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第15話 察するチカラ

 我はゴーレムなり。


 万物崩壊を使ったことで、見事に黒い空間を破壊することができたのだ!

 我は、やったぜと思いつつ、巨人と喜びを共有しようと、後ろを振り返る。


 しかし、そこには何もなかった。

 我は首を傾げる。


 あれ?

 扉がないのだ。


 我はすーはー、すーはーと深呼吸する真似をする。もともと呼吸してないからね。


 あらためて、あたりを見回しても何もない。

 なっ、なぜだ!?


 あたりは黒い空間でも白い空間でもなくなっているのだ。なんか空間がオーロラみたいに揺らめいていて、たまにバチバチ火花みたいなのが出てるし。


 ひょっとして、我はえらいことをやらかしてしまったのではないだろうか?



 ◆



 やってしまったことは仕方ない。

 とりあえず、理解できないことは横に置いておこうではないか。


 さて、わかりやすい問題は巨人がいた扉がなくなっているということなのだ。


 どうすればいいのだろうか?

 我は天界では、何もないようなところからも、破壊された天界を復元することができたから、ここでもできるのではないかな。


 おし、困った時にはとりあえず復元なのだ。

 できるかどうかではない。やってみるかやってみないかなのだ。


 我は両手を前にかざし、直れ直れと念じる。すると我を中心に白い空間が広がり始めた。


 おっ!

 いけるみたいなのだ!


 我は、これならいけると確信を持って、復元を続ける。白い空間は広がっていくが、扉が元どおりにならない。ひょっとして我が扉に意識を集中してないからダメなのではないかと考え、扉よ直れと念じながら復元を続けた。



 しかし、なかなか直らないのだ。

 困ったのだ。


 我はやきもきしつつ、しばらく復元を続けると、ようやく扉が元どおりになりはじめた。

 我はホッと胸をなでおろす。よかったのだ。これで、巨人も外に出てくることができるであろう。



 ◆



 我は扉を開けようとするが、なぜか扉が開かなかった。なぜだろう?


 コンコンとノックをして、声をかける。


『おーい! 巨人よ! 黒い空間はなくなったから、外に出てきて大丈夫だぞ!』


 しばらく待つも、中から返事がない。


 ……。

 どうしたのだろう。


 はっ!?

 もしかして何かあったのか!?


 我は巨人の身を案じて、復元したばかりの扉をドカンと殴り壊して、こじ開けた。人命を助けるためには躊躇してはいかんのだ!


「ぐわっ」という声が聞こえた気がする。やはり、これは巨人の身に何かが起こっているのだ!


 我は焦るな、焦るなと自分を落ち着かせながら、扉の中へと入っていく。



 ◆



 やはり、我の思っていた通り、部屋の中では巨人が倒れ伏していた。


 何があったというのだろうか。

 我は素早く巨人に駆け寄り、ゆさゆさと揺する。


『巨人よ! 巨人よ! 何があったのだ! 誰にやられたのだ!?』


 我の問いかけることで、巨人がうっすらと目を開けた。巨人は弱々しく我の質問に答えた。



「と、扉がいきなり壊されて、その巻き添えになってしまった」


 我は、首を傾げる。

 我はノックをしても返事がなかったから、扉を壊してでも開けたのだけど、今の巨人の返答ではまるで扉のすぐそばにいたようではないか。


『我がノックした時、巨人はどこにいたのだ?』


 我は何気なく質問すると、巨人は顔を青ざめさせた。


「す、すいません!居留守を使うつもりはなかったんです!ただ外の様子が恐ろしくて、引きこもっていたのです!」


 まぁ、超重力空間とか言って、外に出てくることができなかった巨人なのだ。外を怖がったとしても、やむを得ないだろう。うむ、ここは我が巨人を安心させてやることにしよう。


『安心せよ、巨人よ。外の黒い空間はなくなったぞ。……まぁ、白い空間もなくなったけど』


 巨人は、「えっ?」と驚きの声をあげた。我は巨人についてくるように促し、部屋の外へと出る。


 むー。まだ遠くの方ではばちばちとなってるところもあるのだ。全部直したほうがいいかな。そのうち直るだろうから、放っておくか。自然にあまり手を加えるのは良くないのだ。


