表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/50

29話 不変の愛

真桜視点となります。

真桜視点となります


羽依からLINEの着信があった。「話したいことがあるから電話したい」――そう書かれている。


断る理由もないし、この前の話の続きも気になっていた。


迷うことなく、私はすぐに羽依へ電話をかけた。


「真桜~ビデオ通話にしようよ!」


え? ちょっと待って、何の準備もしてないわよっ!


「ちょっとまってね。今準備するから。」


慌てて身だしなみをチェックする。髪は乱れてない? 変な顔してない?

友達とビデオ通話なんて、ほとんどしたことがないのに……。


挿絵(By みてみん)


「おまたせ羽依、どうしたの?なにか深刻な話?」


「ごめんねいきなり。真桜、パジャマ可愛いね。下着はどんなの履いてるの?」


でれっとした顔つきで話す羽依。なるほど、ビデオ通話は相手の様子がよく分かるのね。


「切るわよ」


「ごめんて!……まあ深刻といえば、めっちゃ深刻だよね……。そーまがね。ご両親が離婚するんだって」


あまりに突然の、生々しい話に言葉を失った。


「え……それは確かに深刻ね……。蒼真、落ち込んでるのかしら?」


「……うん、本人は相当落ち込んでた。もう大丈夫とは言ってるんだけどね……」


親の離婚が子どもにとって、どれだけショックなことなのか。私には想像もつかない。


「学校は大丈夫なのかしらね。引っ越しで転校とかは?」


「それは大丈夫みたいだよ~。親権はお父さんらしいんだけどね。アパートはそのままだって。ただね……うちのお母さんがさ」


少し言い淀んでる感じ、言葉を探してるようだ。


「そーまが一人だと心配だから、今日だけでもうちに来いって。それで今ね、お父さんが使っていた部屋にいるの」


すこしだけ恥ずかしそうにもじもじしながら答える羽依。それがちょっと可愛らしい、けど……。


「同級生の男子が同じ家で一緒にいるのね。羽依、避妊具もってる?」


「なにいってんの!そんなの無いよ!?」


事前準備なし……それはダメね。


「羽依、今から買ってきなさい。何かあってからでは遅いわよ」


「いやいやいやいや、そんなことにはならないから!!」


顔を真赤にして必死になって否定してるその姿が、なんとも愛らしい。


ふふ、ちょっとゾクゾクしてきた。


「うちのお母さんが強引にそーまを泊めたんだよ~。まあ私も思いっきり乗っかったわけだけど」


「羽依のお母さんは、とても優しい方ね。私も今度会ってみたい。羽依のお店にご飯食べにいきたいな」


「うんうん!お祖父様と一緒においでよ!」


「そうね、今度寄らせてもらうわ。……で、これからどうするつもり?」


羽依が少しだけ困った顔をしている。


「お母さんの考えではね、『住み込みで働けばいいじゃん』って。めっちゃ軽く言ってた。」


「そこに蒼真の意見は入ってなさそうね……。でも、それだと蒼真の『一人暮らしでイチャイチャしたい』っていう夢……ぷぷっ……が叶わなくなるわね。」


「真桜、顔が赤いよ!」


「ダメなのよ……思い出しただけで笑っちゃうの……。」


「ツボるとしつこいタイプだね真桜は」


やれやれって顔をする羽依。


「きっかけを作ったのは貴方でしょ!」


「この先どうすれば良いかな」


強引に話を戻してきた。なかなかやるわね……。


「そうね……。一番は蒼真の気持ちを優先することだけど。でも確かに、そんな精神状態で一人にしておくのが不安っていうのもわかるし、難しいわね。」


「そーま、アパート以外にもう居場所がないみたいなの。W不倫だったらしくて、離婚後は両親とも新しい家族で暮らすみたい。ご実家も売却するらしいよ」


「……そう、なの。」


予想以上に深刻な話だった。


蒼真の親は、完全に彼を切り捨てるつもりなの? だとしたら、それこそ大問題よ。


とはいえ、他人の私が口を出せることじゃないけれど……。


「生活費や学費は出すって言ってるらしいけどね。」


「そんな口約束、あてになるかしら? そういう状況を作った親なのに。」


私の嫌な予感が当たりませんように……。


***


「そーまとね、今日動物園でデートしてきたの。友達としてだよ?」


「そう。羽依と蒼真が楽しそうだったなら、それが一番よ。」


「昨日決めたの。そーまが実家から戻ってきて部屋にこもっちゃってたからさ、表に出さなきゃって思ったの」


そこから羽依は、昨日の出来事を話し始めた。


かなり思い切った行動に出たらしいけど……。


「……そーまね、ご両親のこともあって、今は恋愛するのが怖いんだって。」


悲しげに語る羽依。


ただ、そこでふと思う。


「羽依は蒼真と恋人になるのが怖いのよね」


「うん……男の人が怖いのとさ、お父さんに似ているそーまと不仲になることが何より怖いの」


蒼真は、両親の離婚による愛情の喪失への恐怖。

羽依は、男性不信と、父の面影を持つ蒼真への愛情の変化への恐怖……。


でも、それって結局、お互いに"不変の愛"を求めているってこと。


どちらも、求めているものは同じ。


ならば、いつかきっと——。


「羽依、蒼真とずっと仲良くしてあげてね」


「何いきなり?お姉ちゃんみたいだね真桜」


恥ずかしそうに照れた様子で羽依が微笑んだ。


「そうね、そう思ってもらって構わないかも。手のかかる弟と妹ね」


結論が出たわけではないけれど、羽依は秘密を打ち明けることで少しスッキリした様子だった。


その後、他愛もない話をしつつ電話を切る。


ベッドに転がり、一人物思いにふける……。


——さて、学校が始まったら、色々と忙しくなりそうね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