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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

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44/50

44話 中間試験

 中間試験が終わった。


 結果は300人中99位。


 正直、試験前は「半分より上に入れれば十分だろ」と思っていたけど、気づけば二桁順位。

 俺にしては、なかなかの健闘だ。


「そーま! 順位どうだった?」


「99位だったよ。羽依は?」


「5位だよ! それで真桜が1位。やっぱすごいなあ~」


 羽依は満面の笑みで、親友の実力を素直に認めている。


「そーまの99位は、まだまだ伸びしろありそうだね。もっと頑張らないと!」


「え~……もう十分頑張ったよ……」


「蒼真、99位ぐらいで満足してちゃダメよ」


 背後から真桜が冷静な声で釘を刺してくる。1位の人間に言われると、何も言い返せない……。


「蒼真、俺は3位だったぞ! まだまだやれるって!」


 隼まで自信満々に言ってくる。ああ……秀才たちに囲まれるの、辛い……。


「隼くんすごいね! サッカーもあんなに頑張ってるのに」


 羽依が感心したように言う。

 俺以外の男子では、隼となら普通に話せるようになってきた羽依。

 隼との距離も少し縮まってる気がする……。


「羽依ちゃんには今回勝てたな! でも、真桜に勝たないと威張れないよな~!」


 イケメンでコミュ力高く、サッカー部で秀才な隼。

 姉のことを“パーフェクトヒューマン”なんて言っていたけど、どっちかというとお前のほうがパーフェクトヒューマンじゃないか?

 ーーいや、燕さんはさらにすごいのか……おそるべし高峰一族。


「蒼真、頑張ってね。わからないことがあったらすぐ聞くのよ」


 真桜は、この前家に来たときから、俺に対してさらに優しくなった気がする。

 ちょっと過保護気味でもあるかも。


 そういえば、真桜の“先輩ぶん投げ事件”以来、羽依に告白する奴は今のところいない。

 近頃は「俺と雪代羽依が、ついに付き合いはじめた」という噂まで流れている。

 まあ、登下校を一緒にして手まで繋いでたら、誰も疑わないよな。


 ***


「はあ~……」


「どうしたの、そーま?」


 下校中、つい大きなため息をついてしまった俺に、羽依が心配そうに顔を覗き込んでくる。


「成績順位の目標、150位だったんだよ。だから99位なら大幅に超えてるし、喜ぶべきなんだけど……。3人と比べちゃうとねえ……」


「十分すごいじゃない! 毎朝の勉強の成果が出たってことなら嬉しいな。あと、私とも結構勉強してるからね」


「それだよな~。いや、羽依の順位がちょっと落ちてたのが俺のせいかな思っちゃうとね」


 俺の言葉に、羽依はクスクスと笑う。


「私たちの成績が落ちたって、そーまのせいじゃないよ~。私に朝勉強が役に立ってないなんて、本気で思ってる?」


「マイナスにはなってないと思いたいなあ」


「 なってるはず無いじゃん。真桜にも教えてもらってるんだし。そーまはね、要領がもうちょっと良くなったら、一気に伸びるよ」


 羽依がそう言って、励ましてくれる。

 普段はぽわぽわしてるのに、こういう時はちょっとお姉ちゃんぽいな。


「ありがとう、羽依お姉ちゃん」


「んふ、じゃあ今日はお姉ちゃんとお風呂入っちゃおうか!」


挿絵(By みてみん)


「お姉ちゃん、悪戯するからやだ」


 すぐ調子に乗るお姉ちゃんだった。

 ぶーっと不満げな顔をしてるのが、妙に可愛い。


 今日は金曜日。雪代家お泊まりの日だ。

 真桜さんにも泊まりにこいって羽依が説得していたが丁重にお断りされてるのはちょっと面白かった。


「隼くんすごいよね~、サッカー部で成績上位者って、文武両道でカッコいいね!」


 突然の隼の話に、思わずびくっとする。

 羽依の何気ない一言に、ちょっとだけもやっとした気持ちが湧く。

 今まで男子を遠ざけていたぶん、距離が縮まってくると、やっぱり焦るなあ……。


「そんなカッコいい隼に“付き合って”って言われたらどうする?」


「断るよ? そーまいるし」


 あっさりと言われて、顔が一気に熱くなるのを感じる。

 なんでこんなバカな質問をしたんだ俺は。

 まるで試すみたいなことを……。


 でも、羽依は迷うことなく即答してくれた。


「そんな可愛いこと言ってくれる羽依には、プリンあげちゃおう!」


「やった~! そーまプリンだ! ていうか、いつでもあるね?」


「プリン作ると幸せになるからね。ウケもいいし、俺も好きだし。 そうだ、美咲さんにも持っていってあげようか」


 俺がそう言うと、羽依がキラキラした目で俺を見つめ、道端なのにぎゅーっとくっついてくる。


「そーま大好き!」


 ***


「蒼真、羽依! 上がっちゃいな~!」


「は~い、お疲れ様でした~!」


 バイトを終え、雪代家のリビングへ。

 羽依と俺はソファーにぐったりと沈み込んだ。


「週末は忙しいね。お酒飲むお客さんも多いから、注文が多いし」


「だね~。お母さん、よく一人で店を回せるよ」


「まあ、美咲さんだからね」


 羽依が思い出したように、俺に飛びついてくる。


「そーま! ベッド買ったんだよ! この前の食事会の次の日に買いに行ったんだ~。昨日届いたの! 見に行こうよ!」


「ああ~、美咲さんと買い出しに行くって言ってたときか。あのときベッドまで買ってたんだ……」


 羽依に手を引っ張られ、お父さんの部屋へと連れて行かれる。


「……すご、なんかデカくね?」


「ダブルベッドだよ~。男の子なら大きいほうがいいって、お母さんがね」


「ほうほう……って、羽依、即布団に入らないの!」


 せっかくの新しい布団に、いきなりダイブしようとする羽依を止めた。


「ファーストダイブしたい~!」


「お風呂入って、綺麗になってからね」


 そう言うと、羽依が少し頬を染め、もじもじする。


「うん、お風呂入ってキレイになったら、一緒に寝て触りっこしていいんだね。わかった!」


「誰もそこまで言ってない! そもそもお父さんの部屋ではダメでしょ!」


「じゃあ私の部屋ならいいよね?」


 ニヤニヤしながら、俺の服を引っ張る羽依。

 ……もう、ああ言えばこう言う。


「じゃあ、お風呂入ってくるね」


 俺がそう言うと、羽依が俺の首に腕を絡めて耳元に顔を寄せる。


「ねえ、一緒に入らない?」

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