恐怖による支配
体の堅さまで最強って事……?
「どうなってんだよお前の頭のかたさ……!ふざけんなよ……」
亮夜君はしばらく痛みでのたうちまわった後
そう吐き捨ててよろよろと教室の外に出て行った。
凍りつくクラスの中で、時計の音が静かに響く。
未だに信じられない。
変な形ではあるけど僕はあの亮夜君に勝ったって事でしょ?
やっぱり本物だこの強さ……。
「すげぇよ一輝……!」
今まで唖然としていたクラスメイト達は我にかえったのか、一人が言葉を漏らした。
それが合図となったのか教室のあちこちから
「やるじゃん一輝!」「お前鍛えたりしてんの?すげぇ!」
などと僕を称賛する声が聞こえてきた。
そんな皆の顔はどこか何かを企んでいるような顔をしている。
これだ……これだから偽善者は嫌なんだ。
強いものが敗れたらすぐ寝返って、急に媚びを売りだす。
そうやって強い者の後ろにつき、立場を利用してまた弱いものをいじめるのだろう。
「ふざけるな……」
気がつくと僕は、そんな事を言っていた。
『は?』
クラス中から気の抜けた声が聞こえ、同時に僕の怒りはピークに達した。
「ふざけるなって言ったんだ!!僕は今まで亮夜君だけでなく、
君たちにもいじめられてきた!!だから僕は今まで孤独に生きてきた!!
それをすげぇだの、やるじゃんだのと簡単な言葉で片付けて
擦り寄ってこないでくれよ!!!!」
みんなは僕に対してひどいことをしてきた。だからこの力を使って絶対に復讐してやる。
「おい一輝。お前ちょっと調子に乗りすぎてねぇか?
そもそもお前は、お前自身の力で亮夜を倒してないんだぞ」
「それもそうだ。あんま舐めてっと、今よりもハードに虐めんぞお前」
僕の一言によってクラスメイト達の称賛の声が
いつの間にか罵声に変わり、いつもの冷酷な視線が僕に向けられる。
でも今の僕にはこの力がある。何も恐れることはない。
「上等だ!来いよ!」
「んじゃぁリクエストに応じてぶっつぶしてやるよ。なぁみんな?」
「貧弱なお前に何ができんだよ?クズが」
「何ができる……だって?こういうことさ!!」
僕は拳を振り上げ、目の前の机に思いっきり叩きつけた。
「はっ、ただ机殴っただけじゃねぇか。痛かったろ」
「そう言ってなよ。すぐにわかるから」
刹那ーーー ミシッと机がきしむ音がし、クラス中がざわめく。
机はだんだんとクレーター状に凹んでいき、そして
轟音をとどろかせながらバラバラに崩れ落ちた。
「ほら」
反応する者は……誰もいない。
みな驚愕の表情のままピクリとも動かなくなってしまった。
「さっきまでの威勢はどうしたのさ、みんな」僕のそんなセリフに、
『す、すいませんでした!』
クラス中が土下座した。