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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

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36/50

36話 勉強会

平日の苦難を乗り越え、ついに土曜日。今日は楽しみにしていた食事会の日だ。


……一応、名目上は「勉強会」となっている。


中間テストも近いので、実際に勉強もする予定だが、高1の男女4人が集まれば、もう少し楽しいこともしたいはずだ。


今日のメンバーは、俺、羽依さん、真桜さん、隼。


隼はクラスの中心人物で、サッカー部の期待の星。

俺とは仲がいいが、交友範囲も広く、誰とでもすぐに打ち解けられるタイプだ。


「入学したらすぐに遊びに行く」と言っていたものの、お互い何かと忙しく、今日が初の来訪となった。


女子二人とも、普通に話せる……はず、だと思う。


真桜さんとは問題なく会話できるが、羽依さんは他の男子と相当な距離を取っているのが現状だ。

距離感が極端な彼女は、ピタッとくっつくか、遠く離れるかの二択。


まぁ、隼ならそのへんを上手くやってくれるだろう。


昼前になり、俺と羽依さんは食材を買いにスーパーへ向かう。


「行ってきます〜」


雪代家を後にし、徒歩5分ほどの道のりを並んで歩く。

初夏の空気が漂い始め、五月にしてはかなり暑く感じる。

挿絵(By みてみん)

今日の羽依さんは、友人たちと会うため、いつもより少しおしゃれな装いだ。

薄手のオフショルダー風カットソーにデニムのショートパンツ。

カジュアルながらも、どこか華やかで、彼女らしい元気な雰囲気があふれている。


「そーま、今日のメニューはもう決めてるの?」


「うん。鍋をやろうかなって思ってるよ」


羽依さんが、ちょっと困惑した表情を浮かべる。予想通りの反応だ。


「今日、暑くない?」


確かに今日は特に夏っぽい陽気で、日差しがジリジリと照りつけている。

羽依さんがげっそりとした顔で俺をジト目で見つめる。


「まさか……辛い鍋じゃないよね……?」


「火鍋やります」


「ぎゃーーー!!」


白目をむいた。

それでも可愛いって、すごいなあ!


「まぁ、そーまがやるって言うんだから、きっと勝算があるんだよね?」


「もちろん! 冷たいジュースとアイスをいっぱい買っていこう!」


それを聞いた瞬間、羽依さんの表情がパッと明るくなった。


「……めっちゃ楽しみになってきた!」


そう言って、俺の腕にしがみついてくる。


まぁ、我慢比べをするつもりはないし、暑い日に汗をかいて発汗を促すのは理にかなっている。

水分をたっぷり摂ることが肝心だ。


スーパーで食材を買い終え、アパートへ戻る。


間もなく、友人たちが到着する時間だ。


ちなみに、今日の夜は真桜さんが羽依さんの家に泊まるらしい。

二人の仲の良さはGW明けからさらに加速し、「尊みが深い」 という評判が定着しつつある。


もしかしたら、俺の一番のライバルは真桜さんなのかもしれない。


ピンポーン。


「いらっしゃい、真桜さん」


最初にやってきたのは真桜さんだった。

挿絵(By みてみん)

今日の装いは、涼しげなノースリーブの白いシャツに、グレーのタイトスカート。

細く引き締まった白い脚が、程よくついた筋肉でしなやかに見える。


「ありがとうね、蒼真。何度もお邪魔することになってしまって申し訳ないわ」


ぺこりとお辞儀する真桜さん。

言い出した本人が少しだけ罪悪感を感じているのか、どことなくしおらしい。


「楽しい企画を考案してくれたんだからさ、感謝してるよ。さ、上がって」


部屋に入ると、羽依さんがぱっと明るい顔で出迎えた。


「真桜~! 待ってたよ! 今日は楽しみだね~。今夜は寝かせないよ」


イケメン風に囁く羽依さん。

真桜さんは苦笑しながら、さらりとかわす。


「お手柔らかにね、羽依。お母様にはお話してあるのかしら?」


「もちろんだよ~! お母さんも楽しみにしてたよ。私が真桜のことよく話してるから、気になってたみたい」


真桜さんは、少し頬を染めながら優しく微笑んだ。


「私も羽依のお母様に会ってみたかったから、嬉しいわ」


ピンポーン。


「隼が来たみたいだ」


羽依さんが、ピクッと肩を震わせる。

やっぱり少し警戒してるのかな……?


「よう、蒼真! 結構きれいなアパートじゃん! はい、これ差し入れ!」


ドアを開けると、隼が元気よく挨拶しながら、大量のスナック菓子を抱えていた。

スポーツブランドのTシャツにハーフパンツ、スニーカーというラフな格好。

普通の高校生らしい装いのはずなのに、高身長のおかげで妙に様になっている。


彼が来た途端、一気に部屋の雰囲気が賑やかになる。


「いや、こんなに食えないだろ」


「次来たとき用も兼ねてるからな!」


「全部食ってやる」


二人で笑いながら、部屋へ上がる。


「高峰くん、今日はよろしくね」


真桜さんが、落ち着いた声で挨拶する。


「よろしくね! 高峰くん!」


羽依さんも、普段より少し張った声で挨拶した。

……やっぱり、ちょっと緊張してるのかな。


けど、今のところ雰囲気は悪くない。

全く顔を合わせたくない、というわけではなさそうだ。


怖いけど、それでも努力して合わせようとする。

そういう子なんだろうな、羽依さんは。


「おう! よろしくな、二人とも。学年トップの才女たちと勉強できるなんてラッキーだな!」


「隼も成績はトップクラスだろ。俺も足引っ張らないようにしないとな~」


実力テストでも隼の成績はずば抜けている。

部活も勉強も手を抜かない。改めて、すごい奴だなと思う。


「じゃあ、勉強頑張ろうか」


***


……。


いや~……なんか楽しいこと始められる雰囲気じゃない……。


秀才3人の集中力には、本当に頭が下がる。


結局、食事の支度をするまで、4人全員が勉強に没頭していた。

とはいえ、静まり返っていたわけではない。

お互いの得意不得意を補いながら、充実した時間を過ごしていた。


難関進学校のトップクラスが集まると、こうなるのか……。

もう少し遊びの要素が入るかと思ってたけど、完全に読み違えた。


無駄な時間ではなかった。むしろ、有意義だったけど……。


次はどこか遊びに行くことにしよう。


さて、鍋の支度でもするか~。


みんなの阿鼻叫喚が楽しみだ。


ふっふっふ。


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