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魔科学高校風紀委員会

学園編、スタート!

「……というわけで、大空翔くんにはぜひ魔科学高校の風紀委員に入ってもらいたいの」

 自身が通っている魔科学校にある生徒会室、そこで翔は目の前の人物に言われた。

「……え~と会長、話が見えないのですが」

「難しいことじゃないわ。要するに翔くんの才能を知ったから、ぜひ風紀委員に入って私たちに協力してほしいのよ」

「その過程がわからないという意味も込めたんですが!?」

 翔は目の前の女子生徒-魔科学高校の生徒会長である、神城かみしろ冬華ふゆかに言った。

(……朝まではなんともなかったのに、なんでこうなったんだ……?)

 翔は、家を出るまでから今に至るまでのことを脳内で再生した。


 騎士の少女ルミアと記憶喪失の男ハーネストの戦いは、彼女の呪術を消滅させたことで幕を閉じた。

 その日、家に帰ったら家族はこちらを見るなり心配してくれたが、それはほんの数時間後-つまり翌日には綺麗さっぱりなくなっていた。

 さらに時間は進み、月曜日の今日、翔は学校に行くため家を出た。その右隣りには、大空おおぞらまい-通称、大きいほうの(二重の意味で)妹がいて、左隣には大空おおぞらあい-通称、小さいほうの(これもまた二重の意味で)妹がいる。大空姉妹の通っている学校は途中まで翔と同じ方角なので、それまでの間は、基本大空兄妹きょうだい登校することが多い。

 それから妹たちと別れ、翔は魔科学校に着いた。そして昇降口から入って自分の教室に行こうとしたとき、それは起きた。

「1-F、大空翔だな。すまないが我々と一緒に来てもらおう」

 顔を上げると、見知らぬ生徒から話しかけられた。相手は三人組の男子生徒で、特にこれといった特徴がない。しかし、その左腕に巻かれている腕章は風紀委員会のものだった。

「……俺、なにか悪いことしましたっけ?」

「来ればわかる、おい」

 一人の生徒が合図をすると、残りの二人が左右から腕を掴んできた。抵抗しようにも意外に力が強く、こちらからアクションを起こすことができない。

「ちょ、ちょっと」

 そのまま翔は風紀委員に連行されて。


 今に至る形になった。

「いまさら感があるんですけどこれだけは言わせてもらってもいいですか」

「なぁに?」

 太陽のような微笑みを向ける冬華に向かって、翔は言った。

「…もうすこしマシな方法はなかったんですか」

「それはそうだけど、彼らが翔くんの実力を知りたいって言ったから方法は彼らに任せたのよ。一応彼らはさっきみたいな悪役ヒールに慣れてるから」

 彼ら、というのはもちろん、先ほどの三人組のことだ。今は部屋の隅で直立不動の姿勢を維持している。ちなみに彼らの隣には背の高い女子生徒の姿もある。彼女こそが彼らの上司(?)である風紀委員長、市原いちはら麻理まりだ。

「で、なんで俺なんですか? 自分で言うのもなんですが、俺なんかよりも適任の生徒くらいいるでしょう」

 鋭い視線を冬華に向けるが、彼女は答えようとしない。しかし、その言葉を待っていたかのように麻理がこちらに歩み寄りながら答えた。ほかの三人も後を追ってくる。

「それはあたしから説明しよう。実は先週、あたしは生徒会の面々と風紀委員の余った前年度卒業生枠について論議してな、これがなかなかいい人材を見つけることができなかった」

「はぁ…」

「で、新入生から選ぼうということでAからFまでのプロフィールを漁っていたところ、キミの存在を知った。見てみるとこれが大当たり、どうやらキミは対人戦闘技術特級たいじんせんとうぎじゅつとっきゅうの資格を持つ、あの行部ぎょうぶやすりのお弟子さんじゃないか」

 彼女が言った通り、鑢は対人戦闘においては類まれな実力をもつ人物だ。翔は中学1年生の頃から、鑢に稽古をつけてもらっている。

「あたしもこう見えて対人戦闘に関して腕が立ってな、鑢先生はあたしの目標なんだ」

「なるほど。尊敬している師匠の弟子な、風紀維持に役立つかも、ということですね?」

 翔の問いに、麻理は首肯だけで答える。それから翔は部屋にいる一同の顔を見回し、諦めたように溜め息をついた。

「はぁ、この流れは承諾しないと返してもらえない、という感じですね……わかりました。1-F大空翔、風紀委員に入会します」

「うむ、そうこなくっちゃな。では改めて自己紹介をしよう。あたしが市原麻理、魔科学校風紀委員会の委員長だ。ほら、お前たちも挨拶しろ」

 麻理が後ろに立っていた三人に命令する。

津嶋つしま鉱太郎こうたろうだ。よろしくな、大空」

「俺は成瀬なるせりょう。ま、仲良くしようや」

「自分は三木みき楴亜だいあ! くれぐれも名前で呼ばないでくれ」

「三人合わせて『三バカ』、と呼んでいいぞ?」

 三人の自己紹介に、麻理が悪戯っぽい笑みで言った。男子三人がそろって『勘弁してくださいっ!』と懇願する。

 無理やり入らされた感じだが、この人たちとならうまくやっていけそうだ、と翔は思った。

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