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リストバンドの男

長い間待たせてしまいスイマセン<m(__)m>

今後も不定期ですが、よろしくお願いします

「なるほど、事情はわかった。ご苦労だったな」

「ホントですよ」

 今回の件に関して、ある程度のことはほかの委員を通じて報告済みだ。今は風紀委員室に戻り、事細やかに麻理に説明しているところだ。

「で、その剣術部員と衝突しかけていた男、というのは? 今はどこにいる?」

「今は隣の取調室で事情聴取している最中です。一応言っておきますが、独断で部屋を使って申し訳ありません」

「別に構わないさ。ではあたしも取り調べに参加するとしよう」

 翔は無言で頷き、麻理の後に続いた。


「委員長、お疲れ様です」

 取調室に入ると、こちらに気づいた風紀委員が敬礼をしてきた。麻理と翔も敬礼で返す。

「事情聴取は進んでいるのかな?」

「はぁ……それが、あまり話そうとしないんですよ」

「ほぉう」

 麻理の眉が僅かに揺れる。

「委員長。もしアレなら俺が行きますけど」

「……君が?」

 あまり麻理を刺激しない程度で提案をしてみる。

「彼と最初に会ったのは俺です。ほかの人よりはまともに話してくれると思いますよ……少し気になることもあるので」

「気になること?」

「はい」

 しばらく無言になった麻理からの返答を、翔はただ待つ。

 やがて麻理が大きくため息をつき、

「……わかった。君に任せよう」

「ありがとうございます」

 麻理に一礼した後、翔はそのまま取調室に入って行った。


「交代します」

 中に入ると、翔はそこにいた委員に歩み寄った。

「いけるのか? 一年」

 上級生の委員が尋ねてくる。

「大丈夫です。俺に任せてください」

「……ま、任せてみてもよさげかな。よし、じゃあ頼んだぞ」

「ええ」

 上級生の男子は、こちらの肩を叩くとそのまま退室した。

「……さて」

 表情を引き締め、翔は椅子に座っている男に向き直る。

 改めて観察してみると、はやりそれ程特徴のない容貌をしていた。外見は二十代後半から三十代前半、着ている服も上下とも青いジャージというものだった。

「それでは、ある程度質問をします。まず最初に、あなたの名前を教えてください」

恭司きょうじだ。阿藤あとう恭司」

「年齢は?」

「二十五」

「住所は?」

巳櫂町みかいまちだ」

 恭司と名乗った男は、こちらからの質問に対し簡潔に答える。

(うーん……特にコレといって面倒な正確じゃなさそうだなぁ。だったらアレについても聞いてみるか。タイミングはキリのいいところでいいか)

 一人で納得すると、翔は続けて問いただし始める。

「恭司さんは魔科学校ここの職員じゃないですよね。なぜ敷地内にいたんですか?」

「俺は元々、ここの卒業生だ。でもって、今日来たのはコイツのせいだ」

 そう言うと、恭司はジャージのポケットから一通の手紙を出した。

「ま、とりあえず読んでみてくれ」

「……では」

 翔は手紙を開いて文面に目を走らせた。書いてあったのは、たった一文。

『本日正午過ぎに、魔法科学高校体育館に来られたし』

「ま、そういうことで、俺は今日あそこに居た理由だ。でもって、ちょうど剣術の披露をしていたんで」

「彼らに意見を述べたところ、暴動が起きたと」

「あぁそうだ」

 翔は手紙を脇に置くと、恭司に向き直った。

「一応聞いておきますけど、この手紙の主に心当たりは?」

「ないに決まってるだろ」

 ふぅ、と、翔は息を吐く。

「わかりました。ではここでの証言を生徒会に報告させていただきます」

「かまわねぇよ」

 翔は恭司に退室してもいい旨を伝えると、恭司はそれに応じて椅子から腰を上げた。そこで何気なく恭司を見ていると、ある一点に視線が注がれた。

「そのリストバンド……」

「ん? あぁこれか。お前が気にすることでもねぇよ」

 彼の右腕に巻かれていたリストバンドのことを指摘したが軽く流されてしまった。

 けれど、翔はそのまま引き下がる訳にはいかなかった。

「あの、もしこのあとお時間があれば、また会いませんか? どうしてもお聞きしたいことがあるので」

「? 別にいいが」

「ありがとうございます。では後ほど連絡を入れますので、端末のアドレスを交換してもらえますか」

「構わない」

 それから翔は連絡先を交換した後、恭司を校外まで案内した。

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