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プロローグ
今年の春は、平年より早く訪れた。
まだ3月下旬だというのに、桜は満開である。
「入学式の頃には葉桜かな」
未だかつて私の入学式に桜が満開だった事はない。
残念そうに私が言うと、
「きっと毛虫がいるね」
親友の美羽が隣で笑った。
彼女とは小学生の頃からずっと一緒だった。
でも、それも今日まで。
別々の高校へ進学することが決まっている。
「何かあったら連絡してね。年中無休で受付中だから」
彼女は小さくて温かい手で私の手を包んだ。
「ありがとう。 美羽も何かあったら連絡して」
その手を包み返してから、そっと手をほどいた。