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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

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48/50

48話 初体験

 羽依は昼過ぎに来るというので先に帰宅することにした。

 途中、ドラッグストアにより、必要なものを購入する。

 ――避妊具、あったほうがいいのか?

 正直、羽依を抱くつもりは無かった。

 手を出さないと誓ってもいた。

 しかし、現実に羽依から攻められて分かる。

 今まで耐えられたのが奇跡だった。


 本気で攻めてきた女の子に、男の守りなんて全く役に立たないことを痛感した。

 だったらむしろこっちから攻めて、羽依を引かせるのも有りなのでは?

 ――羽依が引くこと無いだろうな。


 羽依が急に攻めに転じたのは、きっと真桜の告白絡みなんだろうか。

 焦っているのかもしれない。

 お父さんに似た俺を取られるのが嫌なのか。


 ――避妊具の前で5分ほど悩んでから購入する。

 いやこれめっちゃ恥ずかしい……。

 アパートに戻り、部屋を掃除する。

 風呂とトイレもしっかり磨いた。


 ピンポーン


 羽依が来たようだ。


「いらっしゃい~」


 羽依を見た瞬間、息が止まりそうになった。

 羽依は白いオフショルのニットにタイトめなミニスカート。

 ニーハイソックスにロングブーツと、まるで自分の"最強の可愛さ"を研究し尽くしたかのような服装だった。


挿絵(By みてみん)



 ――今までも可愛いと思っていた。

 でも、改めて思い知らされる。

 こんなに可愛い子と、この先知り合うことなんて、絶対にない。

 理想の塊みたいな女の子だからだ。

 ちらっと見える太ももが白くて眩しい。

 豊かな胸元は、柔らかく弾むようで、思わず目を奪われる。

 オフショルから覗くデコルテは、色っぽくて妙に艶めかしい。

 みずみずしい唇、大きな瞳、そして栗色のサイドポニーテール。


 ――世の中で一番可愛いのは羽依だ。間違いない。


 心臓がもたない。呼吸が乱れる。


 俺の様子をみて何を思ったんだろう。羽依がぎゅっと抱きしめてきた。


「大丈夫?そーま。なんか辛そうだよ?」


 柔らかく包み込まれる感触に、胸の高鳴りはますます加速する。


「……羽依ってこんなに可愛かったっけ……」


「私は何も変わらないよ? でも、ちょっと可愛く見せたかったから……そう言ってくれると嬉しいな……」


 部屋に上がるなり、俺はベッドに突き飛ばされた。

 そのまま覆いかぶさって、羽依がキスをする。


 ――レモンの味がした。


「ごめんね、そーま。襲っちゃった」


 まるで悪びれた様子もなく、羽依が囁く。

 そして、さらに深く、強く、貪るような口づけをしてきた。


 舌を絡め、口内のすべてを舐め尽くすような激しさに、息ができなくなる。


 完全に攻められてる。

 このままだと、今日は羽依のペースで終わる。


 でも――どうすればいい?

 経験のなさが、もどかしい。


 だんだんと、羽依がキスだけでは足りなくなってきたのが伝わってくる。


「そーま……お願い……」


 その懇願に、俺の理性も誓いも、すべて吹き飛んでいた。

 羽依は迷いなく、自らの服をするりと脱ぎ去る。

 窓から差し込む午後の光を浴びた白い肌は、淡く輝きながら、透き通るように美しい。

 初めて目にするその姿は、まるで芸術のように美しく、息を呑むほどだった。


 ***


 時間は……夜の11時だ。

 二人、初めてのことばかりで、最初は手探りだった。

 けれど、ぎこちなさを埋めるように触れ合い、少しずつ息を合わせることで、お互いを深く感じ合うことができたと思う。


「そーま。私ね、そーま以外の人とは絶対無理だと思うんだ。だからこれが最初で最後の恋なの。……今更だけど、お願い、私と付き合って……」


 羽依は布団から少し顔を出し、そんな告白をしてきた。あれだけ愛し合ったのに、確証が欲しかったのだろうか。不安げな表情をし、最後の方は声がかすれ、正しく聞き取れたかわからないぐらいだった。


「俺も同じ気持ちだよ。正直親のこととか、もうどうでもいい。ただ、羽依を手放したくないんだ。ずっと一緒にいたい」


 もっと早く抱いても良かったのかもしれない。羽依にばかり攻めさせた自分の情けなさを後悔する。


「羽依。俺は羽依のこと愛してる。この先もずっと変わらずに愛してる」


「そーま。そーまはお父さんだなんて思ってないよ。私が好きなのは、そーまなの。ずっと、ずっと愛してる」


 二人が欲しいのは不変の愛。ただの口約束だけど、俺は絶対に守り抜く。


 ***


「そーまは将来何になりたい?」


「うん……今のところ、学校の先生か料理人。パティシエなんかも良いなって思うんだ」


 羽依が微笑んで、俺の胸元にそっと額を寄せてくる。


「そーま、先生って似合いそう。勉強苦手なのに一生懸命頑張るところ、きっと教える立場になったら役に立つと思うよ。料理人もパティシエもぴったり。そーまは、きっと何をやっても素敵になれると思う」


 羽依の俺への評価の高さにちょっとこそばゆい気もするが……。


「羽依は? 何かやりたいことある?」


「うーん、学校の先生っていいなってずっと思ってた。たぶん、お父さんの影響もあるのかも。でも、私、お父さんが先生してるところを一度も見たことないんだよね」


 ふっと寂しげに笑う羽依。


「でもね……」


 表情がぱっと明るくなり、キラキラとした瞳が俺を見つめる。


「案外、キッチン雪代を、そーまと私とお母さんでやるのも、すごく楽しいんじゃないかなって」


 羽依がとても明るい顔でそんな事言ってる。きっと一番の希望なのかも。


「……そっか、それもいいかもな。正直、俺もそれが一番魅力的に思えてる。店を大きくして、チェーン展開とかしてみるのもアリかも」


「夢が膨らむねえ~」


 そう言って羽依が笑う。

 そんな話をしてると、ますます羽依が愛おしく感じてくる。

 俺も、そんな未来を想像すると、なんだか心が温かくなった。

 人を好きになるって、すごい。

 どこまで強く、深く、この気持ちは育っていくのだろうか。




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