういうの。幼なじみってカンジ」

「でも俺は小1のときに初めて友達になったんだ。幼なじみってほどじゃないかも」

「そう寂しいこと言うなって」

 そう言って西村が佐々木の頭をなでる。むーっとうなった。

「あれ?この人って真希じゃない?」

 ミッチーが写真の一部を指差す。それは小学校の卒業写真だった。ほんとだ、と薫もうなずく。

「一緒の学校だったんだ。ねぇ?カズ」

 私は意味ありげな視線を送る。西村が微妙な顔をした。

「えっ!?そういうことなの?」

 ミッチーが嬉しそうに反応する。私はため息をもらした。

「付き合っちゃえばいいのに・・・なんで告んないんかな」

「佐々と一緒で勇気がないのかも」

 あっさりと答える西村を佐々木がにらみつける。

「柚芽!」

 そう西村に呼ばれて私は傍に寄っていく。すると、西村に頭を抱きしめられた。さすがにどきっとしてしまったが、すぐに佐々木の蹴りがぶっ飛んできた。

「あのときの決着つけよーじゃんかよ」

 よく見ると、佐々木は酔っていた。鳩山は自分があげた酒の口が開いていることにようやく気づいた。そうして、あのときとやらの決着としてプロレスごっこが始まった。


「大丈夫だって。あんま酔ってないよ」

 と言いつつも、足取りはおぼつかなかった。私と西村ははなんとか2階の佐々木の部屋まで運んでいく。鳩山の話によると、ビンの半分を1人で飲んだらしかった。酒乱になっているわけではなく、ぼーっしていて危なっかしい状態なのである。

 1階ではすでに片づけをし始めている。

「お酒弱かったんだな」

 西村が意外そうに尋ねる。

「なんつーか・・・・40度の熱出したときみたいな気分・・・・・」

 それはなかなか重症ではないだろうか。

「柚芽、いい匂いがする。ちゃんとシャンプーしてんだね」

「当たり前でしょ!!」

 どこまで酔っているのだろうか。

「さんきゅ。ここまでで大丈夫だよ。ちょっと寝れば()めると思う」

 部屋の入り口まで連れてきたところだった。

 なんとなく離れがたかった。私は戸惑いながらも佐々木から手を放した。

「なんだよ。俺と一緒にいたいのかよ」

 佐々木にとっては冗談のつもりで言ったのかもしれない。しかし、図星だったため私はぎくっと反応してしまった。西村が笑う。

「俺も・・・みんなとずっと高校生でいたい。柚芽とずっと一緒にいたいよ・・・・でも、みんなバラバラになっちゃうんだな」

 それはこれからの未来のことだった。私はうんとうなずいた。同じ気持ちだった。

 月日は流れていくんだ。

 それでも前を向いていなくちゃいけない。どんなことがあっても。振り返っても、また前を向かなければならない。

 出会いもあれば別れもある・・・でも決して永遠じゃないと私たちは信じている。

「まぁ腐った縁同士、またどこかでばったり会っちゃいそうだよね」

 私の冗談とも本気ともつかない言葉に西村も佐々木も笑い出した。そんな腐った縁も悪くないと、このとき私たちは考えていた。


(おわり)

今まで呼んでくださってありがとうございました。

これにてトライアングルを終了させていただきます。

また機会があったら彼らのその後も書いてみたいと思います。(機会があったらですけど・・・)

本当にありがとうございました。

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