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やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので竜と無双します  作者: 菊池 快晴@書籍化決定


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第31話『生き残りの魔女』

 交流会から一週間が経過した。

 前と変わらず、ココア先生の元で三人一組(スリーマンセル)の訓練。

 大きく変わったのは、他候補生との合同訓練が開始したことだ。


「まともに戦うのは初めてだね。クライン」

「そうだね。アクリル」


 王城が所有している森の中。

 彼女が水結界を俺の足元に形成した。


 身体が囲われそうになるも、それを防ぐ為に魔結界で止める。

 だが水の圧力は強い。


 魔結界を押し上げるほどの威力だが、時間稼ぎには十分だった。

 形成されるも、既にそこにはいない。


 俺は駆けながら、魔結界をアクリルの両手両足に形成した。

 彼女は身動きが取れなくなり力づくでもがく。


 それでもダメだとわかると水滅で結界を破壊しようとした。

 だが俺もそれを見て魔滅で相殺。


 結界師同士の場合、魔結界で囲うことは非常に難しいとわかった。


 ジジジと形成される際に上書きするように押しとどめることができるからだ。


 けれども、複数を同時に出現させることのできる俺は後出しの権利がある。

 相手に結界を出させて防いだ後、新たなに形成すればいい。


 両手両足を魔滅で攻撃したが、アクリルの魔力防御は固かった。

 これもわかったことだが、人間相手に魔滅は威力が激減する。


 その理由は、身体に自動で覆われている魔力の膜みたいなものだ。

 よっぽどの力の差がなければ一撃で倒すことは難しいだろう。


 だが俺の魔滅は人よりも強力だ。

 アクリルは苦しそうに片膝をつく。


 そのまま後ろの木に吊られていたクマさんぬいぐるみをゲット。


 これで勝利だ。


「ったく、相変わらず強すぎるだろ」

「へへ、ありがと」


『勝者、クライン班。各自、集合』


 どこからともなくアナウンスが聞こえる。

 簡単な訓練でさえ序列がつくようになって、俺たちのライバル意識は以前にもまして上昇していた。


 今のところ俺は戦闘訓練でずっと一位だ。

 全体でいうとルージュは五位、ミリシアは戦闘訓練こそ振るわないものの、隠密行動、魔力探知試験ではトップクラス。


 ただココア先生曰く、序列で一位だからといって合格するわけじゃないと明言していた。

 それでも無関係ってことはないだろうが。

 

 また、驚いたことがある。


「うふふ、流石ねクライン君」

「ありがとう。プラタにはいつか負けそうだけど」

「そうかしら? 随分と余裕があるみたいだけど」

「それは君のほうでしょ」

「どうかな。――それじゃあね」


 それは、以前にルージュとミリシアに『魔女』と呼ばれていたプラタ・リースのことだ。


「クライン、な先入観を植え付けちゃっごめんね。プラタさん、とってもいい子だわ。彼女にもちゃんと謝ったんだけど「よくあることだから気にしないで」って笑顔で言われちゃった」

「そうだね。確かにいい子だ。でもなんか……」

「なんか?」

「いや、何でもない」


 プラタはとても良い子だ。

 人当たりがよく、常に笑顔で誰にでも挨拶をする。

 闇魔法も何度かみた。確かに強いが、だからといって『魔女』と呼ばれるほどおそろしいとは思えない。


 唯一の生き残りといっても、偶然じゃなかろうか。


 ただ俺と似ている気がする。


 その理由は……わからないけれど。

 

 ちなみに他国の候補生たちは、王城の隣の宿舎で寝泊まりしている。


 普段会うことがないので、ちょっとだけうらやましい。


「今日の訓練はこれで終わりだ。明日は久しぶりの休日とする。交流を深めるもよし、訓練したい人はすればいい」


 ココア先生の言葉に、全員が嬉しそうな声をあげた。

 すっかり忘れそうになるが、俺たちはまだ子供なのだ。


「クライン聞いたか!? 明日どうするよ!?」

「え、訓練しようかと思ってるよ」

「……聞いたかミリシア?」

「ええ、おそらくだけど、クラインは戦神の生まれ変わりよ。戦うことが何よりも好きなのよ」

「そんなことないよ……。ただ、頑張りたいんだ」


 訓練が始まってから、おもちとの連携も強くなってきている。

 俺たちは虐げられていた。それを思い出すとつい力が入る。


「でも、明日は休んで」

「え?」

「たまには休息も必要。あなたの為にもね」


 そんな力の入った拳に気づいていたのか、ミリシアがそっと手に触れてきた。

 思わず驚いてしまう。


 でも、俺の為を思ってくれていっているのだ。


 素直に従おう。


「わかった……そうするよ」

「しゃあ! 久しぶりに王街観光しようぜ。行きたい店あるんだよなー」

「私も甘いもの食べたいな」


   ◇


 その夜、久しぶりの休日で何しようかと考えていたら、恥ずかしいことに眠れなかった。

 家族に帰りたいが、一日だけでは時間がほとんど取れない。


 扉を開けて外に出て、野外の渡り廊下で空を見上げる。


 夜空が綺麗で、初めてこの城に来た時を思い出す。


 だがそのとき、俺はとんでもないものをみた。


 王城には居住区とは別に武器庫や魔法本、資料室の別棟がある。


 特別な兵士以外は立ち入り禁止だ。


 その近く、壁を伝っているのか、闇夜で動く姿を見つけたのだ。


 幼い頃から魔印を動かして努力していたおかげか、五感が人よりも鋭い。

 

 魔力操作も得意だ。目に力を籠めると、ハッキリと姿が見えてくる。


「何してるんだ……?」


 唯一の生き残り『魔女』。


 プラタ・リースだった。

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