3話 一緒に下校
様々な儀式も終え、ようやく放課後になった。
教室を出ると、廊下や校庭では部活の勧誘が始まっている。
──が、俺は バイトをしなくてはならない。
一人暮らしだし、好き勝手させてもらってる分、生活費くらいは少しでも自分で補いたい。
落ち着いたら、バイト先を探そう。
(できれば、まかない付きがいいよな……)
例えば 中華食堂 とかで──
チャイナ服の店主の娘と仲良くなって、イチャイチャとかね!!
──うん、考えが完全にラノベだな、俺。
校門に向かうと、そこに雪代羽依の姿があった。
誰かを待ってるのかな?
「藤崎くんだ~♪」
──声をかけてくれた!!
マジ天使。
「雪代さん、また明日ね!」
ゆっくり話したい気持ちはあるけど……
距離感って大事だよね。
今日は挨拶だけにしておいて、
明日から少しずつ話せばいい。
そう思いながら歩き出した、その時──
──後ろから、てくてくついてくる人影があった。
……え?
振り返ると、そこには雪代羽依。
「帰り道、同じなんだね。」
「うん。こっち。」
俺の住んでるアパートは、学校から徒歩30分ほど。
比較的いい場所だと思う。
コンビニも近いし、駅まで20分歩けば着く。
なにより、家賃が格安だった。
──まあ、いわゆる事故物件だったからなんだけど。
俺はそういうのを気にしないが、両親は結構気にしてた。
幽霊なんて居ないっての。ぷぷっ。
それにしても、雪代羽依と一緒に帰れるのはラッキーだ。
「誰か待ってたんじゃないの?」
俺が尋ねると、雪代さんはこくんと頷く。
「うん。もう大丈夫。」
「……もう大丈夫?」
──よかったよかった。
──ん?
「ひょっとして……俺、待ってた?」
「そうだよ?」
──え???
「……な、なんで???」
「ん~?」
「何か用事でもあったの?」
「ないよ?」
……うん~天然ちゃんだ。
とりあえず、話題を変えよう。
「雪代さんは、どこ中だったの?」
「近所の中学だよ~。家から一番近い高校にしたの!」
「……家から一番近い高校が、難関進学校ってのはなかなかハードだね?」
「ん~、でもそうでもないよ?私、勉強得意でしっかりものなの。」
そう言って、雪代さんは胸を張り、えっへん! と得意げに笑う。
強調しなくても、主張のすごい胸がさらにすごい。
「すごいね。」
──本当に、いろんな意味で すごい。
「えへえへ♪」
にへら~ と笑う雪代さん。
可愛いなあホントに。