20話 帰省
GWに入ったので実家に戻ることに。
実家に帰るのは1ヶ月ぶりか。その程度でも随分と久しぶりに感じるのは環境の変化のせいか。
「ただいまー。」
うわ、片付け出来てないな…換気もしてないみたい。
誰も帰ってきてないのかな…
部屋を片付けて掃除機をかける。風呂の掃除をして買い物をしてと。
晩御飯の支度を始めてと…そうしてるうちに、父さんと、しばらくして母さんが帰ってきた。
リビングに集まり、久々の家族団らんでの食事だ。
「蒼真、学校はどうだ?」
「楽しくやってるよ。特に心配することもないかな。勉強もさ、仲良くなった友達と一緒にやっててね、どうにかついて行けそうだよ。」
父さんと母さんが顔を見合わせ、ちょっとホッとした様子。
晩御飯は二人の好きな、ハンバーグにした。
「蒼真の作るハンバーグは美味しいな。」
しみじみ父さんが語りだす。母さんが少し俯いて急に泣き出した。
……
…ああ、やっぱりもう…無理なのか。
「蒼真、大事な話がある。」
普段ふざけてばかりの父さんの真剣な顔。いい話であるはずがない。というか、その表情。子どもに向ける顔じゃないよ、父さん…
「…大丈夫だよ、父さん、母さん。無理に説明しなくても。俺は大丈夫。二人これから自由にしてね。」
「蒼真…すまん…」
「ごめんね。ごめんなさい、蒼真…」
***
うちの家庭は正直もう終わってた。
母さんがパートから正社員になったあたりからだった。
帰宅が遅くなり、二人の間に喧嘩が絶えなくなっていた。
父さんは、だんだんと家に帰る時間が遅くなり、外泊も増えていった。
母さんも…
二人を繋ぎ止めるために、何が出来るか考えた。必死に料理を覚えて家事を頑張った。
ご飯を作りさえすれば、みんな集まってくれるだろうと。
確かに最初のうちは集まってくれた。でも、手つかずのおかずを処理することが増えていく…
もう無理なのは解ってた。
解ってたからこそ、俺は家を出たかった。
冷え切った家よりも新しい環境で素敵な恋人を作って楽しく過ごしてみたい。
憧ればかりが強くなっていった。
***
「学費や生活費のことは心配しないでくれ。お金の迷惑は絶対にかけない。」
「好きな大学にも行っていいのよ。ただ、この家は…」
「うん。良いよ。好きにしても。俺のことはもう大丈夫なのは二人知ってるでしょ。」
無理に笑おうとしたけど、喉が詰まるような感じがして、うまく笑えなかった。
「しっかりしてるのを当てにし過ぎてるのは重々承知してるよ。おまえの優しさに付け込んでいる。親として恥ずかしい限りだ。」
「お父さんとお母さんは嫌いあって別れるわけではないの。これだけは解ってね。」
「わかってるよ。部屋に戻って荷物を整理してくるね。」
返事を待たずに部屋に戻る。
「うん…わかってたよ。俺のせいで無理させてきちゃってごめんね。父さん。母さん」
それにしても、たった一月だ。
一月家を離れただけで二人の仲は終わってしまったんだ。
色々考えてしまう。
小さかった頃。
家族旅行のこと。
小学校入学した頃や運動会の応援に来てくれたこと。
俺はいらないものを捨てるため、ゴミ袋を手に部屋のものを片っ端から捨て始めた。
これも…もう、いらないよな。
家族旅行で撮った写真を手に取り…ゴミ袋へ入れる。
思い出もいらない。全部捨てよう。
ラノベのような大恋愛をして、夫婦仲よく楽しく暮らしたい。子どもを悲しませるようなことは絶対ししたくない。
そんなこと思ってたなあ……恋愛って何なんだろうか……もうすべてが虚しい……




