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第8話 ゴンレム、発進!

 我はゴーレムなり。


 町の外でシュッ、シュッとゴンレムソードを振り回す。ゴンレムの操縦にもだいぶ慣れてきたのだ!


 ふっふっふ。

 これはゴンレム無双ができるかもしれんぞ!


 我はこの後どうしようかなと考えていると、町の方からすごい勢いで4体の巨大ロボットが迫ってこようとしている。


 なんだ?

 まるで何かを捕まえるためのようではないか。



 はっ!?


 ま、まさか。

 我からゴンレムを取り上げようというのか!

 あの隊長と呼ばれていた男に、ゴンレムを自由にする権利などなかったのかもしれん。



 ま、まずいのだ。

 話を聞いたら、我はゴンレムを返さざるを得なくなる。……逆に言えば、今ならば、まだ我は話を聞いてないから、返さなくてもいいんじゃね。


 うむ!

 隊長だけが、怒られれば良いのだ!


 おし!

 逃げよう!


 我は決断と同時にアクセル、いや出力か、とっちでもいいのだ。とりあえずアクセルを全開にする!


 するとゴンレムの背中から大きな爆発音が聞こえたと同時に、ゴンレムはものすごい勢いで発進した。


 おお!

 作業用という割には素晴らしい加速力じゃないか!


 一定間隔で起こる爆発音を聞きながら、我はゴンレムに乗って町から離れるのであった。もらったものは簡単には返せないのだ! さらばなのだ!




 ◆ ◆ ◆



 隊長と呼ばれる男は、銀色のロボットがゴンレムに乗って町の外に向かった時、すぐに後を追おうとした。しかし、敵の戦艦が迫っているという報告を受け、ゴンレムのことはひとまず後回しにする。


 現状、この町で戦闘に使えるロボットは4体しかなかった。隊長は、ぎりっと歯ぎしりをして、どう乗り切ればいいかを考える。


 襲撃があったと同時に援軍要請を送っているが、援軍の到着は、早くて明日、遅ければ2日後になる予定だった。隊長は、町の住人を避難させつつ、4体のロボットで迎撃して、時間稼ぎをするしかないと判断する。それが無駄な抵抗だとわかっていても。


 隊長は、町の司令所に駆け込んだ。司令所は沈黙が支配していた。何をしているのだと叫ぼうとしたが、正面のレーダーの探査結果を表示しているモニターを見て理解した。この町に訪れようとしていたのは単なる戦艦ではなかったのだ。


 3隻の大型の戦艦を中心とした艦隊がこの町に訪れようとしていた。敵の西域第七艦隊の主力であった。なぜ、このような何もない町に向かってきているのか分からないが、現実として敵の艦隊が迫ってきている。


「くそ。なんで、こんな町に艦隊を送り込んできやがるんだ!」


 隊長は悪態をつきつつ、司令所にいた者達に大声で指示を出す。時間は限られている。できる限り、迅速に、そして、遠くに町の住人を避難させなければならないのだから。


 そんな隊長の指示を元に皆が動き出した。その時、レーダーから1つの戦艦の反応が消えた。

 モニターを見ていた者が、機器の故障かと思いながらも、隊長に報告する。


 何を馬鹿な事を言っているんだと思いながら、レーダーを見やると、1つ、また1つと戦艦の反応が消えていく。

 1つだけ残った戦艦は、反転して町から遠ざかっていった。


 またしても、司令所の中が静まりかえる。

 先ほどとは別の静寂だった。司令所にいた者達には何が起こったのかが理解できない。

 

 そんな中、隊長の脳裏にゴンレムに乗って町の外に向かっていった銀色のロボットのことが浮かんできた。


「まさか、あの小さなロボットか?」


 隊長は小さくつぶやくと、副隊長に住人の避難をするように指示を出す。隊長自身は、近くにいた3人を引き連れ、自らロボットに乗り、町の外へと向かった。



 ◆



「やっぱりか」


 隊長は、ロボットのモニターに小さく映るゴンレムを見つつ、一人で納得した。ゴンレムが敵の艦隊に向かって、昨日、全てのロボットを行動不能にした強力なレーザービームを放っていたのだ。


 あの銀色のロボットは、敵の艦隊が近づいてきていることを、いち早く気付き町の外へと駆けだしたのだ。そして、たった一人で敵の艦隊を追い払ってしまった。もしも、敵の艦隊が、この町にたどり着いていたら、被害は計り知れなかっただろう。


