6話 一緒に料理
夕飯は簡単に作れるものにしよう。
今ある食材なら、肉じゃがかカレーかな。
「羽依さん、カレーと肉じゃがどっちが良いかな?」
「カレーが良いな~。作るの手伝うよ。」
さっそく二人で取りかかる。野菜は大きめカットが藤崎家のカレーだ。豚バラ肉と野菜を、ある程度炒めてから煮込む、と。
羽依さんはお米を研いで炊飯器にセット。めっちゃ手際がいいのは、お家のお手伝いをしっかりやってる証拠かな。
天然なところも確かにあるけど、ポンコツではないようだ。お約束をいい意味で裏切ってくれたね。
簡単なサラダとかも作っておこう。スティックサラダとか楽で良いよね。
「羽依さん、好き嫌いとかある?」
「何でも食べれるよ〜。カレーはめっちゃ好き。」
にこーっとする羽依さん。エクボが可愛い!
「サラダはスティックサラダで良いかな?」
「良いよ~。じゃあ雪代家に伝わる秘伝のディップを作りましょう〜。」
「それは楽しみ! ちょっと多めに作っておくね。」
二人で作業しながらの会話が、めっちゃ楽しい!
本当なら一人でご飯を作って、一人で食べるはずだったけど、今日知り合ったばかりの同級生(超可愛い)と、ご飯を作って一緒に食べることになるとは。
ご都合主義にもほどがあるだろう。
まさに夢に見たシチュエーションが、登校初日から実現してしまうとは……。
俺が火の番をしている間、羽依さんに荷物を開梱してもらい、食器を用意してもらう。ちゃんと洗って拭き上げてくれるあたり、気が利くなあ。
初めての共同作業は、カレーライスを作ることでした。なんか幸せっぽくて良いね。息が合ってる気がする。
初めて会った人なのに、以前から知ってるような感覚になってしまう。それだけ相性がいいってことなのかな。
~♪
炊飯器の炊き上がりコールが鳴ると、羽依さんは喜びの踊りを披露する。
なにそれ可愛い。
「たけたよ~♪」
ご飯を皿に盛り、カレーを待つ羽依さんは、ご飯を待つワンコのようだった。
お手、おすわり! とか言ったら怒られそうだから言わないけど。
「「いただきまーす!」」
うん! 上出来だ。やっぱ一人で食べるよりも全然美味しく感じる。
羽依さんは大きい目をさらに見開き、感動を表している。
「藤崎くんの作るカレーは美味しいね~♪」
にっこにっこで食べる羽依さんは本当に可愛い。
さて問題。俺は今日羽依さんを何回、可愛いと思ったでしょう。
「羽依さんの作ってくれたこのディップ、めっちゃ美味しいね! レシピ教えてくれる?」
「ん~それは、お母さんに聞かないと駄目かも。藤崎くんともっと仲良しになったらOK出るかもね。」
秘伝なだけあって、セキュリティーチェックが厳しいようだ。
「そうだ羽依さん、俺のことも名前で呼んでもらってもいいかな?」
「そーま。」
んぐっ! いきなり呼び捨ては、距離感一気に詰めてきた感じだね。さすがは羽依さん。
「そーま、そーま!」
「ちょっ! 顔が熱くなるからやめてー。」
カレーを食べながら、俺の名前を連呼する羽依さん。今日一日で、めっちゃ仲良くなれた気がする。
でも、こういうのって、段階を踏んで近づいていくもんじゃないのかな。一足飛びが過ぎたような、徐々に仲良くなっていく喜びみたいな……まあ贅沢言っちゃいけないな。すでに俺の中ではエンドロール流れちゃってるし。
あとはイチャイチャだけだ。俺の定義から言えば、すでにイチャイチャしていると言っても良い。距離近いし、ほぼ0距離。
羽依さんが食べるたびに、肘が当たってるのは、あえて突っ込まない。
ここまでくると、あとはキスぐらいしないと、目的を果たしたとは言えないんじゃないのか?
じっと羽依さんを見る。
いや、これどうやってそんな雰囲気にもっていくの?
藤崎家のカレーにはニンニクを入れるのがお約束。
今キスしたら、ニンニクぽいキスになってしまうじゃないか。
やだー!