 我の横に立っていた巨人はわなわなと震えだした。


 横にいるために我が見上げても巨人の表情はわからぬが、部屋から無事に出られた喜びで震えているのであろうな。


 うむうむと我は頷く。

 1人寂しく閉じ込められていたのだ。久しぶりの外の世界を存分に味わうといいのだ。


「ご、ゴーレム殿でしたか?」

『我の名前か? そうなのだ。我はゴーレムなり。いや、なに、当然のことをしたまでなのでお礼など不要なのだ!』

「あ、あなたがこの状況を引き起こしたのですか?」

『うむ、まぁ、我もちょっとやりすぎたかもしれんとは思っているが、黒い空間を壊すためには仕方なかったと思うのだ』


 巨人の方からゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。


「こ、これでちょっとですか? ゴーレム殿、あなたという方は」


 どうやら、巨人は我の懐の深さに感激しているようだ。


『いや、なに。本当にたいしたことではないのだ。おぬしも外に出られて良かったな!』


「いや、そういうことを言ってるのでは」


 巨人は何かを考え始めた。


「この存在をこのまま放置していいのか? いや、ダメだろう。悪意がないのが、より一層タチが悪い。ここは、オレがやるしかない!」


 巨人はぶつぶつと何かをつぶやいている。

 すると突然、巨人の拳が我の上に振り落とされた。


 ドゴンという音を立てて、我は巨人の拳の下敷きになる。さらに立て続け様に巨人は拳を振るい続けてくる。


 我は巨人の拳を、この身に受けながら首を傾げる。最初の一発は握手をしようとして、力加減を間違えたのかと思ったが、どうにも違うようだ。この連続パンチは我への攻撃のような気もする。


 しばらくすると巨人の拳が止まった。


 息遣いも荒いまま、巨人は「やったか?」とつぶやいた。我は巨人の行動の理由がわからない。

 わからないことは聞いてみるしかないので、我はすくっと立ち上がって巨人に問いかけた。


『なぁ? おぬしは何がしたいのだ?』


 巨人は、目を見開き、はぅあ!? とでも叫びだしそうな表情を見せる。巨人は我と距離を取り、身構える。


「くそ! こうなれば、俺の超必殺技を放つしかない!」


 な、なにぃ!?

 超必殺技だと!?


 ……。

 はっ、そうか!


 フッフッフ、わかったのだ。

 巨人は久しぶりに外に出られたから遊びたかったのだ!


 でも、いい年をした巨人が、遊ぼうというのは恥ずかしかったのだろう。だから、言葉ではなく、行動で遊びたいという意思を示したのだ。


 我も察しがいいからな。間違いない!

 そういうことなら、我も一緒に遊ぶことにするのだ!


『なにぃ!?

 超必殺技だと!?』


 我は驚いたリアクションをし、その場にとどまる。しかし、攻撃がこない。どうしたのだ?

 はやく攻撃してきてほしいのだけど。


 巨人は、真剣な表情で我を睨みつけてくる。迫真の演技なのだ。まるで、我を本当に殺したいというような雰囲気を醸し出しているのである。


「なぜ、お前は逃げず、攻撃をしてこようともしない!?」


『なぜ、逃げる必要があるのだ。これは遊びなのだ』


 まったく、この巨人はなにを言い出すのであろうか。逃げたら遊びにならぬではないか。巨人は、我の言葉を聞いてぐっと言葉を詰まらせた。心なしか顔色が蒼白になっているではないか。


『さぁ、早く超必殺技とやらを放ってくるがよい! 我は逃げも隠れもせぬ!』


 巨人はわなわなと震えつつ、巨大な光の玉を発生させ、我に向けて放ってくる。我はその光の玉を両手を広げながら、この身で受け止めた。


『ぐ、ぐぅおおおおおお』


 我は臨場感を出すためにうめき声を上げる。光の玉がカッとまばゆく輝き、消えていった。光の玉が消えた後は、しばらく我の周囲に白い煙が立ちこめた。


 我には傷1つついていないが、この後はどう動けばいいのだろうか。


「はぁ、はぁ、やったか?」


 巨人がありきたりな敵の生存フラグ発言をつぶやいた。ふむ、そうか、そういう流れでいくのだな。我は巨人のシナリオ通りの行動をすることにした。


『フッフッフ。この程度で我を倒せると思ったのか?』


 我は周囲の煙をラインライトで消し去り、無傷の姿の我がドーンと登場する。さぁ、巨人よ、この後の流れはどうするのだ!


 だが、我の目の前には巨人はいなかった。

 目の前には我より少し小さいぐらいの小人が1人、呆然とした姿でたたずんでいたのだった。


 だれだ?

 こやつは?


 我が首を傾げながら、目の前の小人を見ていると、小人はがばっと土下座をした。


「すみませんでした!」


 そして、なぜか、小人が我に謝罪をしてきたのであった。

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