 隊長は、銀色のロボットにお礼を言うために、速度を上げて、ゴンレムに近づく。


 ゴンレムは、隊長達のロボットの方をちらりと見ると、バックパックを爆発させながら、彼方の方角へと消えていった。その速度はとてつもなく早い。ゴンレムは爆発、修復、爆発を繰りかえしながら前進していたのだ。


 機体の性能以上の力を引き出すというよりも、機体を壊しながら進むゴンレムには、戦闘用のロボットといえど、とても追いつけなかった。


 隊長は、ゴンレムを追うのをやめて立ち止まる。すでにゴンレムの姿は見えなかった。見返りも何も求めずに、弱者を助け、颯爽と立ち去っていく。あの銀色のロボットがなんなのかなど関係なかった。


「ったく、かなわねぇな」


 隊長は、ゴンレムが消えた方向を見やりつつ、笑みを浮かべてつぶやいた。




 ◆ ◆ ◆




 我はゴーレムなり。


 ふー。

 危なかったのだ。


 我が愛機、ゴンレムが取り上げられるところだったのである。

 ここまで来れば大丈夫だろう。


 さて、これから我はどうしたらいいのだろう。ゴンレムを操縦して我は何をなすべきなのだろうか?


 ロボット同士の戦いが、この世界では繰り広げられているが、我にはなんで戦っているのかわからない。そんな状態で、一方の陣営に肩入れするのはダメだろう。


 あっ、そうだ。

 いいことを思いついたのだ。


 日本では昔から、喧嘩両成敗というではないか。

 ロボット同士で戦っているのならば、その全てを我が撃破していけば良いんじゃないかな! うーん、でも、跡形もなく消してしまったのでは、ロボットに乗っているパイロットを殺してしまうことになる。我は無差別に人を殺したい訳ではないからな。


 うむ、ロボットの手足とかだけを壊していく縛りプレイをしよう!

 我なら多分、難易度をあげてもやりきれると思うのだ。


 そうと決まれば行こうじゃないか。


 我はただゴンレムに乗って遊、いや、ごほ、ごほん。

 我はただゴンレムに乗って、この世界から争いをなくしたいだけなのだ!


 我はただ伝えたい。

 争ってばかりではダメなのだ、と。

 手と手を取り合ってこそ、世界は平和になるのだ、と。


 だからこそ、あえて我は世界中を敵に回そうとも、たった一機のゴンレムに乗って戦い抜いてやるのだ!


 おっし! 行くぞ!


『ゴンレム、発進!』


 わふー!

 テンション上がってきたー!



 ◆ ◆ ◆



 この世界を平和にするために、世界を敵に回しても戦い抜く。

 そんな独善的な考えのもとにゴーレムは、ゴンレムに乗って世界中を駆けまわる。

 誰もそんなことはゴーレムに頼んでいないのに、ゴーレムは突き進んだ。




 ある戦場では、突如現れた作業用ゴンレムに、10分程度で、戦場にいた全てのロボット、戦艦、戦車が撃破された。しかし、ロボットや戦艦などの被害は甚大なのに、ゴンレムの攻撃によって死亡した者は一人もいなかった。ゴーレムは、きちんと縛りプレイを成し遂げていたのだ。



 ある村では、巨大ロボットを操るゲリラに襲われていた。

 もうダメだと村人が思った瞬間、天からゴンレムが落ちてきた。

 そして、光り輝く剣を手に瞬く間にゲリラを蹴散らした。ゴンレムは片手をあげたあと、村から颯爽と去って行った。



 ある基地では、敵の艦隊に包囲されつつも、攻撃をしのいでいた。

 援軍が来るまで耐え抜く。時間を稼げば良いはずだった。しかし、突然現れた赤いゴンレムが悪夢の始まりだった。


 ペンキをぶちまけたような真っ赤なゴンレムが、敵の艦隊に光線を放つ。チュドンという轟音と共に、敵の艦隊が撃破された。あれは味方の新兵器なのかと思ったのもつかの間、赤いゴンレムは基地にも攻撃してきた。


 赤いゴンレムのまわりに、光線が浮かんだと思ったら、基地に配備されたロボットや、防衛装置など全ての兵器が一瞬で撃破された。司令官が呆然としている内に、赤いゴンレムは消えていた。




 こうして世界は、目的不明のアグレッシブなゴンレムの登場により、変革を余儀なくされることになる。

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