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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
2章

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26/50

26話 デート(後編)

羽依さんが目覚めた。2時間ぐらい寝てたかな。


寝起きの顔に涙がつーっと流れている。

挿絵(By みてみん)

「……おはようそーま。結構寝ちゃったかな」


俺はそっとハンカチで羽依さんの頬を拭った。


「え?あ……夢見てたんだ。お父さんの夢…」


「そっか」


「お父さんと、この動物園に来た時も、御飯の後に、こうやって昼寝してたの」


「うんうん」


「お父さんの膝枕みたいで気持ちよかったよ、そーま。ありがとうね」


俺は羽依さんの頭をきゅっと抱きしめた。


***


「今、何時…え?こんなに寝てた?」


「うん。お宝いっぱい増えたよ。寝息も録音しちゃった。」


「ぎゃーーーーーー!消してーーーーー!」


「クラウドにアップしてあるからね。ふっふっふ」


「そーまのいじわる。」


そう言って羽依さんは起き上がろうと試みるが、膝枕の呪縛からは離れがたいようで。


「そーまの膝枕良いね。持って帰って家でも使うね。」


「どういこと!?」


「腿のあたりで~ちょん♪って切ってね」


可愛い仕草でエグいこと言ってる。


俺は膝をずらし腕で羽依さんの頭を抱える。そしてゆっくり芝の上にハンカチを敷いて頭を乗せた。


「ヤダー!ひーざーまーくーらー!」


「駄々こねないの。どうする?もう少し動物見ていく?」


「もう十分かな!夜ご飯はそーまの手料理が食べたいです」


「じゃあ一緒にスーパー寄って帰ろうか」


「うん!」


動物園を離れ駅へ向かう。日はまだ高く、どこか行こうと思えばいけるけど、あえてアパートを選んでくれたのは、羽依さんの優しさだろう。


ここしばらくのゴタゴタで感情の起伏半端なかったからな。しんどさを感じてたのは確かだ。


電車に乗ると、ゴールデンウィーク中だからか、直ぐにシートに座ることが出来た。


「羽依さん電車で痴漢とかあったことある?」


……聞いたあとで、ちょっと不躾だったかもしれないと思った。


「無いけどさ。あったら怖くて何も言えないと思う。」


なんか一番良くないこと言ってる気がする。でも女の子は怖いんだろうな。


「羽依さんは優しいからね。他の人に強く言うの、苦手っぽいし。」


「優しいって言うより臆病なんだろうね。人当たり良くしようとする気持ちが空回っちゃう。なんか難しいの。距離感とか」


「そっか。でも、それでもやっぱり羽依さんは優しいと思うよ。昨日もね」


「それ言っちゃだめええええ!思い出すと恥ずかしい……勢いって怖いね……」


一瞬で顔が真っ赤になった羽依さん。そんな彼女をを見るとこっちまで照れてくる。


「後悔してる?」


「それはない。けど、ああああもうだめ!この話しおしまーい!」


ついに顔を手で塞いでしまった。その仕草が、なんだかとても愛おしい。


ぎゅっと抱きしめたいな。そう思ったところで、ちょうど駅に到着した。


「さあ行こう。今日はどんな食材と出会えるかな!」


「感謝を込めて”いただきます”しないとね!」


羽依さんの豊富な漫画知識は、キッチン雪代の蔵書が元になっているらしい。


「知ってる?あの漫画の最終回。主人公が調理される話」


「えーーー!なにそれ?そんな最終回だったっけ?」


とてもいいリアクションで返してくれる羽依さん。


「実際は違うんだけどさ、ネットでネタとして流行ったみたい」


「そっちバージョンも正直見てみたいかも。」


「シェフが泣きながら調理するらしいよ」


「うわっシュール過ぎる…エグいね」


***


スーパーに着いたので食材を物色。今日は何にしよう。


「なにか食べたいものある?」


「うん~、まかないが肉多いからね。魚料理って、できる?」


「大丈夫だよ!じゃあ任せてね。」


羽依さんが目をキラキラさせて頷いた。


「そーまの手料理なら何だって美味しいよ!楽しみにしてるね!」


***


アパートに着いた。


アパートに着くなり、羽依さんが俺にハグしてきた。温もりと柔らかさ、丸一日動いてたからほんのり汗の匂いが混じる。女の子特有の甘い香りがした。


俺はただ、その感触を受け止める。


「羽依さんはハグ好きだよね。」


「好きな人になら。だよ」


「……そっか」


その一言で一瞬で顔が真っ赤になる。この子は俺を喜ばせることが本当に上手だなあ……。


「お腹すいたよね。早速料理を始めるよ!」


「じゃあ私はお米研いでおくね!」


二人の共同作業も、アパートやお店で何度もやってきたから、すっかり息が合っている。


今日のメニューは

メイン:シャケのムニエル(バター醤油)

副菜:ほうれん草とベーコンのソテー

スープ:アサリの味噌汁


わりと手軽にできて、しっかり美味しい一品だ。


***


「おーいしー!」


羽依さんがまたもや大きな目を更に大きくしてくれた。


美味しいのリアクションが可愛すぎる。


「うん、美味しい。おろしポン酢で味変も有りだね。」


「そーまは何でも出来るね。キッチン雪代の跡取りにならない?」


「それって羽依さんと結婚するってことになるのかな?」


「うん。いや?」


「あ~、嫌じゃない。嫌じゃないけど~嫌じゃない…」


「んふ、そーま可愛いね。」


そう言って俺にスリスリしてくる羽依さん。相変わらず正面には座らず隣に座ってくる。


正直これで付き合っていないって無理がないか?


恋人の定義って何だろうか。


定期的な性的接触の契約なのか、心の繋がりなのか。


羽依さんが求めているものと、俺の求めているものは限りなく近いと思う。


だからいつかきっと二人は一緒になれる。そんな気がするんだ。



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