運命 SIDE:ファルクス
彼女を一目見て、運命だと思った。
神殿が何かの動きを見せている情報が入って、情報収集のために俺が直々に出向いた。
本来なら部下に任せていい仕事なのだが、何かの感が働いたんだ。
この国は神殿の権威が他国よりも高い。
それは神子という特別な存在がいるおかげ。
他国にはいない神子なのだが、神子がいるだけで国は豊かになる。
神子は神に愛された存在だから、祝福をその身に宿しているのだ。
神子がいれば天候は安定して、土地が豊かになる。
だから他国も神子の動向には、十分注目している。
そんな中で見せた今回の動き。
もしかしたら、世界が変わるかもしれない予兆。
見逃せるはずがない。
だから俺もいち早く動いたというわけだ。
神子がどうやって、この世界に来るのかはわからない。
神殿の中でもかなり上の奴らしか、その現場に居合わせないからだ。
だがこの世界のものではないことは、暗黙の了解で知っている。
果たして、呼び出すのか、それとも落ちてくるのか。
数ヶ月に渡り神殿の監視を行っていたところ、ついに大きな動きを発見した。
神殿の上の奴らが揃って地下に赴いたのだ。
地下なのでここから見ることはできないが、何かが終われば出てくるだろう。
しばらく待っていると、出てきた神殿の奴らの中に、知らない女が混じっていた。
前後左右を神殿の奴らに囲まれて、さながら逃げられないように囚われていると言ったところか。
黒い髪と黒い目。
幼い顔立ちをした少女。
強張った顔や身体から、不安や緊張が伝わってくる。
……はっ!
なんだ、あれは。
あれが神子?
魔女か何かの間違いじゃないのか?
一瞬外に向けた目は、全ての闇を詰め込んだかのような、深淵を見ている心地にさせた。
すぐにその目を隠したようだが、俺の目は誤魔化せない。
あの目を見た後では、全ての印象がガラリと変わった。
いいなぁ……あの目。
欲しいなぁ……
絶望と憎しみ、恨み、あらゆる負の感情を詰め込んだドロドロした目。
今まで見てきた何よりも混沌としていて、とても美しい。
あの目をくり抜いて持って帰ってもいいが、あの目に映した感情を心の中に秘めているのだとすれば……
なんて、美しくて愛おしい闇なんだろうか。
あぁ……欲しい。
俺のものにしてしまおうか。
この国のことなんかどうでもいい。
滅ぼうが存続しようが、どうでもいいことだ。
さて、どうやって手に入れようか。
また、あの目を見せてくれないだろうか?
今度は、間近で見てみたい。
俺は舌舐めずりをしながら、あれを手に入れるための計画を立てることにした。




