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運命の出会い

本格的に始動、もう同じ轍は踏まないゼ!

 科学とは、人類の文明とともに発達してきた繁栄の象徴である。

 魔法とは、人類が思い描いてきた空想の産物である。

 2313年。高度な科学力によって魔法が世界に認知されてから、200年という歳月が流れた。今では魔法は日常化しており、人々の生活に深く関わっていくようになった。

 その力を人々が簡単に使えるようになったのは、魔法の日常化と共に発展してきた科学技術のおかげだ。

 魔導伝達装置まどうでんたつそうち―通称MTD(Magic Transmission Device)の開発により、今では世界規模で魔法の恩恵を受けられるようになったのだ。


 経済特区日本、その首都である東京に、魔法科学科高等学校まほうかがくかこうとうがっこう(通称・魔科学高校)の第一校があった。 

 その広大な敷地から、高校というより一流大学のキャンパスのような印象を受ける。それ程の面積を持つ理由は、二つある。

 一つは、この魔科学高校が科学分野と魔法分野の二つを教えているため。もう一つは、そのためにすべての生徒が伸び伸びと二つの分野を学べるようにするためだ。

 そしてその広大な面積を誇る学校の管理棟、1-Fクラスの教室で、翔はぼんやりと空を眺めていた。

 朝のホームルームまで時間はあり、教室内は生徒たちの喧騒けんそうに包まれている。朝の挨拶を交わす生徒、昨日のバラエティ番組について話し合うグループ、自分の机で携帯電話を弄っている生徒。全員が全員、好きなように時間を使っている。何もせず時間を浪費しているのは、翔だけだった。

 翔は入学当初から、一人で行動することが多かった。人見知り、と言えば嘘になる。事実、それなりに親しい仲間も数人はいる。

「翔くん、おはよう」

 声がしたのでそちらの方に視線を向けてみると、数少ない友人の一人である水野響子が、こちらへ歩み寄ってきた。

「おはよう響子。日向はいっしょじゃないのか?」

 いつも一緒にいるはずの舞園日向の姿がなかったので聞いてみた。

「うん、日向は部室に寄ってからくるみたい」

「ああ、なるほど」

 そこで一旦会話を中断した。隣、いいかな、と響子が訪ねてきたので、翔は頷きだけで答えた。隣の手すりに響子が背を預けるのを見てから、翔は再び空を見上げる。

「……いつも思うけど、翔くんってなにを見ているの?」

 不意に尋ねられたので、少しばかり驚いた。しかしそれを表に出さないように、そっと目を閉じてから答える。

「なにって、空だけど?」

「ううん。なんていうか、空よりももっと高いところを見ている気がするの」

「へぇ、響子っていつもそんなこと思って俺を見てるんだ」

 意識的に偽悪的な笑みを浮かべながら言うと、響子は顔をほのかに紅潮させながら、首を横に振った。

「い、いやだ。そ、そんなのじゃないわよ」

 冗談だよと言ってから、ちゃんとした答えを言ってやった。

「正直、俺もよくわからないけど……たぶん、何かを探しているんだと思う」

「え?」

「時々思うんだ。『今の世の中ってつまらないな』って。科学と魔法で形作られたこんな世の中なら、きっと何もかもが思い通りになるんじゃないか、て。もう少し刺激があれば、面白くなるんじゃないか、て」

 話しているうちに、響子が呆けているのに気が付いた。難しすぎたかなと思い、彼女の頭を軽く叩いてやる。

「ゴメン、すこし難しすぎた。さっきのことは忘れていいよ」

「え、ああ……うん」

 そうこうしている内にホームルーム開始5分前になったので、翔は自分の席についてそのままじっとしていた。


 放課後、翔は校門の前で手持ち無沙汰に携帯を弄っていた。すでに大勢の生徒がそれぞれの帰路についている。それでも翔は帰ろうとしない。その理由は、ただの人待ちゆえだ。

 そして程なくすると、昇降口のほうから親しい二人が来た。一人は響子で、もう一人は眼鏡を掛けた友人、日向だ。

「ごめーん、待った?」

「遅れて申し訳ありませんでした」

 軽い口調で言う響子と、畏まった口調で言う日向。相変わらず対照的な二人だな、という感想を心の奥底に仕舞い、翔は柔らかい口調で答える。

「べつに、そんなに待ってないから。それじゃあ帰ろうか」

 二人はそれ以上何も言わず、頷きだけを返した。


 三人でいつもの通学路を他愛もない会話をしながら歩いていると、

「そこの者、少し聞いてもいいだろうか」

 後ろから声を掛けられた。振り返ってみると、見知らぬ少女が立っていた。年齢は自分たちと同じくらい、輝く長い金髪を襟足でまとめている。整ってはいるが、可愛さよりも凛々しさを感じさせる表情をしている。服装は年齢的に不釣り合いな気がする黒のスーツを纏っているが、表情と相まってかなり似合っている。

 しかし重要なのはそこではなく。

(今まで人の気配を感じなかったのに……いつの間に?)

「え、はぁ。なんでしょう……?」

 困惑しながらも、日向は眼前の少女に聞いてみた。少女は一ミリも表情を変えず、

「問おう。最近この近辺で黒いコートを着た銀髪の男を見なかったか」

 そんな、わけのわからないことを聞いてきた。しかし当然心当たりがなかったので。

「いえ、そんな人は見てませんが」

「……嘘ではないようだな。答えてくれて感謝する」

 短く礼を述べてから、少女は踵を返して去って行った。

「なんだったんだろう」

「わかりません」

 響子と日向が思い思いに言うのを聞きながら、翔は少女が去って行った方を、じっと見ていた。


 翔は知らなかった。謎の少女と出会ったこの瞬間から、平凡に飽きてきた少年の人生の歯車が加速しだしたことに。

どうも、いざっくことイズミです。

前回の投稿から、自分なりにはそんなに間を開けず執筆できたと思っています。 それではここで、今作のおさらいを。舞台は今から300年後の世界。キリがいいからね。科学と魔法が日常に浸透している、という設定です。ある日主人公(大空翔)が見知らぬ女の子と出会ったことで、主人公の世界が変わるという、ありきたりな内容ですが、私の押せば出てくるところてん脳ではこれが最適だったのです……!

まあそんなこんなで、今作は打ち切りにしないようにしますので、よろしくお願いします!

㊟次回からあとがきは各シリーズ終了ごとに書きます。

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