SIDE STORY-パート1-
廃工場で騎士の少女と黒衣の男の戦いに決着がついたころ、別の場所で、動きを見せた組織があった。
そこは、とある施設の一室だった。同じような部屋は他に八十と九あるが、この部屋はどこよりも広く、また、どこよりも混沌とした雰囲気を出していた。床に散らばった無数の書類、壁際に置かれている棚にもいくつものファイルが収まっている。まだ新しいものもあれば、なぜか焦げ跡のあるものもある。
そしてその部屋の主は、窓の近くに置いてある机に、組んだ足を乗せていた。その机にも書類やファイルが置かれており、机が机の役割を果たしているのが奇跡と言ってもいい。
「へぇ…騎士領の主力でもある、あのルミア・マティウスがやられちゃったのか」
部屋の主である男が、面白がるように言った。
「それで、倒したのは誰だい? あの場にいたの、マクシミリアン・ハーネストかな?」
「はい、確かに倒したのは彼でした。しかし」
男の質問に答えたのは、男の護衛兼助手の少女だった。少女は報告の途中で口を閉じる。
「しかし、なんだい? 知りたいことを知ることができないのは、僕にとってはむず痒いことだ。さあさあ、早く続きを教えてよ」
男が椅子に座り直し、子供のように催促する。
「はい、倒したのは彼でした…しかし、その勝利の直接の要因となったのは、その場にいた一人の少年の言葉でした」
「へぇ」
男は僅かに目を細めた。
「その少年の名前とその時の情報、調査係の担当は言ってた?」
「はい、名前は大空翔、彼が言ってた言葉は……正確な内容は言ってませんでしたが、『靄みたいなのがでてる』だそうです。ちなみに、マクシミリアン・ハーネストには視えてなかった見えてなかったようです」
「ふむ、正確性に欠ける情報は研究者としてどうかと思うけど……ま、今日のところは大目に見てあげようかな。じゃあアメルッタ、彼らに大空翔くんの身辺調査と監視、頼んでおいて」
「りょうかいです」
アメルッタと言われた少女は、男に一礼して部屋を出た。
一人だけになった部屋、男は椅子を百八十度回転させ、窓の外に視線を向けながら言った。
「マクシミリアン・ハーネストに視えなかった靄が、大空くんには視えた。もしかして、大空くんには……先駆者としての力があるのかもねぇ…ふふふ」
こんいちは、ユーザー名と作者名を統一した、いざっくです。
さあここで後書きを書いているということは…はいそうです『騎士殺し編』が終了しました。いやぁ…短い。でもまあ大方予想通りに事が運んだので、よしとします。もともと一部にそんな十何話も使いたくないですし。
えーところで、見た方はお分かりだと思いますが、最後に無関係のお話がありましたよね? あれ、今後伏線的なものになるんで、板チョコが溶けるか溶けないを期待するような生暖かい気持ちで待っててください。
さあ、次回からは第2章の開始です。予定では学校生活をメインに書いてくつもりです。ぬるま湯みたいな温度でまっててください