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距離感0な子と恋愛に発展するのが難易度MAX  作者: 鶴時舞
1章

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22/50

22話 お買い物(後編)

引き続き真桜視点となります。

ちょっと気になっていたことを確認してみる。


「羽依、蒼真に告白されたことにしてたじゃない? あれ、本当に告白だと思ってたの?」


「う……それ聞いちゃう?」


「ええ、おかげで蒼真が '先客' だの '鮭男' だのって言われるようになったんだし。」


「鮭男は真桜しか言ってないよ!? いやあ……正直に言えば、告白とは……言えないかな。とは思ってる。」


「でしょうね。正直に言ってくれてよかったわ。」


「あう。睨まないで。利用したって言われたら、たしかにその通りなんだけど……でも真桜も知ってるでしょ、あの告白祭り。」


「ええ。今はもう落ち着いたみたいだけど、随分と来てたものね。」


「そーまが気になってたのも事実なの。でも、私は断るのが下手だから……つい口実にしちゃった……」


「蒼真のこと、やっぱり好きなの?」


「もちろん嫌いじゃない。嫌いじゃないけど……怖いの。男の人が。でも、そーまは別。でも、もしそーまが '男の人' になってしまったらって思うと……踏み込めないの。」


羽依が抱えているトラウマが、恋愛に発展しない理由になっているのね。

お父さんと似ているって言っていた話も、そこに繋がるわけか……。


「ぐずぐず迷っていたら、誰かに持っていかれちゃうわよ?」


「……もし、もっていかれるなら、真桜がいいな。」


「怒るわよ。」


「あう、ごめんなさい。」


そこまで言って、私は思わず吹き出してしまった。


「なんだか羽依、さっきから謝ってばかりね。」


「だって真桜、急に怖くなったんだもの。……真桜はそーまのこと、どう思ってるの?」


「うーん、可愛いって思ってる。可愛い下僕にしたいわね。」


「うわっ、ドS気質だね。」


「中学の時にね、蒼真を知ってる理由なんだけど……私と同じ高校を志望しているって聞いて、ちょっと興味が湧いたの。どんな子なのかなって。」


「おお~、そうだったんだ。で、どんな印象だったの?」


「成績的には、絶対合格しないって言われてた。でもね、毎日放課後、図書室でずっと勉強してるの。そりゃ受験生だからね、そのぐらいやるだろうけど……必死さが違ったのよ。鬼気迫るっていうか。」


「ああ……彼女とイチャイチャ計画かあ……」


「え? なにそれ。」


「そーまが何でこの高校を選んだかの話だよ。」


羽依が一生懸命説明する。


「あははははははは! 何それ、あはははは! やめて、お店の、迷惑に、あはははは!」


周囲の客が怪訝そうにこちらを見る。


「ウケるよね~本当に。未来の彼女のために一生懸命勉強したんだって!」


「やめて! もうやめて!」


店員がやってきて注意される。


……もうこの店、来れないわね。


***


「羽依のせいで、もうあのお店行けないじゃない」


「ごめんて、いや、あんなに爆笑すると思わなかったよ〜」


「私もよ。あんなに可笑しかったの、他に……ダメ、また思い出す……」


「わりと笑い上戸なんだねえ。真桜の知らない一面が知れて嬉しいよ〜」


「私だって知らなかったわよ!」


***


まだ話足りないので、カラオケボックスへ行くことにした。


羽依は流行りの歌やアニソン、私は親の影響で古めのJPOPを歌う。


「真桜、歌すごいね……プロのアーティストみたい」


「ありがとう。羽依の歌だって、とても上手じゃない」


「真桜と比べたらレベチだよ〜!」

挿絵(By みてみん)

しばらく歌ったところで、本題に入る。


「蒼真は今頃、実家でお父さんとお母さんに美味しいもの作ってあげてるのかしらね」


「うん、ご両親も喜んでるだろうね。昨日のチキン、美味しかった~!」


「それでね、羽依に聞きたかったことが、まだあってね」


「なになに〜? 今なら何でも答えちゃうよ!」


「そう? じゃあ聞くけど……例の“告白祭り”のことなんだけど。いくらなんでも、おかしいと思うのよね。玉砕覚悟で何十件とか…何か思い当たる節があるんじゃないかって」


羽依の顔色が少し変わった。ちょっと踏み込みすぎたかしら……。


「男の人が怖いって話の続きになるんだけどさ」


羽依はためらいながら話し始める。あまり思い出したくないのかもしれない。


「私、中学のときによく話してた男の子に告白されてさ。正直、好きじゃなかったから断ったんだけど……諦めずに何度も告白してきてね」


「周りもその男の子を応援するようになってきて……でも、好きでもないのに付き合えないじゃん?」


当然の話だ。情けで付き合うなんて、できるはずがない。


「そしたらね、ついにその子がキレちゃって……“だったら、なんで気のある素振りしてたんだよ”って。今でも思い出すと怖いの……」


「……そうだったんだ」


「でね、それから周りと距離ができちゃって。気にしすぎなのかなって思ったけど、知らない男の人から声かけられることが増えて……」


羽依はスカートをきゅっと掴む。少し辛そうな表情で話を続ける。


「噂が流れてたの。“頼めばさせてくれる女”って」


させてくれる――つまり、男女の営みのことを指しているのだろう。


「噂を流したのは、その男か、その取り巻きってところかしらね?」


羽依は唇を噛んで、少し震えている。そろそろ止めたほうがいいかもしれない……。


「……違うの。噂の出どころは、私と仲良しだった子だったの。その子、私を口説いてた男の子のことが好きだったみたいで……振ったことが許せなかったのかな……」


まさか、そんな……。私は辛そうにしている羽依に、これ以上話を続けさせることができなかった。


少し震えている羽依を、そっと抱きしめる。


「……ごめんね、羽依。辛かったね」


「なんで真桜が泣いてるの。もう、前の話だからさ……」


そう言いながら、羽依も泣き出した。辛かったんだよね……ごめんね、思い出させちゃって。


しばらくして、落ち着きを取り戻した羽依。最後にもう少しだけ話を続ける。ごめんね羽依。


「……じゃあ、羽依に告白してきた子たちは、そういう噂込みで告白してきた可能性があるってこと?」


「一人ひとり確認したわけじゃないけどね。普通に告白してきた子もいれば、あからさまに連れ出そうとした人もいたし」


なんてみっともない……。私は全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。


「真桜、顔が怖いよ?」


「羽依。もう誰にも告白なんてさせないわ。私が貴女を守る」


「真桜、王子様みたいだね」


羽依が、くすっと笑ってくれる。少し嬉しいけど……王子様はないわね。


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