31話 同衾
雀の鳴き声が聞こえる。
日が明るい。もう朝か……
むにゅ。
あ、これ、もしかしてお約束的なアレですか。
隣を見ると美咲さんが寝てらっしゃる。
「ふむふむ。次の展開は……」
トントン
「そーま起きてる?入るね」
うん。ラッキースケベのあとの展開としてはベタな流れだな。しかしこれはリアル。
ガチャ
「あーーーー!お母さんとそーまがエッチしたあああ」
してないしてない。俺は両手をぶんぶん振って誤解を解こうとするが羽依さんは収まりそうにない。
「うるさいねえ羽依。おはよう蒼真。昨日はありがとうね。あんた結構やるじゃない」
「おかーーーさん!!!」
煽らないでください美咲さん。お嬢様が見たことない顔してらっしゃいますよ……。
***
「信じられない、お母さん。人に『お父さんの部屋でエッチしちゃ駄目』って言っておいて」
なんか話がエッチありきな話になっちゃってる……
「何もなかったのは分かってるでしょ、羽依さん」
みんなでダイニングに集まって朝食の準備をしている。しかし空気が険悪だ。
怒りがまだ収まらない羽依さんと、知らんぷりしている美咲さん。
今朝のメニューは、ご飯、納豆、卵焼き、お味噌汁。
日本人なら大好きな定番メニューだ。
「さあ出来たよ。」
みんなに卵焼きが配られる。
……おいおい、美咲さん。俺の卵焼き、ハートの形になってますが?
羽依さんが笑顔になってる。よかった。これでもう元通りだ
俺も笑顔。美咲さんも笑顔。よかったよか・・・
「そーまもお母さんも嫌い!」
御飯食べずに部屋に戻っちゃった……
「あはっ!やりすぎちゃった!蒼真、後は頼んだ!」
俺は慌てて思いっきりご飯をかっ込んでから、お盆にご飯を乗せて羽依さんの部屋に行く。
トントン
シーンとしてる。ちょっとすすり泣く声が聞こえてくる。
「入っても良い?」
「……良いよ」
ドアを開けると、カピバラのぬいぐるみを抱いて鼻を赤くしている羽依さんがいた。
「ご飯、もってきたよ。」
「いらない。」
「そう言わないで食べてね。」
「……食べさせて」
こまったお嬢様だ。
羽依さんをベッドから降ろしテーブルの前に座らせる。
「はいっ、あーん」
半泣きのまま、目を瞑りながら「あーん」をする羽依さん。
うん。父性がくすぐられる気がしなくもない。
「汁は自分で飲んでね」
「やだ」
やれやれ困ったお嬢様だ。
てか、うまくできるのかな。
汁椀を持ち、口につけて傾ける。
ああ……案の定だらだらこぼれてる。
あっむせた。
終いには、ぶほって言ってる。
急いでティッシュを引っ張り出し周囲を拭き上げる。
Tシャツも濡れちゃってる。
「拭いて」
いや、そこはお嬢様の大事なお胸ですがね……。
「はやく」
開き直ってゴシゴシ拭く。
「んっ…」
「変な声ださないで~」
「そーまが悪いんだからね!昨日の晩お母さんと部屋で何してたの?」
内緒話では無いからね。俺は美咲さんとの夜の会話を全部話した。
「……そっか~お父さんの話はお母さんにもトラウマだものね」
話を聞いて理解してくれたようだ。
「それで何で一緒に寝てたの?」
「いや~…俺が先に寝ちゃったからそこは何とも……」
「寝顔がお父ちゃんに似てたからね。抱っこして寝たよ」
あはは!と豪快に笑いながら、美咲さんが現れてそう言い放った。
「エッチしたの?」
羽依さんが真剣な眼差しで美咲さんに詰め寄る。
「それはこの先のお楽しみだよ羽依。親子どんぶりってのも悪くないかもねえ」
それを聞いて羽依さん顔を真赤にする。
「そんなの出来るわけ無い…よね?」
ちらっと俺の方を見る羽依さん。
「できるかあ!!」
一緒に暮らしたら、毎日雪代親子に遊び倒されそうだ……




