5話 告白?
狭いアパートだ。6畳1間だからね。
部屋の奥側には荷解きが終わっていない荷物が山積み。
中央付近にはテーブルと布団一式。まだベッド買ってないし。
家電は備え付けのものが、ある程度揃っている。事故物件とは言え、新し目のアパートだからね。
今日はパソコンをセットアップしておきたかったが、急な来客で明日以降に持ち越しだ。ネトゲのログボは諦めよう。
中央のテーブルの横に俺が座っている。そのすぐ隣に羽依さんが鎮座されておられる。対面とかではないのね。
「羽依さん、何か近くない?」
「そうかな?」
「そうだよ!距離感ってあるよね?」
羽依は悲しそうな顔になった。
「私、そういうのよくわかんないの。だから友達にも怒られちゃって。男の人が勘違いするって。」
羽依さん。そういう友達は大事にしよう。でも忠告が生かされてないね!?
「羽依さん可愛いからさ、男の人だったら喜んじゃうかもね。」
かわいいって言っちゃった!恥ずかしい!
「私可愛い?」羽依がじっとこっちを見てくる。
「うん…正直めっちゃ可愛いと思う。」
羽依が顔を真赤にする。そして、にへらーっとした顔をして距離を更に詰めてくる。
「私のこと好きになっちゃう?」
なっちゃいます!勘違いさせないで!
「羽依さん!ちょっと近すぎる!!」
肩をもって少しだけ押すと、羽依は少しだけビクッとして離れる。
「ごめんね藤崎くん。嫌だったよね?」
「全然いやじゃない!いやじゃないけど、そんな一気に来られると混乱する!」
こんな狭い部屋で、特級美少女が迫ってきてる状況は、流石のラノベ好きな俺だってご都合主義過ぎて怒るレベルだ。事実は小説より奇なりか。
「羽依さん俺のこと好きなの?」
あ、聞いちゃった。
「ううん?」
あ、ですよねー。
「まだ知り合ったばかりで、それはないよ~」
羽依さんはケラケラ笑う。あーたちわるい…
何、俺?遊ばれてるの?
「藤崎くんが私に告白してきたからね。ちょっと、どんな子かな?とは思ったの。」
そうだね。告白してきた相手なら気になるよね。
うん?告白って俺が?いやいやいやいや!
「俺、告白なんてしてないよ?」
羽依はきょとんとしたあと、急に悲しそうな顔になった。
「桜の木の下で、かわいいって言った…あれ嘘だったの?」
ああ、はい!言いました!
「言った!言ったけど!」
羽依は勝ち誇った顔でフフンとしながら
「だよね~。」
あれは告白ではない。ただ心の声が漏れただけだ…
俺氏、うっかりにも程がある…
その後も羽依さんの天然ちゃんぶりに振り回され、防戦一方だった。