18話 私服
明日からGWの始まりだ。放課後は連休前のワクワク感で満たされていた。
「真桜、今日は一度帰る?それとも直接そーまの家に行く?」
「私が住んでる場所は学校の近所なの。一度帰ってから祖父に送ってもらうわ。」
真桜さんは祖父母の家に住まわせてもらってるらしい。学校から徒歩5分ぐらいの場所にある一軒家だそうな。
「じゃあマップのスクショ送っとくね。」
いつも通り、羽依さんと帰宅する。
「そーま、今日は何作るつもりなの?」
「どうしようかな。実家帰るつもりだったから食材あまりないんだよね。」
「あうっ、やっぱいきなり過ぎちゃった?ごめんね考え無しで。」
しゅんとしてる羽依さんみてると、こっちまでしゅんってなってしまう。
「使い切れる食材で美味しいものかあ」
ふと、おもだした料理があったのでそれを作ることにしよう。
「羽依さん、鳥もも肉と野菜買っていくね。」
「いいアイディア浮かんだの?楽しみ~。」
食べきるならバケットが良いかも。付け合せは彩り野菜のマリネとかかな。
「おお、そーまが料理漫画の主人公みたいになってる!」
「やれやれ、本当の鳥料理を食べたこと無いようだ。来週また来てください。」
「なんちゅうもんを食わせてくれたんだ~。いやまだ食べてない!来週まで待てない〜!」
むう、あの料理漫画までノッてこれるとは。恐ろしい子!
スーパーによって、ぱぱっと購入。
「鶏もも肉にトマト缶。あとはパプリカと…じゃがいもは家にあったかな」
「何作るの?」
「秘密ってこともないけどね、きっと美味しく作れると思うからワクワクしててね。」
「むう~。楽しみにしとく…おなかすいたー!」
そんなこんなでアパートに到着。
「羽依さんも一度帰らないの?」
「うーん、私服に着替えてから来ようかな。なにげにそーま、私の私服姿、見たこと無いんじゃない?」
「あ、そういやそうだね。普段どんな格好なんだろう?」
「ん~普通?見てからのお楽しみ~!」
そういって羽依さんが帰宅。
丁度入れ違いで玄関のドアホンがなる。真桜さんかな?
玄関のドアを開けたら、真桜さんが立っていた。
白いレースの入ったブラウスに紺色のフレアスカート。清楚なイメージの真桜さんにぴったりな装いだ。髪は少しだけ巻いた感じにセットしている。
「いらっしゃい~。真桜さんの私服姿、とっても真桜さんぽいね。どうぞ上がって」
「褒め言葉…なのかしらね。ありがとう?おじゃまします。これお土産。あとでみんなで食べましょう。」
そう言って冷たいお菓子をもってきてくれた。ゼリーのようだ。
「ありがとうね!今、羽依さん着替えに帰ってるからさ。すぐ来ると思うよ。」
「そっか。じゃあ今は蒼真の部屋で二人きりなのね。私、貞操のピンチね」
「ぶっ!何言ってるの!」
「やめて!白子飛ばさないで!」
「ひどすぎる!?」
「蒼真はホント楽しいわね。なんていうのかな。こういうのが弄りがいがあるっていうのかしらね。初めてだわ、こんな気持ち。」
「身に余る光栄です、マドモアゼル。」
「やっぱり好きなのね。責められ気質?いわゆるM属性…」
「そんな性癖はきっとないかも!」
「あら…自分をまだ解ってないようね。私が仕込んであげようか」
そういって妖しく微笑む真桜さん。
その手が伸びてくる…
「え?」
と、その時にドアホンが鳴る
「ふふ、命拾いしたわね。」
「え?なに?え?…あ、羽依さんどうぞ~上がって~」
何も聞かなかったことにしよう。
「そーま!私服に着替えてみたよ!どうかな~?」
羽依さんは元気いっぱいなガーリーファッション。
オフショルダーのトップスにショートパンツと黒タイツの組み合わせ。
うん、かわいいです!
「羽依さんの私服姿、とっても羽依さんぽいね!」
「えへへ~。ありがとう!」
それを聞いてた真桜さんが一言。
「…蒼真。貴方に必要なのはラノベではなく純文学なようね」
「え、あ。はい…」
語彙が死んでますね、はい。