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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

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41/50

41話 想い

「真桜さん……」


 こういう時、何て言えばいいんだろう。

 経験の足りなさがもどかしい。

 ただ、真桜さんの言葉が俺の胸を締め付ける。


 気持ちの向くままに、真桜さんの頬にそっと手を当て、涙を拭った。


「ばか……優しくしないでよ……」


「ごめん」


「謝らないで……」


 真桜さんが小さくつぶやき、俺の胸にそっと身を寄せる。


「ごめんね。こんな気難しい女に寄られたら、嫌よね……でも、少しだけ貴方の胸を貸して?」


「嫌じゃないよ。真桜さんは、すごく魅力的だし……俺なんかが言うのもアレだけど、手が届かないくらいの人だと思ってる」


 何も言わずに、真桜さんは俺の胸に頭をうずめたまま、しばらく動かない。


「……汗臭い」


「ごめん……シャワー浴びればよかったね。こんなにすぐ来るとは思わなかったから……」


「ううん、嫌いじゃない……ただ、なんだか……」


 ふいに、真桜さんが俺の首筋に口を寄せ――


 舌先で、ぺろっと触れた。


「ひゃんッ!」


 意外すぎる行動に、俺の頭は一瞬でショートする。


「ふふっ、いい反応するのね。蒼真」


 顔を上げた真桜さんは、すでに泣き止んでいた。

 そして、ちょっとだけ悪戯っぽい顔をしている。


「ごめんなさい、蒼真。なんだかすごく体が熱くなって……カルボナーラのせい? 何か入れた?」


「いや、俺も同じもの食べてるし!」


 真桜さんの表情が、どこか熱に浮かされたように見える。


「貴方の匂いと……昨日の羽依の悪戯のせいかもね」


「羽依さん、何したの!?」


 真桜さんが、少し体をよじらせる。

 その仕草があまりにも色っぽくて、思わず息をのむ。


「羽依がしたこと、教えてあげようか?」


 俺の鼻先すれすれまで近づいてくる真桜さん。

 整った顔立ち、切れ長の目、長い黒髪――


 彼女の美しさが、至近距離で迫ってくる。


 俺は思わずのけぞり、バランスを崩してひっくり返った。


 その瞬間――


「っと……」


 真桜さんが俺の後頭部をキャッチし、そのまま横に寝かせる。


 気づけば、真桜さんの腕枕で、二人並んで横向きに向き合う形になっていた。


「蒼真って、本当に可愛いわね。泣いてる姿とか、勉強で悩んでる姿とか、好きよ」


「それ……素直に喜んでいいのかな……?」


 体を起こそうとするが、肩をがっちりホールドされていて、びくとも動けない。


 あ、これ詰んでね?


「昨日ね……羽依と一緒にお風呂に入ったの」


「……羽依さんなら、きっとそうするだろうね……」


「それでね、体を洗ってくれたの。手で」


「手!?……全部……?」


「全部」


 一瞬、頭の中でとんでもない映像が展開される。


 百合じゃん、それもう百合じゃん!!


 これ、俺はヤキモチを焼くべきなのか?

 ……いや、まだ付き合ってるわけじゃないし、そんな資格はない。

 むしろ、なぜか嫌な気持ちにならないのが不思議だった。

 真桜さんと羽依さんなら、むしろ――


 尊い。


「それでね、一緒の布団に入って寝たの。寝かせてくれないのよ、彼女」


「そう……なんだ」


「ずっと、いたずらされたわ」


 真桜さんの表情が、とろんとしたものに変わる。きっと、いろいろ思い出してるんだろう。

 羽依さんは確かに「今夜は寝かせない」と言ってたが、まさかそう言う意味とは……

 ヤバい。

 ちょっとその話、刺激が強すぎる。

 どんな「いたずら」だったんだ……!?


「だからね、羽依にも責任あるわね。昨日のせいで、今日の私はペースが乱れっぱなし。貴方に、こんな話をしてしまうなんてね……」


「そ、そうなんだ。それは……大変だったね……。そろそろ起きてもいいかな……?」


「まだダメ。私とこうしてるの、嫌?」


 真桜さんが、ほんの少しだけ寂しそうな顔をする。

 その聞き方、卑怯すぎる……。


「……嫌じゃないよ。ただ、なんていうか、真桜さんらしくないっていうか……」


「私らしさって、何? 真面目で優等生っぽい感じのこと?蒼真、女の子はいろんな面を持っているのよ」


 そう言って、さらに顔を近づけてくる。

 口と口の距離、ゼロ。

 そして――


 柔らかい感触に俺の脳が、またもやショートする。


 しばらくして、真桜さんがそっと顔を離した。

 その表情は、満足げだった。


「やった……やっちゃった! 羽依から死守した甲斐があったわ。私のファーストキスよ」


 してやったり、と言わんばかりの表情で、勝ち誇る真桜さん。

 羽依さん……一体どこまで攻めたんだ……!?


「私ね、やっぱり貴方のこと、好きみたい。……羽依のことも好き。私って、とっても欲張りかも」


 そう言って微笑む真桜さんは、今までで一番綺麗に見えた。

 自分の気持ちに素直になった彼女は、眩しいほどの輝きを放っていた。






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