23話 羽依
羽依視点となります。
真桜とおでかけの翌日。そーまからラインが届いた。
「今日帰ってきたんだけど、体調悪いから出かけるのは厳しい。ごめんね。」
「いいよ〜。無理しないでね。何か必要なものがあったら持って行くよ!」
「ありがとう。大丈夫だよ。」
ああ、ちょっとがっかりだけど仕方ないよね。
そーまとは、動物園に行きたかった。お父さんと行った思い出の動物園。そーまと一緒だったらきっと楽しかっただろうな。まだチャンスもきっとあるよね。
お母さんにそーまが具合悪いから、ちょっとバイトは厳しそうな事を伝える。
「具合が悪いのは心配だねえ…」
私もお母さんも病気でお父さん亡くした事がトラウマになってる。お父さんも初めは、ただの風邪だったから…
「羽依、悪いけど蒼真の様子見てきてくれないか?果物とおかゆの元を今こしらえるからさ。ちゃんとマスクして行くんだよ。」
「うん、わかった。」
そーまのアパートに向かう。
Tシャツと短パン姿って、めっちゃ家着だけど、そーまなら良いよね。
今はすぐにでも届けたい。
「あ、連絡入れなかったけど…寝てたら悪いし良いか」
部屋の前に付いた。暗いけど寝てるのかな?
チャイムを鳴らすか迷った。鍵は…開いてる?
そーまらしからぬ不用心さに不安な気持ちになる。
そっと開けて様子を見たら、荷物を置いて帰ろう。
カチャリと音を立ててドアが開く、奥で布団に包まってる。寝てるっぽい。
そっとおかゆの入った容器と果物を置いて出ていく。
「え?だれ?」
「あ、ごめんね、そーま。起きてたんだね。玄関の鍵開いてたから。お母さん心配だから見に行ってきなって言ってくれてさ。果物とおかゆ持ってきたんだ。温めようか?」
そういって部屋に入る。
「電気付けるね。」
そーまの顔を見た瞬間、誰だか解らなかった。
「そーま…だよね?」
「うん…ごめん。ありがとうね。もう大丈夫だから」
どう見ても泣き腫らした顔。今もひくひくしてる…
「そーま。ご実家で何かあったんだね。」
「……」
「話せ…ないよね…」
「大丈夫。俺は大丈夫だからさ。」
「大丈夫になんて…見えないよ…」
胸が締め付けられる。
いつも明るくてみんなに気を使ってくれてるそーま。
一生懸命働く、そーま。
美味しい料理を作ってくれる、そーま。
そんなそーまが、迷子の子どもみたいに泣きじゃくってる。
気がつけば、私はそーまを抱きしめていた。
そーまは大きな声で泣いた。
何があったかわからないけど、辛かったんだよね。
いつも我慢してばかりいるから爆発しちゃったんだよね。
良いよ。私が全部受け止めるからさ。いっぱい泣いてね。




