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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

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34/50

34話 古武術

「蒼真、手が空いたらこっちを手伝って!」


いつも通りの『キッチン雪代』。店内は満席で、オーダーは次々と入る。


「はーい!」と返事しながら、俺は心の中でつぶやく。


——キツいけど充実してるな。家で一人でいるより、よっぽど良い……。


***


結局、「バイトの日は泊まっていけ」という美咲さんの提案は流石に無理があるので断った。


「だったらさ、金曜だけ泊まっていきな。金曜は遅めの営業だからね。その方が都合が良いだろう? な?」


「あ、はい……」


俺としてはできるだけ遠慮したいけど、確かに遅くなる日は疲れるし、金曜だけなら……。


これ以上断るのも申し訳ないので、お互いの妥協点として金曜だけ泊まることにした。


『キッチン雪代』の営業時間は普段8時半までだけど、金曜日だけは10時閉店になるのが特徴だ。


この日はお店の常連さん(手下?)たちがお酒を飲んでいくのが、お決まりのパターンらしい。


もっとも、俺も羽依さんもその時間には撤収することになっている。


高校生がお酒を出す席でバイトしちゃダメ——これは美咲さんなりの配慮だ。


「お店が閉まったら、片付けを手伝っておくれ。あと、あたしの晩酌の付き合い」


「片付けはもちろんやりますけど、美咲さんのお相手は俺じゃ無理です」


「良いんだよ! お酌してくれなんて言わないからさ。」


ニヤッと笑って肩に手を回してくる美咲さん。それ、セクハラですよ?


「お母さん、そろそろセクハラとパワハラで訴えられそうだよ」


お皿を磨きながら、羽依さんが助け舟を出してくれる。

挿絵(By みてみん)

「蒼真はね、あたしにいじられるのが好きなんだよ。なあ蒼真」


「すっごい、いじめっ子理論ですよね」


美咲さんがジャ◯アンに見えてきた。


実際、一度だけ店で暴れた客を制圧する美咲さんを見たことがある。


なんていうか、武術経験者のような体捌きだった。


相手を怪我させることなく、完全に無力化する。


「この辺シメてた」っていう話も、あながち冗談じゃないのかもしれない……。


もしかして、羽依さんも強かったりするのかな?


「どうしたの? そーま。じっと見て」


「羽依さん可愛いな~って思って」


にへらーっとしてるぽわぽわちゃんは、どう見たって武術とか縁がなさそうだ。


「美咲さんって、なんであんなに強いのかな?」


「色々やってたみたい。剣道やら古武術とかだったかな? 私は興味ないけど」


「へ~、強さの裏付けがちゃんとあるわけか~……やっぱり逆らわないでおこう」


「ダメ!」


険しい表情で、びしっと指差す羽依さん。可愛いけど、小動物みたいだった。


***


「お疲れ様でした~」


バイトを終えて家路を歩く。夜風が少し気持ちいい。あの店、本当に忙しすぎる……。


客単価もかなり高そうだし、儲かってそうだな~。


時給も「楽しみにしてな」って言われてた通り、一般的な飲食店よりも少し多めだった。


親の離婚もあって、生活費がこの先どうなるか不透明な部分もあるから、週5日働くことにした。


美咲さんも快諾してくれた。


そろそろテスト期間なのでバイト禁止となる。それ以外は一生懸命働こう。


やっぱ学校が始まると、気が紛れるな…やなこと思い出すヒマがない。


今日一番びっくりしたのは、真桜さんだったな。


——まさか、あの氷結クイーンが真桜さんだったとは。


いや、今まで気づかなかった俺がありえない話だけど……。


結んだ髪をほどいただけで、まるで別人に見えるなんて……。


それにしても、あんな強硬策をとるなんて、いったいどんな心境の変化があったんだろう?


——今度の休日にでも、ちょっと聞いてみたいな。


何にしても、週末が楽しみだ。



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